151.書筵堂(ソヨンダン)の屋根裏~抜けるような青い空にも染まらず真っ白い 孤独な鳥 | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→150.皇太子の寝室Ⅱ~東宮殿の皇子に興味津々のお前に腹が立って…意地悪ばかりしてたんだ このお話は前話に引き続きシン目線ですl


俺は 弓の修練の時間なのに… 書筵堂(ソヨンダン)の屋根裏に座って手紙を読んでいた
此処は 暗室よりも確実で完全に一人になれる 唯一の場所だ

ヒョリンから 手紙が届いた
「あなたとシン・チェギョンの結婚式 パレードだけはフランスでも生中継だったわ
おめでとう お祝いが遅くなってごめんなさい
私は元気でやっています
早い物で こっちに来てから もうすぐ一年が立とうとしています
フランスの国立劇場で踊る事が決まったわ 群舞だけど 一年で役を貰えるのはスピード出世よ
どう?すごいでしょ?
あなたはどうしてるかしら? また孤独に陥っていたりしないか…時々すごく気になるの
でもそんなの杞憂よね?
私の知ってるあなたは 抜けるような青い空にも染まらず真っ白い 孤独な鳥のようだったけど
今のあなたにはもう シン・チェギョンが居るんですもの
また連絡するわ 今日はあなたに この空を贈りたくて」

それだけの手紙だった 添えられた写真には 澄んだ青空に飛ぶ白い一羽の鳥…
俺の頬に 涙が伝った
馬鹿だな…泣くなよ… ヒョリンの言う通り 俺にはシン・チェギョンが居る
本当なら 孤独なわけなんかないのに…
俺は今も変わらず孤独な鳥のまんまだな…
飾り窓から射す光に 青い空に飛ぶ鳥の写真を翳す
それも…飛べない 写真の中の鳥でしかない なんてな…


俺は幾度も 茗禪堂(ミョンソンダン)や東宮殿のパビリオンや庭で チェギョンがユルと親しく楽しそうな姿を 陰からひっそりと見ていた
チェ尚宮にはああ言ったけど やっぱり何も言えなかった
言えるはずも無かった
俺の妻なのは形式上で その心が誰にあるのか 知りたくなかった
ハッキリさせたら 形だけでも夫婦で居られるこの瞬間さえも壊してしまいそうで怖かった


チェギョンは ごく稀にだが 唐突に俺の部屋にやってくる
「得点王だってよ~!すごいよね~」
何がかといえば オーストラリアで開催された2006 AFC女子アジアカップの結果だ
夜 俺の部屋にやって来てニュースを観たかと言うので テレビを点けたら丁度やっていた
チームとしての成績は振るわなかったが チョン・ジョンスク選手が 七得点を挙げた事によって 同七得点を決めた日本の永里優季(大儀見優季)選手と共に 得点王として表彰されたことを 甚く喜んでいた
「なあ お前 女子サッカーがそんなに好きなのか?」
「え?いやまあ…好きっていうか…
お会いして握手した方がTVで しかも世界で活躍した姿を見たら なんか嬉しくない?」
そんなもんなのか?
壮行式の日 震えてたのはファンだったからなのかと思ったが…違ったのか?
チェギョンも単純なようで時々よく解らない時が有る
「まあ いいが…
それより… 学期末試験はどうなんだ?夏休みははっきり言って学校に通うよりハードだからな また赤点で追試なんてやってるヒマ無いぞ …それに…もう机に突っ伏して寝るなよ?」
パッと頬を赤らめ
「もう!うるさいよ!」
と拳を振り上げる くくっ からかい甲斐が有る

あの翌朝…
「夕べ 自分でベッドに入った記憶が無いんだけど…もしかして…運んでくれたり…しないよね?」
なんて言うからムッとした なんだよ俺が運んじゃ悪いのか?!
「重かったぞダイエットしろ」
ホントは重くなんかなかった
「し 失礼しちゃう!あたしこれでも標準以下よ!
起こしてくれれば自分でベッドに行くのに!」
知ってる 中学三年生のお前はもっとふっくら丸かった…
「運んで貰っといてその言いぐさか?素直にありがとうって言えよな」
「た 頼んでないもん!勝手に運ばないでよ!」
「はぁっ!?…上等だ 覚えておけよ?!」
この一年でお前はすっかり痩せてしまった それくらい知ってる


「…でもやっぱスポーツはダッポンサ(닥본사)だよね~ って…聞いてる?殿下?
…どうしたの?具合悪い?顔色悪いよ?…ですよ」
夢中でサッカーのニュースを観てると思っていたのに…いつの間にか俺の顔を覗き込んで居る
不安げに揺れる瞳に 俺の心も揺れる

「どうもしない」
チェギョンの頭をくしゃくしゃと撫で回し笑って誤魔化したが うまく笑えず頬がひきつる
俺も
お前やユルみたいにうまく笑えたらいいのにな…
「もう寝ろ」
「は~い…殿下もね」
「ああ…」


だけど とうとう俺の中の張り詰めた糸が切れてしまった


いつも ありがとうございます

殿下が聞き逃したチェギョンのダッポンサ(닥본사)
ドラマで度々チェギョンがスラング(造語/若者語)使ってたな~と思い 入れてみました
殿下は何のことかわからないでしょう…
닥치고 본방 사수/タクチゴ ポンバン サス/黙って本番(生放送)死守 の略だそうです


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152.女子トーク ~ほんの少しでもいいから…あたしになにか愚痴でも言ってくれたらいいのに