「鉄矢さん!ヒョーー!」


いつも俺が
手の平で転がされているから、
今度は俺がと思って言った。

「いや、こてっちゃん。
正直カッコイイよ。
アカシを目の前にして
その台詞は言えねーよ」

「だろ?」

きた、と思った。
こてっちゃんは
すぐに手の平に乗ってくれた。

「そんでどうなったの?」

「アカシが俺に言うんだよ。
お前喧嘩してきたの?ってな。
俺は答えたよ。
てめーと一緒だよってな。
するとアカシは笑ってたよ。
そんでまた俺に言うんだよ。
喧嘩してきて
また俺と喧嘩すんのか?って」

「なんて答えたの?」

「てめーをブッ叩いて
俺がトップになるって
答えたんだよ。
そしたらアカシは
ニッコリ笑ったんだよ。
そんでよぉ、
分かったって言って立ち上がった」

その先が知りたくて
俺はじっと聞いていた。

ワン公に目をやると、
一口飲んで
顔をしかめたはずのビールを
こてっちゃんが飲む姿に
つられるように
どんどん飲んでいた。

「アカシに言われたよ。
俺、おまえみてーな奴、
嫌いじゃねーよって。
俺は即座に答えたね。
俺はてめーみてーな野郎は
嫌いだよってな(笑)」

「アカシはモテ顔だしね(笑)」

こてっちゃんが
ニコっと笑って
俺にデコピンをした。
全力だった。
俺は両手で額を抑えた。

「アカシは
まっすぐ俺に近づいてきた。
もう目の前に
来たっていうのに
拳を振りかぶろうとものしねーし、
にこにこ笑ってるんだよ。
俺は面食らってしまったよ。
やるしかねーと思って
殴ろうとしたら
次の瞬間俺は
地面に叩きつけられてた」

「俺は何をどうされたか
分からなかったけどよぉ、
地面に叩きつけられて
目が覚めたよ。
アカシのペースに流されてた。
そこからはもう無茶苦茶だったよ」

俺は額を擦りながら聞いた。

「負けたの?」

「アカシの拳はよぉ、
あの体でバカみてーに
重いんだよ(笑)
何度も意識が
飛びそうになりながらも
殴りあったよ」

「こてっちゃんタフだね」

「だろ?アカシも
フラフラになってたよ。
アカシの動きが止まったからよぉ、
勝ったと思って
思い切り殴ろうとしたら…」

「殴ろうとしたら…」

「目の前が地面だった」

「どういう事?」

「一瞬気を失っちまったんだよ俺。
殴ろうとしたのはいいけど
そのまま倒れてた(笑)」

「カッコイイよ」

「起き上がろうと思ったけど
もう体が動かなかったよ。
アカシの靴が
目の前に迫って来るのが見えた。
俺はもうここで
終わりだって覚悟したよ」

「やられた?」

「そしたらアカシは
俺の目の前に
ドスンとアグラをかいて
座ったんだ」

「やられなかったんだ?」

「アカシは座ったまま
何も言わねーんだよ。
だから俺から言ったよ。
やれよって」

「そしたら?」

「タバコに火をつけて
何も言わねーんだよ。
だからよぉ、
俺からまた言ったんだよ。
タバコ、
俺にも吸わせろって」

「そしたら?」

「自分が吸ってたタバコを
俺の口に咥えさせたんだよ。
そんでやっと口を開いたんだよ」

「なんて?」

「ラーメンでも食いに行かねぇ?ってな」

次回