325.秋の庭園~計画は 順調ですか?まんまと妃宮に取り入ったようですが 今後の計画は? | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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きらきら初めての方は本編はじめましてから順に読み進めて読みください

 


去年の今頃の俺とチェギョンの間には 微妙な空気が漂っていた
こんな穏やかな初秋がこの東宮殿に訪れるなんて… と呑気に浸ってもいられない

「あの女になんと言われて許したのか 馬鹿馬鹿しくて聞く気にもなれないが お前はあの女の本性を知らないんだ」
「誤解が有るのよ ちゃんと和解しましょう?」
チェギョンは 俺が会いたくないと言っても譲らずあの女を東宮殿に招待した
ちっ 望むところだシン・チェギョン お前と俺のどちらが正しいかハッキリ教えてやるよ!


「貴女の歌声を披露して頂けませんか?私の伴奏でよければですが…」
「え?…ええ…勿論です」
ふん 頬を染めて俯く演技が白々しいな
今日こそチェギョンの前でお前の化けの皮を剥いでみせる

「何を歌いましょうか…というか 殿下の得意分野は…?」
いざ歌うとなると流石観衆の前で歌い慣れたプロだ グランドピアノの前に座る俺の隣に立つ姿も 堂々たるもの
ちっ 敵ながら天晴れだ
「なんでも弾けるというわけではありませんが…ゴスペル(聖歌)とか…映画音楽なら…」
「あ~あのねミニョンさん 意外かもしれないけどね こう見えて殿下はポップスやジャズ ボサノバなんかも弾けるのよ?」
チェギョンがハラハラと落ち着かない様子で口を挟む
「あ じゃあ…ジョアン・ジルベルトの『Chega de Saudade(シェガ・ジ・サウダージ/想いあふれて)』はどうでしょう?」
ボサノバの起源と言われる古い歌だ…
「ああ いいですね」
映画『黒いオルフェ』でも歌われているし…
カバー曲も沢山発表されていて知名度も高い
だが ブラジルのポルトガル語で物悲しい慕情を歌った歌だ
曲自体は寂しい曲調ではなく 歌の内容を把握できる者も居ないだろうが…
この場に不似合いな妙な曲を選曲する…
弾き始めとサビの辺りを少し弾いてみて確認する


『Chega de Saudade(シェガ・ジ・サウダージ/想いあふれて)』を歌い終えたキム・ミニョンを試すように 続けて『イパネマの娘』を弾く俺を 彼女は冷ややかに一瞥して 見事に歌い切った
ちっ
一堂が拍手喝采する
「ミニョンさんの歌声はホント天使だね」
「殿下のピアノも素晴らしかったです」
「みて!スミが眠っちゃった」
あんたの得意分野で勝負する気なんか端からないさ
持ち上げて置いて隙を突く作戦なんだが… 皆の前では完璧な王族の令嬢の仮面を被っている
皆の絶賛を受けるキム・ミニョンに牽制の視線を向ける俺に チェギョンがひっそりとため息を吐く
ふぅ…ため息を吐きたいのは俺の方なのに…


皆が秋の庭園に降りて行った
俺はカメラを手に 画材を取りに行ったチェギョンをテラスで待つ
「ピアノ…お上手ですね 映画科じゃなくて音楽科でも良かったんじゃありませんか?」
手摺りに肘をついて庭園を眺める俺の背中に その声が届いた
「そうだったら もっと早く復讐の機会に恵まれていたのに…とでも?」
ゆっくりと声の主を振り返ると…
なんだよ…俺の言葉によって傷を負ったとでもいうのか?
悲痛な表情と胸元を握り締めた震える拳に 寸刻動揺する
こんなの演技だろ? イ・シン フンドゥリジマ… こんな女に揺さぶられるなよ…

今更しおらしい顔なんかして… 当たってるだろう?キム・ミニョン
「計画は 順調ですか?まんまと妃宮に取り入ったようですが 今後の計画は…」
「殿下は!…覚えていらっしゃらないですよね」
敢えて丁寧な口調を崩さない俺の言葉を遮って 何を覚えていないと非難しているんだ?
「記憶力には自信がありますが…」
忘れてやしない…記憶に蓋をしていただけだ お陰様で…
「いいえ!やはり覚えていらっしゃらないようです」
「何を?」
「殿下にとっては記憶にも残らないささやかな出来事だったのでしょうね…ふふふ
ご承知の通り 私の養父母は叔父夫婦です
私がここまで来れたのは 叔父夫婦のおかげですが
殿下が
殿下が私の背中を押して下さらなかったら私 きっと音楽の道を歩んでさえいなかったから」
!?
「それは…私が貴女の両親を奪って 寧ろ人生が好転した…とでも?」
「ふっ… あ~ そうとも言えるのかしら…」
今 笑ったのか?
そこまで…腐っているのか?
俺を恨んで 復讐を誓った為にそんな考えに辿り着くほど 心が荒んでいるのか?

不意にキム・ミニョンの視線が遠くへ移る
これまで話していたことなんてどうでも良かったかのように 庭園を散策する一堂を眺め 話題を変えた
「春も美しかったけれど 秋の庭園は殊更美しいんですね」
どういうつもりだ?
俺が一人になるのを待って挑発して来たくせに これ以上は語れないとなると扉を閉めてしまうのか?
声は明るかったが 表情の読み取れない顔に困惑する
俺は今 上手く笑えているだろうか?この女に弱さをさらけ出してはいないだろうか?
「ええ そうでしょう?」
「今日は お招き頂いて本当に有難うございます」
なんだか知らないが俺が忘れているんなら もういいっていうのか?
気に入らない!
「私が忘れているという話について 何か言いたいことが有ったのでは?」
「あの時は私も殿下も…録にピアノも弾けなかったのに 殿下の伴奏で歌を歌う日がくるなんて…」
あの時?何の話だ?俺がピアノを弾けなかった頃に…あんたに会ったってのか?
彼女から視線を逸らし考えを巡らせると…
画材を胸に抱えたチェギョンが硝子戸の向こうでこちらを伺っているのがチラリと視界に入った
ふん やっと俺に チャンスが巡ってきたようだな

 

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ

 

 


 
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