326.初恋~女の子は気持ちの篭って無いキスなんてできない | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
「宮」~Love in palace~のYouTube自動再生を止めたい方は
画面右側サイドバーに貼っています 停止して下さい

きらきら初めての方は本編はじめましてから順に読み進めて読みください


「今日は お招き頂いて本当に有難うございます」
一礼して立ち去りかけたミニョンさんを引き留めるようにシンくんが何か訊ねた
「あの時は私も殿下も…ろくにピアノも弾けなかったのに 殿下の伴奏で歌を歌う日がくるなんて…」
え?あの時?
そうだ 前にミルがミニョンさんの初恋の相手はシンくんだと言ってた
ほかの子と同じく 遠巻きに見ての単なる憧れかと思っていたけど…
シンくんに恋するようなきっかけが 何か 有ったんだ…
そりゃあ王族だし 同じ王立学校の初等部と中等部に通ったわけだし…有っても不思議は無い
でも…シンくんって 他人に興味を示さない人だよ…?
さっきの口振りでは ミニョンさんは恨んではいないけど シンくんが何かしたの…よね?
それってシンくん自身には ミニョンさんに恨まれるような事をした覚えが有るって事よね?
シンくんが…こっ酷い振り方でもしたのかな?
それくらいで殺したいほど憎んだりしないよね?
じゃあミニョンさんに恥をかかせたとか?
それだとシンくんに恋するか…?
いやあたしも芸高の昇降口で最悪な再会したときは超ムカついたのに惹かれちゃったしね…

ああ…よく聞こえない どういうことなの?
ハッキリと聞こえないもどかしさに あたしはついに硝子の扉を薄く開けて 聞き耳を立てる

シンくんの返事によってハッキリするかと期待したのに…
「あんたホントに厚かましいよな どうしたらこうも無神経でいられるのか 知りたいよ」

それまではまあまあ丁寧だったシンくんが 急に態度を変え ミニョンさんに冷たい言葉を返す
知らないとは言え 命の恩人なのに!
シンくんのミスを責めるのは嫌だったけど もうハッキリ伝えるしか無い!
あたしは拳をギュッと握った
でも… 次の言葉に足止めを食らった

「ふん…笑わせないで 貴方の方がずっと 何倍も厚かましいじゃない
人の人生をめちゃめちゃにしておいて 平然と皇太子の座について」
耳を疑った
今の 本当にミニョンさんの声?それっくらい低く冷めた口調
一体何の話をしてるの?

「逆恨みだ 当時の宮中において あれは簡単に許されることなんかじゃ無かった」
「たかが皇太孫のご機嫌を損ねただけでしょう?!
貴方のせいで父は 地位も名誉も家族も失って 侘びしく死んでいったのよ 許せると思うの?!」
「父親がそう言ったか?誰がそう言ったんだ?
お前の父親は皇太孫の教育を担う立場にありながら 只の噂に過ぎない情報を 口外してはならない相手に暴露した 大きな罪を犯したんだ
決して白日のものに出来ない事情により ああいう処遇となった それを!逆恨みしてお前は」
ミニョンさんが何か言いかけるのを遮ってシンくんは一息に捲し立てる

「逆恨み?なんのこと?」
あたしは最後まで黙って聞いていられなくて飛び出してしまった
「チェギョン…これでわかっただろう?」
あ…シンくんは…あたしがこっそり聞いてたことを知ってて…?
「ミニョンさん どういうこと?シンくんの…殿下の事 助けてくれたんじゃなかったの?」
ハッと息を飲んで振り返ったミニョンさんは 蒼褪めた表情から徐々に あたしを睨むような目付きに変わった
「馬鹿みたい こんな男を本気で愛してるの?
この男は幼い頃から高慢ちきで
ご機嫌を損ねる発言をしたっていうだけで 自分を導く立場に有る大人を 師匠を切り捨てたのよ!
王族だった私の父の地位を剥奪し流刑にして のうのうと暮らして皇太子に即位して
こんな男に 好きな女と結婚して幸せに暮らす権利なんてないのよ!」

世間的にはそういうことになってるけど…
「それで…あれは…わざとやったの?」
実際にはシンくんは好きな人と結婚してなんかないのに…
「当たり前じゃない こんな男が 貴女と幸せになるなんて許せるわけ…」
「も 桃のシャンパンも…アレルギー… 知ってて? わざと渡したの?」
「そうよ!」

バチンッ!

あたしの掌にヒリヒリと痛みが走って 自分がミニョンさんを打った事を認識する
「った…な…なにす…」
「膝まづきなさい!今すぐそこに!膝まづいてシン…皇太子殿下に詫びなさい!!」
「な…」
何も知らないくせにっ!
「何があったかなんて関係ない 貴女がしたことは不敬罪じゃ済まないわ!殺人未遂よ!
皇太子殿下を殺しかねないところだったのよ!なんてことを!許さない!
誰が許しても私が許さない!」
「ば…馬鹿みたい…」
頬を抑えたままのミニョンさんがそう言った
早く誤ってよミニョンさん…今謝らないとあなた…
ミニョンさんのお父さんの処遇はシンくんのせいじゃない 絶対幼かったシンくんのせいなんかじゃない
今でさえシンくんにそんな決定権は無いのだから…
小さなミスに冷徹な罰を与えたのは李氏朝鮮時代から受け継がれたしきたりのせい
景福宮(ココ)はそういうところなの そういう世界なんだから…

「何事ですか…」
こ 皇后陛下!!どうしようヤバいーΣ(;´Д`)---今の見られたの~っ!?
「なんでもありません母上」
シンくん…?い…いいの?
「なんでもないと言ってもそちらのお嬢さん…頬をどうされたのだ?私の目には妃宮が…」
アニやっぱりマズイよ~~~!
「喧嘩する程仲が良いと言います
チェギョン…もういいだろう?許してやれよ 大丈夫俺は平気だ」

シンくんがあたしの肩を撫で ミニョンさんに気の毒そうな表情を向けると 蒼褪めたミニョンさんの震える唇から謝罪の言葉が零れた
「も…申し訳ありません なにか誤解があったようで…私が失礼を…」
深々と下げた頭をジッと見下ろす皇后陛下の目は 品定めするような… 蛇の様に冷たい視線で…いつもの厳しくも優しいお義母さまの眼差しでは無い
「そうか…太子が仲裁してきちんと和解させるのだぞ」
「はい 母上」

「チェギョンに救われたな お前…
覚えておくんだな
此処は景福宮 外の世界の常識は通用しないところだ」

蒼褪めて頬を抑えたまま震えているキム・ミニョンさんは テラスを降りて庭園のみんなの方へ立ち去った皇后陛下の後ろ姿を見詰めたまま シンくんの言葉をただぼんやりと聞いていた


そっか…シンくんは…多分あたしのした事の意味を解ったんだ
それで 皇后さまの前で誤魔化してくれたのね…
でもミニョンさんは多分全部は理解できてないだろう
あたしは 取り乱してうっかり彼女を問い詰め 自白させてしまった
謝る気なんて無いだろうけど…謝罪させたかった だって あのまま放っておいたら 彼女が自白したことはシンくんから皇帝へ報告され 彼女はおそらく父親と同じように闇に葬られ 手に入れたばかりの歌手生命を失う事になる
彼女の父親がいったい何を言ってそんな目に遭ったのか解らないけど でもシンくんの命を狙ったわけでは無くてもそうなりかねなかったんだもん…きっと…
あたしにはそれが解った
あたしも…景福宮に…慣れてきたのかな…
あたしに打たれたくらいで どれくらい回避できるか解らない でも 少しは 助けになるかも
そう思ったのに まさか皇后さまに見られてしまうなんて…
蒼ざめるあたしの胸中を察してくれたの?

「チェギョン 残念だが皇帝には既に報告済だ」
ドキッとした
「なんのこと?あたしは凄く怒ってるの
本当に シンくんが死んでたかもしれないのに 許せなくて思わず打ったのよ!」
でもそれに関しては本当だった
だって 打った後に打ったことに気付いたんだから
シンくんが倒れ込んで来たときは あたし息が止まりそうだった
もうシンくん無しでは生きていけないもん

だけどやっぱり残念だな…
もう ミニョンさんと…友達では居られなくなるんだろうな…

ミニョンさんはシンくんの事 恨んでいたんだ…
それなのに 何かしらきっかけが有って…好きになっちゃったのね… 辛いね…
ミルも彼女の初恋の相手はシンくんだと言ってたけど…
それ以前にあたしは 自分の直感が当たっていたんだと確信した
男の子はどうだか知らないけど
女の子は 嫌いな人にキスなんて出来ない 気持ちが篭ってないキスなんてできない

ミニョンさんの恋は 憎しみによってより色濃くなったんだと思う
あたしに近付いてどうするつもりだったんだろう
あたしにバレちゃって…これから…どうするんだろう
シンくんはお人好しだなんて言うけど やっぱり気になるよ 同じ人を想ってる子だもん

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ
ミニョンの魂胆を知ってもなお 彼女を守ろうとしてしまうチェギョン
でもその発言は全て本当の思い
シンくんは理解してくれたかな~?
さて 今年の更新はこれで終わりといたします
ご愛読と応援 有難うございました
続きは来年になります
よいお年をお迎えください
 

 
ランキングに参加しています
にほんブログ村 ←ポチ↓ペタ お願いしますふわハート