*十字軍 D932  (Der Kreuzzug D932)* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪交響曲第7(第8)番 ロ短調D759「未完成」第2楽章≫
以前、いわゆる「未完成交響曲」の第1楽章をアップしましたが、今日はその第2楽章をアップしてみます。

第2楽章は二つの主題で構成されていますが、オーボエとクラリネットで奏される第2主題はまことに美しく、「歌う人」シューベルトの面目躍如といった感があります。

ベートーヴェンの交響曲とは全く異質の深い叙情をたたえたシューベルト独自の交響曲がこの曲によって「完成」したと言えるのではないでしょうか?
この素晴らしい交響曲が「未完成」であることがつくづく残念です。

今日も、リカルド・ムーティ指揮、ウィーンフィルの演奏で聴いてみます。








シューベルト

今日の歌曲は1827年に作曲された

「Der Kreuzzug D932 十字軍」

詩は、カール・ゴットフリート・フォン・ライトナー(Karl Gottfried
von Leitner)。
シューベルトはこの曲の前後、ライトナーの詩6篇に付曲しています。以前ご紹介した「星 D939」もライトナーの詩でしたね。

十字軍が遠征に出発する様子を一人の僧が窓から静かに眺めています。そしてこの世の旅路も十字軍の聖地への旅と同じではないか、人生の旅も波だつ海原を越え熱い砂漠を越えて聖地に向かう旅なのだという感慨にふけります。




Der Kreuzzug 十字軍
Ein Münich steht in seiner Zell'
Am Fenstergitter grau,
Viel Rittersleut in Waffen hell,
Die reiten durch die Au.


一人の僧が自分の僧房の
灰色の窓格子の前に立っている。
大勢の騎士たちが武器をきらめかせ、
草原を通っている。


Sie singen Lieder frommer Art
In schönem, ernsten Chor,
Inmitten fliegt, von Seide zart,
Die Kreuzesfahn' empor.


騎士たちは美しく、声をあわせ、
信仰を持って歌を歌う。
彼らの中央では柔らかな絹の十字の旗が
宙にたなびいている。


Sie steigen an dem Seegestad
Das hohe Schiff hinan.
Es läuft hinweg auf grunem Pfad,
Ist bald nur wie ein Schwan.


彼らは岸に繋がれた
大きい船へと上っていく。
船は緑の道を遠ざかり、
もう白鳥のようにしか見えなくなった。


Der Münich steht am Fenster noch,
Schaut ihnen nach hinaus:
≫Ich bin, wie ihr, ein Pilger doch,
Und bleib ich gleich zu Haus.


この僧はまだ窓の前に立って、
騎士たちが遠ざかっていくのを見送っている。
「わたしも彼らと同じ、巡礼者なのだ、
たとえ家に留まってはいても。」


Des Lebens Fahrt durch Wellen trug
Und heißen Wüstensand,
Es ist ja auch ein Kreuzeszug
In das gelobte Land.


人生の旅は波を越え
熱い砂漠を抜けて進んでいく。
それもまた聖地へと向かう
一つの十字軍なのだ。


フィッシャー=ディースカウ


ヘルマン・プライ


マティアス・ゲルネ


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