カンは声高に笑うと後ろに立ちふさがるガタイのよい男二人に
「おい、この女、用意するとは一言も言わなかったぞ。どうしましょう。お前らの好きなようにしていいぞ」目配せしながら顎で指示する。二人は奇声をあげながら由花に掴みかかる。
FMラジオに流れる音楽に由花は生きていく気力を失っていた髪の毛が掻き乱れ、顔には青あざが出来ていた。涙は悲鳴に変わり、悲鳴は嗚咽に変わった。陽気なDJは夏休みの思い出特集なんて流暢な声で話続けている。由花はテーブルの上のラジカセを床になげとばした。夫は帰って来ない。
(ワタシハ、ドウシテ、コンナニサミシイノ?ユウキ、イマ、ドコデドウシテイルノ?)