人民公社史 文学集

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中国現代文学選集〈第18〉記録文学集 (1962年)/平凡社

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解放戦争後から大躍進期にかけて、共産党の指導のもと中国全土に人民公社のシステムが普及していった。人民公社とは農業・工業・政治・文化・教育などあらゆる事業を包括した組織で、ようはここに属して集団生活を送れば誰でも、立派な暮らしが送れますよ~というコンセプトで作られた。共産主義原理に基づきみんな平等で、搾取が起きることもないという、一見すると合理的で素晴らしいシステム…のはずだったが、それがうまくいったかどうかは後の歴史が示す通り。
「どんなに仕事をしても平等」ということは裏を返せば「熱心に仕事をするだけ損」である。それに気がついたら最後、サボりまくる人間がどんどん現れる。また農業・工業・教育なんでもかんでも一つの組織に詰め込んだ結果、ろくに専門性の無い人間が業務を請け負う例が相次ぎ、農業や工業は生産性がガタ落ち、教育は進まず、医療やろくに受けられず、といった弊害が起きた。かくして人民公社のシステムはあっさり破綻するわけである。

この選集には人民公社の黎明期から過渡期までの文集がまとめられている。収録タイトルは「東に昇る太陽」「緑樹は生い茂る」「北方の赤い星」など。まあ内容は似たり寄ったりで、いかに共産党が素晴らしいか、いかに人民公社が有益かといったことが、当時の農民や公社の記者によってつづられている。残念ながら大躍進後の悲惨な状況を描いたものはない。まあ中国政府がそんなものを記録に残すはずがないから当然か。そこらへんが書かれていないか期待して読んだんだけど。

今となってはいわゆるプロパガンダ文集でしかないが、それでも当時の中国人民がどれだけ共産党を歓迎していたかよくわかり、資料としては読み応えがある。日中戦争期から共産党は度々農村へ出入りして、貧しい人々のために革命運動を起こしていた。革命運動といっても、共産党が農民達を扇動し、地元の富豪や地主から財産を奪うというもので、実態は強盗とあまり変わらない。ただ人口比率としては圧倒的に貧乏人>>>>>>>金持ちなので、共産党が多数の人々の支持を得た理由がよくわかる。特に日中戦争期の貧民層は日本軍・国民党・富裕層から虐待される立場にあったので、困窮のうえにも困窮したことだろう。そんな時に現れた共産党は確かに救いの神だったに違いない。革命を成し遂げた農村は、どこの家にも毛沢東の肖像画が飾られていたという。
また人民公社の集団生活は女性の権利向上の助けにもなったようだ。公社の炊事係だったり裁縫係だったり、果ては製鉄に至るまで女性が仕事へ参加する動きが出てきたという。もっとも、これらも上述したシステムの問題により、結局機能しなくなってしまうわけだが。

本作の後書きでは、人民公社のシステムに一定の理解を示しつつも、先行きに不安を感じるコメントがつづられている。共産主義経済も、まだまだやってみなければわからなかった時代だ。人類史でも悲惨な失敗になってしまった中国の政策だけれども、当時の人々が抱いていた希望や、その後の失敗などを現代から見つめ直すのは大切かもしれない。

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