初めての方プロローグからどうぞ

*五本松の決闘1話はこちら から


「アカシ!!!」


俺は無意識に叫び、

一心不乱に

アカシに向かって走っていた。


こてっちゃんも信男も

アカシに駆け寄った。


「アカシ!大丈夫か!?アカシ!」


皆で何度も何度も

アカシの名前を叫んだ。


知らない内に

ワン公も側にいた。



アカシの目は開いていたが、

一点を見つめるような

目のままで、

意識がどこかに飛んでいるかのようだった。


そして、無言だった。


俺はまた叫んだ。


「アカシ!」


すると

我に返ったかのように

目を一瞬大きく見開いた。


「うるせぇーなぁ…

こんぐれー大丈夫だよ…

イテテテ…」


「アカシ!大丈夫か!?」


俺は完全に

何が何だか分からなくなっていた。


すると、

思いついたように言った。


「あれ…達也…秀樹…

なんでここにいんだ?」


「…」


「来るなって

言ったじゃねーかよぉ…

バカヤロウ(笑)」


「ごめん…」


「…てゆーかよぉ、おめーら

カップヌードルちゃんと

持って帰ったんか?」


「いや…」


「おめーらよぉ(笑)

持って帰れって

言ったじゃねーかよぉ」


アカシは俺達に

心配させまいと思ったのか、

その場を和ます話をしだした。


「そんな事はいいからよ!

救急車!救急車!」


俺が立とうとしたら

アカシが俺の腕を掴んだ。


「達也ぁ…わりぃ、起こしてくれ」


「ダメだよ!寝てろよ!」


するとアカシは

いつもの優しい目で俺を見た。


アカシに

この目をされると

俺は弱かった。


俺はアカシに

肩を貸して一気に立たせた。


「イッテーーー!」


「ほら!やっぱダメじゃん!」


立ち上がったアカシは

おもむろに

両手で腹に刺さったナイフの柄を掴んだ。


そして

大きく息を吸い込んで

一気にそれを抜き取った。


「フン!」


ナイフには

アカシの血がべったりとついていた。


前が開いた制服の隙間から、

Tシャツが真っ赤に染まっているのが見えた。


「アカシ…」


すると

また俺に微笑みかけ、

無言のままナイフを投げ捨てた。


「達也、秀樹、今すぐここから逃げろ」


「やだよ」


「…だよな(笑)」


アカシは一つ大きく息を吐いて、


「信男、二人を守ってやってくれ」


と言った。


そして

こてっちゃんに目をやった。


こてっちゃんは小さくうなずき、

上着を脱ぎ捨てた。


アカシは俺に渡した。


アカシとこてっちゃんは

そのまま

西中のやつらに向かって走り出した。


「おおおおおおおおおお!」


アカシの雄叫びが響いた。


次回
五本松の決闘(8)
へ続く