KPP(1) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

BABYMETALはメタルであるだけではない。あくまでも「アイドルとメタルの融合」であって、文字通りOnly Oneである。

したがって、メタルバンドとしての進化とともに、アイドルとしても進化せねばならない。

だが、アイドルとしての進化は、メタル以上に難しい。なぜなら、日本のアイドル史上、誰が最も成功したのかという目標設定と、何をもってアイドルとするかという定義の問題があるからだ。

4月に欅坂46の話を書いたとき、「ぼくに対する有効な反論のロジックは、ぼく自身わかっている」と書いた。それを吐露してみる。

日本のアイドルの寿命は短い。良い楽曲に恵まれ、それが一発だけでなく続けて二、三発ヒットすると大人気となってTVやCMに露出が増え、ファンが殺到する。しかし、新しい別のアイドルが現れると、人気が急速に衰える。歌がヒットしなくなっても、バラエティやCMの需要はしばらく続く。しかし5年もすれば、いつのまにかTVで見かけなくなり、ライブ巡業をやっているらしい、という噂は流れるものの、お茶の間からはどんどん忘れられていく。10年後、結婚したり、別の職業についたりしている本人が「あの人は今」的な企画ものの番組に出てきてぼくたちを驚かせる。

「可愛い」「ファンが大勢いる」「人気がある」ということがアイドルの最大の価値である。事務所は、楽曲やグッズを作ってその価値を換金する。どんなにひどい楽曲でもグッズでも、アイドルだからファンがつき、その付加価値で売れる。今ならYMYの寝息(と称する空気)を缶詰にしてアスマートで売れば、そこそこ売れるだろう。実際、かつてアイドルの着用水着(と称する布)を1センチ四方の細切れにしてCDに付けて売った事務所もある。

つまり、短い期間だが何をやっても売れるのがアイドルというものであって、逆に言えば売れなくなったら「アイドルである」といえなくなる。

これがアイドルの定義だ。

現実問題として、さっき書いたように、生身のアイドルが長期間にわたって芸能活動を続けていくと、当然「可愛さ」や「ファン」や「人気」が減少する。そうなるともうアイドルではなくなる。で、どうなるか。

芸能界をやめてお嫁さんになるか、本当の芸能人、すなわちタレント、女優、アーティストになるしかないのだ。

アイドルをあの手この手で育てるのはうまいが、プロを育成することを目標としていない事務所には、一定の人気のピークに達した後は、その先やることがない。だから、平手友梨奈を評して「素人同然のAKBグループを抜けて、芸を鍛えてくれるプロデューサーをさがした方がいい」と言ったのだが、実はこれは、より人気のあるアイドルになる方法ではなく、アイドルをやめろと言っているのと同じことなのではないか。ぼく自身に対する反論とは、このことだ。アイドルの定義に沿ってアイドルにアドバイスすると、自己矛盾してしまうのだ。

 

ぼくはアイドルに関してごく一般的なことしか知らない。そのぼくから見て、1970年代以降の日本のアイドル史上、最もアイドルとして成功したといえるのは、キャンディーズ、ピンクレディ、山口百恵、松田聖子、小泉今日子、松本伊代あたりだろうか。1990年代の安室奈美恵、浜崎あゆみ以降は、ピンのアイドルというより、avexの方針で、最初からアーティストとしてプロモーションされていたように思う。で、純粋なアイドルは、モーニング娘。AKB、ももクロの時代になる。

70年代アイドルのうち、完全に意図的に姿を消した山口百恵を除くと、キャンディーズは解散し、女優になった田中好子は亡くなり、伊藤蘭は舞台で活躍したのち水谷豊のお嫁さんになった。藤村美樹はごめんなさい、わからない。

ピンクレディは、未唯がつい最近もANIMETAL LADYとなるなど歌手活動を続けているが、増田恵子の方は、静岡の旅番組で見た記憶があるが、今はごめんなさい、何をやっているか知らない。

松田聖子は現役だ。まあ、いろいろあったけど、今もサングラスかけてCMに出て歌っている。小泉今日子も現役感が強いが、女優といった方がいい。数年前もNHK朝ドラ「あまちゃん」に出ていた。松本伊代は夕焼けニャンニャンの頃から司会だったし、天然ボケだから「ママ」と呼ぶ夫ヒロミの好感度も高く、ときどきバラエティに出ている。

このあたりを頂点とすると、やっぱり、年を取ると、デビュー当初の、可愛さでTVに出て歌い踊り人気を得る、というアイドルではなく、女優、アーティスト、タレントとして生き残っていることがわかる。まだ「聖子ちゃん」と呼べる松田聖子は例外中の例外だ。

BABYMETALはどうするのか。

今、世界的に人気を博しているのは、メタルでありながらそこにJ-POPアイドルの要素が入っているからだ。日本でももうアイドルではなく「メタルアイドル」ないし「メタルダンスユニット」と括弧がつく。まだ10代なのにこのポジション。「半アイドル半アーティスト」なのだ。

そして、それこそが、新しい時代のアイドルの在り方ではないかと思うのだ。

実は、それほど年は違わないのに、このポジションを維持しているアイドルがいる。

それがきゃりーぱみゅぱみゅだ。

ベビメタファンには、広島出身、同じ事務所、MIKIKOつながりということもあって、Perfumeが「先輩」なのだけど、ぼくは、何度か書いたが、実はきゃりーぱみゅぱみゅ(以下KPP)を高く評価している。

一つはその音楽性、一つはその歌詞、そしてもう一つは全体的なプロデュース。

まず、音楽性。

例えば「PONPONPON」のサビはDEVOだし、「にんじゃりばんばん」はYMOですよ。

BABYMETALが80年代メタルの後継者を目指すとすると、KPPは同じく80年代のテクノ、クラフトワーク(LP買った)、DEVO(武道館に見に行った)、YMO(ウォークマンで聴いていた)、矢野顕子(冷やし中華祭り)の後継者を目指しているのではないか。

KPPの曲のメロディーや和音のあちこちに中華風というか東洋風というか日本風が多用されている。それも当時の流行りだった。だって、クラフトワークの「電卓」(1974)なんて日本語で歌っているんですよ。当時はイメージ上の未来だった日本から、40年後、テクノを日本語で歌い踊る人形のような女の子が世界に飛び出してきた。ボーカロイドもだが、世界はそういうストーリーに納得するわけです。

ちなみに「インベーダーインベーダー」のブレイクは、「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のブレイクにそっくり。電子音を取り入れたNuメタルへのオマージュとされるが、元々の元ネタはクラフトワークでしょう。

次に、その歌詞。

(つづく)