禅タロット小アルカナ考察:雲の3・ICE-OLATION | 穂積の覚書

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雲の3・ICE-OLATION(アイス・オレーション)です。



穂積の覚書-気まぐれ屋本舗-61

この人は凍りついてます。がっちがちです。深い厚い氷の中にいた人が、涙によって氷を少しずつ溶かしています。


「けれども、カイは身ゆるぎもしずに、じっとしゃちほこばったなり、つめたくなっていました。そこで、ゲルダは、あつい涙を流して泣きました。それはカイのむねの上におちて、しんぞうのなかにまで、しみこんで行きました。そこにたまった氷をとかして、しんぞうの中の、鏡のかけらをなくなしてしまいました。カイは、ゲルダをみました。ゲルダはうたいました。

ばらのはな さきてはちりぬ
おさな子エス やがてあおがん


 すると、カイはわっと泣きだしました。カイが、あまりひどく泣いたものですから、ガラスのとげが、目からぽろりとぬけてでてしまいました。すぐとカイは、ゲルダがわかりました。そして、大よろこびで、こえをあげました。」

(アンデルセン ハンス・クリスチャン著 楠山正雄訳「雪の女王」あおぞら文庫より引用)


全文は ここ
うっかり読みふけってしまった。

氷と涙といったら雪の女王ですな。


ICE-OLATIONは造語っぽい。

元はisolation(孤立)かな。アイソレーション。アイス・オレーション。似てる。

氷の中での孤立。楽しくはない。体も心も凍りついてる。何も感じないけど嬉しくも温かくもない。冷え切っている。活動停止している。動けない。



圧倒的に悲しい・辛い体験をしたときに、心の防御機能として感情や感覚が麻痺します。

分厚い氷で自分を守りながら、冷え固める。緩やかさはない。自由もない。外界からの刺激をすべて遮断して、氷の冷たさだけで生きていく。


ウェイト版の剣の3は、「避けられない悲しみ」。心を凍りつかせないとやりきれないほどの悲しみが襲ってきたってことでしょうかね。

悲しみの内容は人それぞれで、やっぱり「何が」は定義されていない。ただ悲しいことが起こる・起こった。


感覚を麻痺させて死んだようにやり過ごせば楽は楽ですが、それでは生きているとは言い難い。

確かに生きていればやることはたくさんあって、それに心を砕いていれば余計なことを考えずにいるのは可能です。

でもそれでは笑えないし喜べない。何かを受け入れることも出来なければ、与えることも出来ない。

禅タロットでは諸法無我・諸行無常の精神のカードもありますが、それは何も感じるなということではなく、感じた上で認め、やがて消えていくそれを慈しむという心ではないかなと思います。


大人になればなるほど泣くのは勇気が要るけど、それこそが氷を溶かす。

理屈を捨てて悲しいときは悲しみなさい。私が先ず泣いて、それで一緒に泣くから。

という優しいカードなんだなあと……最近やっと思えました(笑)。

だってびびるよね、なんかよっぽど悲しいこと起こりそうで焦るよね!(笑)

でもこの人は実は、新しいことが起こらなくてもずっと昔から心の隅にいて、黙ーって心を守って、静かに涙を待ってるんではないかな。

ゲルダによってしか目覚められなかった、カイみたいに。