神秘的大仏

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1981年のミステリーアクション映画。

仏教の聖地でもある楽山を舞台に、大仏に隠された秘宝を巡って戦いが繰り広げられる。

 

文化大革命後、初めて大陸で制作されたアクション映画。本作をきっかけに大陸でも次々にアクションものが作られていくことになった…といえば聞こえはいいが、何せ文革の痛手からまだまだ立ち直っていない当時のこと、はっきり言って作品の出来栄えは良くない。

そもそも見どころであるはずのアクションが相当にショボい。撮り方は下手くそだしポーズはカッコ悪いしで、同時期の香港映画と比べたらもはやお遊戯会レベル。ストーリーもトホホな感じ。

じゃあなんでこの映画を紹介するかといえば、他でもない、あの中国きっての大女優・劉暁慶がアクションをやっているから! これだけでもお宝映像ものだ。彼女の長いキャリアの中でも、本格的なアクション映画はこれだけだろう。もちろんスタントなし。アクションシーンは全部自分でやっている。まあ、あんまりうまくないんだけど(笑)

 

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「妓女列伝」執筆のため金瓶梅を読み返していたところ、ふと金瓶梅のヒロイン格である六人の妻妾達の人間関係が気になったので、ちょっと書き留めておきます。

 

藩金蓮と呉月娘

そもそも金蓮が夫を殺して西門家に入ってきたことは他の奥方達も了承済みで、最初の印象ははっきりいって良くなかった。そういうこともあってか、嫁いで間も無い頃の金蓮は正妻である呉月娘のご機嫌取りに尽くしている。そのため、二人の関係も最初は良好だった。しかし金蓮が凶暴な本性をむき出してくるにつれ、呉月娘との仲にもひびが入っていく。普段は金蓮の暴走にも知らぬ顔の月娘だが、時々辛辣な言葉を投げることも。金蓮も金蓮で、西門慶に月娘の悪口を吹き込んだりしている。そういうわけで中盤以降は何かと対立状態。お互いに恨みが積もったこともあり、最終的に月娘が金蓮を追い出す。

 

藩金蓮と李嬌児

西門慶が廓に入り浸って長く家に帰らない時期があり、その原因が廓の売れっ子・李桂姐であると知った金蓮が彼女を敵視。桂姐は嬌児の姪だったので、嬌児と金蓮の中も同時に悪化。以後、関係の改善は見られず。また嬌児が西門家の金銭管理担当であり、そのうえケチな性格ときているので、お金に不自由している金蓮はどのみち彼女を快く思っていなかったはず。

 

藩金蓮と孟玉楼

誰とでも仲良しの孟玉楼だが、とりわけ金蓮と仲が良く、一緒に針仕事をしたり囲碁をうったりしている。金蓮が誰かと喧嘩をした時も、玉楼は必ずといっていいほど彼女の肩を持つ。

二人とも再婚で、どちらも夫の喪が明けないうちに嫁いできたという共通点がある。境遇が近いから自然と仲良しになったのかもしれない。

 

藩金蓮と孫雪娥

序盤、春梅(金蓮の侍女。雪娥とはライバル関係)を通して大喧嘩をしたことによりずっと険悪な関係。雪娥が女中あがりの妾なので、主従ともども彼女を見下しているフシがある。

 

藩金蓮と李瓶児

李瓶児がスーパー金持ちな未亡人だったので、貧乏な金蓮は彼女を一方的に憎む。おとなしやかな瓶児は金蓮を姉と慕って仲良くしようとするが、それがかえって相手の怒りを倍増させる結果に。しかも瓶児は中盤になって妊娠、跡継ぎになる男の子を出産してしまう。どう考えても仲良くなりようがない二人だった。

 

呉月娘と李嬌児

李嬌児はもともと廓の出身。西門家は何人も妾を入れながら、ずっとその廓に通い続けており、馴染みの妓女には嬌児の身内もいる。真面目な月娘にしてみれば不愉快なはずで、当然嬌児に対しても印象が悪い。嬌児の方は呉月娘を正妻として立ててはいるが、それも西門慶が生きていた間のことで、彼の死後はあっさり西門家を見限っている。

 

呉月娘と孟玉楼

孟玉楼の円満な性格もあって、一応関係は良好。しかし金蓮の肩を持つことが多い玉楼は、自然と呉月娘に距離をとっている。

 

呉月娘と孫雪娥

孫雪娥はもともと西門慶の先妻である陳氏の侍女だった。妾になっても、他の妻達より身分が低く、あまり同格扱いされていない(挨拶の形式も彼女だけ違う)。そのためか、雪娥が金蓮の悪行を月娘に伝えても、月娘の方が取り合わなかったりする。

 

呉月娘と李瓶児

李瓶児は結婚前から西門家のお隣さんであり、何かにつけて西門家へ贈り物をしていた。その心遣いに、月娘は以前から好意を抱いている。しかし李瓶児が嫁いで以来、家庭内のトラブルがますます増えた(その大半は瓶児を恨む金蓮の暴走)ため、月娘はあまり彼女のことを快く思っていない印象を受ける。

 

李嬌児と孟玉楼

金蓮と嬌児が対立しているせいか、玉楼も適度に距離を開けてつき合っている。

 

李嬌児と孫雪娥

金蓮と仲が悪い者同士なので、割と仲が良い? 一緒になって月娘に金蓮の悪口トークに興じたりする。

 

李嬌児と李瓶児

殆ど絡むことが無い。瓶児が気前よくホイホイお金を出すのに対し、嬌児はケチなところがあるため、金銭面での対応で対立してそう。

 

孫雪娥と孟玉楼

金蓮と険悪な関係の雪娥に、玉楼は余り親しくしようとしない。ただし、用事がある時は普通に接している。

 

李瓶児と孟玉楼

比較的仲良し。瓶児も前夫の喪が明けないうちに嫁いできたパターンなので、境遇としては金蓮・玉楼と同じ。ただ金蓮が瓶児を憎んでいることをそれとなく察しているのか、玉楼の態度はどちらかといえば金蓮寄り。

 

李瓶児と孫雪娥

これまたあんまり絡みが無い。ただし李瓶児は上下わけ隔てなく接するタイプなので、別段険悪な仲というわけでもないだろう。

 

 

こうして見ると、本当に仲良しなカップリングって金蓮と玉楼だけやな…。

一番肩身が狭そうなのはやっぱり孫雪娥。身分が低い上に誰も味方になってくれそうな人がいない。李瓶児も割と心細い立場にいて、彼女がやたら金蓮を頼ろうとするのもそのせいか(金蓮は上辺だけは瓶児に優しく接し、裏で陰口をまき散らしていたのだが、純粋な瓶児はそれになかなか気づかなかった)。

なんだかんだ安定しているのは月娘。いざとなったら権力を行使できる立場にいるので、あえて彼女を怒らせる者は少ないのでは。

 

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老舎原作のドラマ。全28集。

日中戦争期の北京を舞台に、四世代の家族が同居する「四世同堂」の一家とそれをとりまく周囲の人々の生活が、戦争で徐々に壊されていく物語。

日中戦争終結40周年を記念して作られた作品。八十万字もの分量を誇る原作に対し、二十八集というのは少なすぎなんじゃないかと思われるだろうが、当時の大陸はまだテレビドラマ制作の黎明期であり、殆どのドラマは十話程度で終わってしまう作品ばかりだった。その転換期ともなったのが本作。二十八集という話数は当時でも多い方だったのだ。中国ドラマの歴史を語る上でも、なかなか重要な位置づけにある作品。

 

話数が少ないとはいえ、物語はうまくまとまっている。日本軍の侵略は殆ど間接的な描写で済まされているが、これがかえっていい演出になっている。それまで同じ一角に住んでいた隣人や家族が、ある日唐突にいなくなっていく。ある者は日本兵に処刑され、ある者は国のために戦場へ向かい、ある者は病気や貧困で死ぬ。日本兵が直接市民に危害を加える描写は無いが、戦争の影響は徐々に平穏な暮らしを壊していく。これが庶民の感じる戦争であり、占領体験なのだと実感させられる演出だった。まあそもそも、原作自体があんまり直接的な戦争描写をしていないので、その路線にドラマ制作陣がうまく乗っかったということだろう。撮影技法が未熟な点も結構目立つが、それも古い作品ならではの味。

キャストもそれぞれ素晴らしい。後に制作されたリメイク版ドラマや舞台でも、本作のビジュアルを踏襲しているものが少なくない。中国人にとってはまさに古典的名作だろう。

日本軍は悪として描かれているものの、原作で登場したあの日本人の老婆も出てくるし、そこまで酷い表現はされていない。そういえば80年代は日中関係が割と良かった時期だった。日中戦争終結40周年を掲げながらも、やたら抗日意識を煽る作品を原作にしなかったのは、そういう事情もあるのかもしれない。

ドラマ主題歌の「重整河山待后生」も素晴らしい名曲。老北京を舞台としたこのドラマのために、伝統芸能である京韻大鼓の名手・骆玉笙を起用している。

老舎作品が好きなら、絶対に見て損はない作品。

 

以下キャスト

祁老人/邵华

祁家の家長。祁家の第一世代。生粋の北京人。外国の侵略や王朝変動も乗り越えてきたため、日本軍の北京占領も大したことではないと考えていたが…。

 

祁瑞宣/郑邦玉

祁家の第三世代。学校で英語を教える教師。日本の侵略に心を痛め、国のために戦いたいとは思いつつも、守るべき家庭があるため苦悩する。

 

韵梅 /李维康

瑞宣の妻。もとは気弱だったが、戦争の影響により徐々にたくましくなっていく。

 
钱默吟 /杜澎
胡同では数少ないインテリ老人。意志が強い武闘派。 
 
祁天佑/高维启
祁家の第二世代。呉服屋の店主。中盤で日本兵の標的となってしまい…。
 
祁瑞全/谢钢
祁家の第三世代。 瑞宣の末弟。若くて血気盛ん。家庭を守る兄に代わって単身戦場へ。終盤北京へ戻り地下工作員として働く。
 
祁瑞丰/赵宝刚 
祁家の第三世代。真ん中の弟。教養が無く目先の利益に走り、ついには日本軍の走狗にまでなってしまう。演者さんは後のリメイク版で冠晓荷を演じる。何となく因縁を感じて面白い。
 
冠晓荷/周国治 
祁家の隣人。胡同では裕福な家だが、周囲からは煙たがられている。典型的な漢奸で、日本軍に取り入ろうとするも、その目論見はやがて裏目に出ることに。阿Q並みに精神的勝利法がお得意な人。
 
大赤包/李婉芬 
晓荷の妻。本作きっての極悪人物。
 
冠招弟/叶榛楠
冠姉妹の妹。戦争の波に流され、やがて日本のスパイとして働く。
 
冠高第/史玉中
冠姉妹の姉の方。こちらは共産党軍の地下組織に協力する。そういえば本作は共産党があんまり表立って活躍しないのも特徴か。
 
尤桐芳/徐美玲
冠晓荷の妾。正義感が強く、中盤である行動を起こす。
 
小崔/陈强
胡同の車引き。粗暴な性格で、妻にも度々暴力をふるうが、愛情も持っている。占領された北京でも何とか暮らし、やがて幸せを掴みかけるが…。 
 
小崔太太 /马宁 
名前のまんま。小崔の奥さん。中盤以降の彼女は見ていて痛々しい。
 
小文/迟铨
京劇役者。日本軍の前で演技をすることを渋り、殺されてしまう。 
 
小文太太/张静林
小文の妻で同じく役者。夫に殉じる。
 
蓝东阳/张连仲
自称高名な文学者。実態は単なる小物。 セコイ手段を駆使して、日本軍に取り入る。
 
日本老太太/李铧 
日本軍による北京占領後、胡同に引っ越してきた日本人一家の老婆。英語を話す知識人で、戦争が長引いていることに苦悩する。

 

 

リメイク版のレビューもあります。よろしければどーぞ。

http://ameblo.jp/hopeseven/entry-10885361392.html

 
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覇王別姫

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1993年の香港・中国合作映画。監督は陳凱歌。

中華民国初期から文化大革命後まで激動の五十年を、二人の京劇役者の生涯と共に描く。タイトルになっている「覇王別姫」は京劇の演目の一つで、楚漢戦争における項羽と虞美人の別れを劇にしたもの。

 

90年代の中国映画は色々と神がかっている作品が多いが、本作もそのうちの一つ。画面作りといい、物語のアプローチといい、生真面目で垢抜けない80年代の中国映画とは一線を画している。また、政治的な圧力からも脱却している作品が多いのが特徴で、この頃の監督達は割と自分の好きな映画を作れた世代なのではないか。

 

物語の経糸は京劇役者である程蝶衣と段小楼、そして女郎の菊仙の三角関係。劇で女形を演じる蝶衣は、そのうち自分の役である虞姫と同じように、小楼を愛してしまう。しかし小楼は女郎の菊仙と結婚し、三人の間で愛憎が入り乱れていく。女形が男役を愛するという現象は実際古くからあったようで、古典小説の「紅楼夢」でも娘役者達が同性愛に溺れるストーリーがある。

そして横糸に京劇の歴史。中華民国、日中戦争、国共内戦、文化大革命など、それぞれの時代で人々の価値観は急激に変動していき、それまで人々の娯楽だった京劇が、突然悪習として糾弾の対象になったりする。思えば近代以降の中国は激動続きで、度々政府や指導者がすげ変わる。これでは十年ごとに王朝が変わっているのと同じ。特に京劇は伝統文化ということもあって、その変化の影響をもろに受ける。近代初期、京劇は完全な大衆娯楽だった。日本軍がやってきて支配者になるが、彼らは中国文化に対して尊敬の念があった。戦後、国を救った共産党兵士の前で芝居をすれば、彼らは知識の無い農民層あがりだから、観劇の態度も下品そのもの。そしてついにやってきた文化大革命では、京劇が悪質な文化であるとして大衆から攻撃されてしまう。文革の描写自体は非常にあっさり流されているけれども、政治的な圧力による文化破壊という現象は作中で繰り返し主張されている。特に敵国である日本の方が、中国文化に好意的だという描写はとてつもない皮肉だ。

 

本作は映像の方も素晴らしい。画面の色の変化だけで、時代の移り変わりがわかる。こういう表現技法は80年代だと決して出来なかっただろう。2000年代になるとすっかり画面作りがより洗練されて、ハリウッド映画みたいになっていくのだけれど、かえって中国映画らしい素朴さが無くなってしまう。90年代はそのあたりのバランスも良い。80年代よりも撮影技術がしっかりしていて、かつ2000年代より中国映画らしい味がある。

また京劇の修行場面やメイク、衣装に至るまで細かな拘りが光っているのも良いところ。セットについてもちゃんと歴史の流れに沿って変化が起きている。そんな中で、京劇役者達だけが時代に流されず、伝統を守り続けて同じ姿を保っているという描写が素晴らしい。

 

本作は長い歴史をまたぐ作品なので、歴史に関する予備知識が無いとよくわからない部分も多い。逆に中国近代史は日本でもあまり触れられない部分だと思うので、この作品を通して色々勉強するのもあり。

とにもかくにも中国映画を語るうえで傑作の一本。見ていて損はない。

 

以下キャスト

 

程蝶衣/張國榮

京劇役者。虞美人役の女形としてスターになるも、時代の波に翻弄される。小楼を女として愛そうとするが叶わず、せめて演技の中だけでも夫妻になろうとするが、それも様々な障害により邪魔されてしまう。受難の末、ようやく再び小楼と芝居が出来るようになった時、彼の下した決断は…。演じる張國榮がとにかく素晴らしい!

 

段小楼/張豊毅

蝶衣の相方にして、幼い頃からの兄貴分。覇王別姫では項羽を演じる。一発芸として、煉瓦を頭にぶつける芸を持つ。舞台のことは仕事と割り切り、蝶衣の愛にも応えない。時代を経るにつて、日常生活でも舞台でも堕落していくようになり…。

 

菊仙/鞏俐

売れっ子の女郎。勝気な性格で、女郎らしく抜け目がない。鞏俐はあんまり好きじゃないんだけれど、泥臭い役をやらせたら右に出る者はいないと思う。

 

百度紹介ページ

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紅河谷

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1996年の大陸映画。

二十世紀初頭におけるイギリスのチベット侵略を背景にした歴史作品。

まだ世界にとってチベットが神秘の場所として認識されていた頃、イギリスの視察団が彼らのもとを訪れ、人々と交流を深めていく。しかし英国はチベットが中国進出における要地であることを考慮して、とうとう軍事進攻を開始。そんな中で、チベットに生きる様々な階層の人間が描かれる。

 

何というか、このあたりの時代だと中国もチベット描写に関してこそこそしなくていいのだろうな、と感じた。悪役は全部イギリスに投げてしまえばいいわけだし。かといって、イギリス人も完全な悪役にしてしまわなかったのがいいところ。なんで抗日作品でもこういうことが出来ないのか。

 

未開の国家が文明国に蹂躙されてしまうストーリーというのは、いつ見ても悲しい。特に本作だと、視察団とチベットのファーストコンタクトがとても友好的なだけに、話がハッピーエンドになるものだと思っていたから余計に悲しかった。

また上の紹介では省いたが、漢民族の村から逃げ出してきた娘・雪児と彼女を巡る人物の物語も、映画の横糸として全体を盛り上げている。

 

そのほかの見どころはチベットの美しい風景。巨大な雪山に果ての見えない草原、カットの一つ一つに惚れ惚れしてしまう。撮り方も非常にうまく、広大な景色と人との対比がいい味を出している。大陸映画は90年代に入ると撮影技術が格段に進歩している。戦闘シーンも豪快で火薬の量が凄い。岩山とか爆発しまくってたけど、あんなに壊していいのかな…。

 

チベットの習俗についても色々語られていて面白い。「头人(貴族)」と「差巴(農奴)」の関係とか、作中で度々語られる神話とか恋愛故事とか。

どうでもいいんだけど、大量の火薬による自爆攻撃って、中国のドラマや映画で本当によく見るシチュエーションな気がする(この映画でも二回出てくる)。実際そんなにうまくいくもんかなあ。

とりあえずチベット方面の歴史に興味があったら是非一度ご覧あれ。

 

 

以下キャスト

应真/雪儿

漢民族の娘。村の掟を破り殺されかけたところを兄に救われて逃げ出し、チベットにたどり着いてそこで暮らし始める。ラストの台詞はとても感動的。それにしても彼女のいた漢民族の村がチベット並に不気味な風習を持っていて作中一番の謎。まあ雲南とか四川の奥にある農村なんて、みんなこんなもんなのかもしれん。演じる应真はビジュアルがいかにも素朴な感じの娘で、とてもいい。あまり出演映画は多くないようで、もったいない。

 

邵兵/格桑

チベットの青年。武勇に優れた農奴。雪儿とは一緒に暮らしているが、男女としては曖昧な関係。貴族の娘である丹珠に心を寄せられる。イギリスの視察団とも友好的な関係になるが…。

 

宁静/丹珠

チベット貴族の娘。外界の文化を好奇心旺盛に受け入れる。格桑とは身分の差を超えて好意を抱くが。

 

曲吉/嘎嘎

チベット一族の少年。物語は彼の視点で語られる。

 

张京生/哥哥

雪儿の兄。処刑されそうになっていた彼女を救い出して一緒に逃亡するが、途中ではぐれてしまう。以来、漢人の商隊に入ってチベット周辺で彼女を探していた。銃の腕前は一級品。

 

多布吉/头人

チベット貴族の首領。風習を重んじる一方で、進歩した文明も必要であれば受け入れる懐の深さを持つ。

 

保罗/琼新

英国視察団の記者。チベットに留まり、彼らと友情を築くが、後に政府の命令でチベットを侵略することに。人物のモデルはFrancis Younghusbandだろうか? イギリスがチベット遠征をしたのは史実だが、本作では実在の人物が出てこないので、詳細な部分はぼかされている。演じているのはドラマや映画で外国人役の常連さん。

 

尼克/罗克曼

英国軍人。この手の映画の文明人らしく、何かにつけて銃をぶっ放す。一度はチベット人達と好意的な関係になるものの、やがてイギリス軍を率いてチベットに侵攻。軍人らしい理屈で侵略を肯定する。

 
 
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地雷戦

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1962年の抗日映画。モノクロ。

日中戦争期、山東省における人民部隊の勇敢な戦いを描く。この手の作品を作るのは例によって八一映画製作所。当時よくあった抗日ものである。

冒頭、「共産党指導のもと人民達が勇敢に戦った云々」のうそ臭いナレーションが流れ、「地雷戦」のタイトルが登場。下の方に副題で「教育映画」とある(笑) まさかこれでゲリラ戦を学べとでも言うのか。

 

本編の内容はいたって単純、ろくな武器を持たない農村の民兵達が、知恵を絞って少ない資源から様々な地雷を製造し、襲来してきた日本兵を殲滅するというもの。勧善懲悪、わかりやすい共産党万歳、中国人民万歳の映画。

共産主義的なスタイルとでもいうのだろうか、男女平等を強調した演出が目立ち、女性が積極的に戦線へ参加しているのが印象的。

戦争映画とはいえ、雰囲気は明るい。のんびりした音楽に、「民衆は英雄だ~どんな困難も恐れない~。日本を倒せ~故郷を守れ~」などという素朴な歌詞の挿入歌が微笑ましい。八路軍も民衆も含め、中国人側のキャラクターはほぼ死者なし。

 

作中の日本兵は、中国人民側と比べかなり間抜けに描かれている。戦争終結からまだ二十年も経ってないのに、歴史認識が酷すぎるんじゃないかという気もするが、何でも当時の抗日映画は日本兵を極端に凶悪に描くと観客が怯えてしまうとかいうことで、意図的に日本兵を滑稽な存在として表現していたそうな。

日本軍の隊長は日本語を話すが、とても聞いちゃいられないレベル。同時期の東宝映画が中国を舞台にした映画を製作すると、中国人役はそれなりにちゃんとした中国語を話すのに、本作の日本兵ときたら「しゃっげきー!」「かえる!(撤収の意味で使ってるんだと思うが…)」「きぉーつけぇ、むぁええ!(気を付け、前!)」だもんなぁ。チョビ髭、軍刀とビジュアルも典型的な日本兵そのもの。全体的にいい加減な描写が目立つ中で、日本軍に協力する漢奸キャラクターを登場させていたのが印象的。

 

地雷戦のタイトル通り、作中では民兵お手製の様々な地雷が登場。最初は仕掛け方を工夫するだけだったが、しまいには自分達で火薬や鉄まで作ってしまう。中盤に登場する「髪の毛地雷(髪の毛の糸が起爆用の紐になっている)」は、いかにも民衆っぽい知恵を感じさせてなかなか面白い。実際はこんなものじゃ作動しなさそうだけど。

どうでもいいが、地雷の威力がいちいち凄すぎじゃないか。ていうか、そんなに村中へ地雷仕掛けたら絶対誤爆するだろ、危ないだろ…。あまりの地雷礼賛主義には笑うしかない。

 

本作と「地道戦」の二タイトルは抗日映画の古典的存在として今日も知られている。古い抗日映画について学びたいという方は、是非見てみるといいかも。

杜十娘

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1981年の大陸古装映画。

元ネタは明代の説話集「警世通言」の「杜十娘怒沉百宝箱」。原作が短編なので、ところどころ内容を水増ししてある。本編は八十分程度なのだが、それでもかなり長く感じた。ラブシーンとかがいちいちくどい。数少ない見どころはオープニングと中盤に出てくる結婚シーンだろうか。さすがに映像だけあって、原作だと不足していた情景が再現されている。ラストは原作通りのバッドエンド。悪党どもの結末に全然言及してくれないので、これじゃ見てる方は全然すっきりしないような。原作を忠実に再現しているけれど、映画としての面白さは余り感じない。同じ古装ものでも、同年代の香港の方がうまく作っている気がする。

 

以下キャスト

潘虹/杜十娘

都の名妓。李甲と相思相愛になり、困難の末落籍して貰うが、彼が心変わりしたのを見て入水自殺。衣装が沢山出てくるのは見ていて楽しい。入水シーンは映像でやられると何故かいまいちだった。いかにも「これから死にます」という展開をかったるく流されるので、周りにいる連中が誰か止めろよと思ってしまった。まあ当時はこれくらいわかりやすく描く方がちょうどよかったのか。

 

佟瑞敏/李甲

若き書生。情は深いが軟弱。帰郷の途中、親父に折檻されることを想像してるシーンはヘタレの極み。

 

吴慈华/柳遇春
李甲の友人。原作だと李甲の同年ぐらいのイメージだったけれど、本作では髭を生やしていて結構年配っぽい。
 
娄际成/孙富
塩商。十娘に懸想して李甲から奪い取ろうとする。悪役の最期くらい、原作通りちゃんと描いて欲しかった気がする。
 
金雅琴/鸨母
廓の女将。強欲で李甲から金を絞り出し、彼の金が尽きると冷たく突っぱねる。
 
 

蜀碧

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清代の記録文学。全四巻からなる。作者は乾隆時代の学者・彭遵泗。
明末の動乱期、四川省で一大勢力を築いた張献忠について、当時の様々な逸話も含めて語ったもの。タイトルの「蜀」は四川の旧称。
張献忠と聞いてピンと来る方はなかなかの中国通だろう。学校で学ぶ世界史では、彼について殆ど触れられないが、中国史でも有数の残虐さで知られた人物である。もともとは李自成同様、地方における一介の賊でしかなかったが、徐々に勢力を増していき、一時期は皇帝を名乗った。しかし時の趨勢は彼に味方しなかった。その後の張献忠は豹変したように四川で大虐殺を繰り広げ、最後は侵攻してきた清軍に討たれる。そんな張献忠について語ったのが本作。
とにかく最初から最後まで人が殺されまくる。とりわけ第三巻、張献忠が四川を占領した後の話は、バラエティ溢れる殺戮エピソードに気が滅入ってくる。それもただ殺すのではなく創意あふれる死刑方法が詳しく描写されているからたまらない。さすがは中国、スプラッターなことにかけては他の国の追随を許さない国だ。張献忠以外にも、彼に立ち向かった楊展、劉道貞、鉄脚板といった人物達のエピソードも面白い。一部では有名な女武将・秦良玉の活躍などにも触れられている。
ところで…本作は乾隆時代、つまり張献忠の死から百年も後に書かれたものである。内容は作者が直接見たわけではなく、伝聞をもとにしたものばかりで、作中で述べられている話の大半は真実味に乏しい。
また、これが書かれた当時の清朝はかなり言論統制が厳しかった。本作冒頭では「古来の賊で張献忠ほど酷い者はいない」と述べているが、張献忠が暴れていたのと同時期には、明を侵略していた清軍も相当な数の人民を虐殺しているのだ。しかし、本作ではまるでその事実に触れられていない。それどころか、張献忠を討伐した清軍は正義の軍隊扱いされてしまっている。まあそんなわけで、内容を鵜呑みにしてはいけない部分もある。歴史書というよりは一種の野史として楽しむのが正しい。
 
張献忠の虐殺では、四川の人民数百万人が犠牲になったという。とんでもない数字に感じるが、よく考えたら後の中国にはこれを軽く上回る大虐殺をやってのけた指導者がいる。つくづく恐ろしい国だ。
 
好きな中国古典文学をランキングしてみました。文学なので小説以外も入ってます。
 
1位 紅楼夢
不動の名作。さる貴族の興亡を描く。とにかく中毒になる面白さ。日本であまり有名じゃないのは、とにもかくにも読みにくいからだと思う。ネットでもでたらめな解説ばかりが広がっているあたり、知名度の低さがうかがわれる。
 
2位 浮生六記
清代の文人による回想録。貧しい夫婦の甘い生活と、後に二人を襲う悲劇に涙を誘われずにはいられない。芸娘みたいな奥さんが欲しいなあ。
 
3位 桃花扇
戯曲作品。明王朝滅亡を背景にした一大ラブロマンス。凄く面白いのに、あんまり映画とかドラマ化に恵まれていない気がする。
 
4位 水滸伝
説明不要、梁山泊に集う百八人の豪傑の物語。個人的には百二十回本が好み。最終回の李逵と宋江のやり取りは何度読んでも泣ける。
 
5位 儒林外史
清代、科挙試験に翻弄される文人達の姿を描く。複数の人物と話を用いて一つのテーマを物語るという群像劇的なスタイルは、後の作品にも度々真似られている。かなり先駆的な作品。
日本ではあまり知られていないが、本国では紅楼夢、三国志演義、水滸伝、西遊記、金瓶梅と本作を合わせて「六大奇書」と呼ばれるほどの知名度。
 
6位 西遊記
ご存じ三蔵法師ご一行の物語。登場人物は絞られているしストーリーも基本的に一本道なので、四大名著では最も読みやすいのでは。日本人がよく知っている西遊記とは結構違う部分があるので、読んだら驚くかもしれない。特に三蔵はガッカリ和尚である。
 
7位 板橋雑記
亡き明王朝を、かつて南京にいた名妓達の姿と共に振り返った随筆。清に滅ぼされた華やかだった南京の街と、そこに生きた美しい妓女達の描写には感動する。国を滅ぼされるのはこううことなのか、という感覚が伝わってくる名作。
 
8位 揚州十日記・思痛記
前者は清軍の揚州における大虐殺を、後者は太平天国軍による大虐殺を、それぞれ無名の文人がつづったもの。中国文学でも非常に特異な立ち位置の作品。従来、中国の文人が守るべきである文章のルールをことごとく破っているのが特徴。それゆえに、凄く面白い作品でもあるんだけど。
 
9位 三国志演義
ご存じ三国統一に至るまでの英雄豪傑達の姿を描く。正直、現代の日本にはこの演義よりずっと面白くて日本人好みの三国志が山ほどある。だから中国好きでもなければ、あえてこれを読む必要はない気がする。
 
10位 金瓶梅
宋代を舞台に、一人の悪徳薬商の淫蕩な生活を描く。話の筋は退屈だし描写もくどすぎるけれど、金に色にと堕落しきった登場人物達の姿は読んでいてかなり面白い。個人的には侍女身分にも関わらずたくましい生きざまを見せる春梅が好き。
 
 

人魚姫

テーマ:

 

周星馳監督作品。原題は「美人魚」。

コメディ・アクション・ファンタジー・ラブロマンスがごっちゃ混ぜのエンタメ映画。まあつまりいつもの周星馳なんだけれど、「少林サッカー」や「カンフーハッスル」といった作品に比べると、大分一般的な客層を意識した作りになっているのでは。周星馳カラーは相当強いんだけど、以前よりそれがいい感じに抑え気味というか。

 

物語はいたって単純。海底の環境破壊によって大被害を受けた人魚達が、その元凶である金持ちのボンボンを殺そうとハニートラップをしかけるが、なんやかんやでラブロマンスが始まってしまう、というもの。泣けて笑えるエンタメ作品。

何気に環境問題なんかを全面的に押し出してくるのが意外だった。とうとうそんな時代になったのか中国人。まあどこまで真面目なのかようわからんが。

人魚と聞いたら、大抵の人は下半身が魚の美少女を想像するかもしれないが、本作の人魚ときたらホントに「魚の人間」という感じで、オヤジもいればオバチャンもいるしたこ足もいる。レントゲンでまんま魚の骨格がうつったり、骨の標本が出てきたり、やたらと人魚のファンタジックなイメージをぶち壊してくれる。他にも、後半襲撃して来た人間によって、人魚がカマで滅多刺しにされたり銛を突き刺されたりとか(しかも血の色とか効果音がこれまた生々しくて嫌なんだわ)、ストレートかつリアルな残虐描写が多い。中国の映画や文学って、こういうところを描くのはホントうまいと思う。

周星馳作品らしく、パロディやカメオ出演多数。知っていればなお楽しい。

印象的な挿入歌「無敵」はわざわざこの作品のために作曲したらしい。あからさまに八十年代の武侠ドラマを意識した歌詞と曲が笑える。歌われている人物は独狐九敗だろうか?

 

キャスト(適当に)

邓超/刘轩
スーパー金持ちのボンボン。青羅湾開発のため埋め立てを計画するが、自分を暗殺するため迫ってきた人魚の珊珊に惚れてしまう。髭は付け髭。邓超の演技がとにかく素晴らしい。この人こんなにギャグが得意だったのか。チキンを食べるシーンはちょっと泣けた。
 
林允/珊珊

人魚。海を破壊した刘轩を暗殺すべく、人間に化けてハニートラップをしかける。が、絶望的にドジッ子なのと刘轩が「無敵」なためか全然うまくいかない。魚なのにチキンが好きとはこれいかに。周星馳ヒロインお決まりのブスメイクも披露。演者さんは新人らしいけれど、普通にうまい。体当たりで作品に臨んでる感じが出ていて良かった。

 

张雨绮/李若兰
刘轩のビジネスパートナーにして大富豪。途中からとんでもない悪女へ変貌。ストーリー的に色々無理があり過ぎだけど周星馳だから仕方ない。演者さんは「ミラクル7号」の人。映画でもネタにされた。
 
罗志祥/八哥
タコ足の人魚。刘轩暗殺計画を練るが、策は単純極まりないハニートラップ。所詮脳みそはタコということか。しかし珊珊に対する思いやりは本物で、漢気もあるいいヤツ。作中では色々あって三本足になってしまい、ズボンがはけるようになる(笑)
 
范淑珍/人鱼师太
人魚達の長老格おばあちゃん。でかい尾ひれが特徴。そして作中最強のばーちゃんであり、MAXレベルの武功を持つ。かっこいいぞ! 明の時代にかの鄭成功とつき合っていたらしい。何故か鄭少秋のアルバムがそばに置いてある。ファンなのか(笑)
 
文章/警察甲・李尚正/警察乙
中盤で登場した警官コンビ。彼らと刘轩のやり取りは、恐らく本作最高のギャグシーン。
 
杨能/博物馆馆长
インチキ古代生物博物館の館長。演者さんは周星馳作品の常連。
 
林子聪/修理工
これまた周星馳作品の常連。出番は一瞬なので見逃さないように。
 
徐克/四爷
カントク!あんた何やってんですか!