浜井先生 久保大さん 朝日登場♪ | 女子リベ  安原宏美--編集者のブログ

浜井先生 久保大さん 朝日登場♪

 昨日の朝日新聞です。以下の記事を全文掲載します。
 浜井先生と久保大さんが、がんばっておられます。
 うー、ほぼ1年前、某フリーライターに「浜井先生のこの論考、正しい!これあってるよ!少年犯罪が少ないのに、世界一の少年への厳罰傾向なんて、いくらなんでも、やりすぎだよー」と叫んだのを覚えていますよー。
ちなみにスルーされましたが。


参考エントリー

世界一少年に厳しいデータ(詳細)

http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10012353519.html  

少年犯罪『報道』急増化データ

http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10011113761.html



治安は回復?悪化? 犯罪白書と学者が論争

2006年11月07日 朝日新聞


 日本の治安は回復に向かっているのかを巡って論争が起きている。法務省は7日、06年版犯罪白書を公表。白書は犯罪認知件数の減少など指標面での好転を認めつつ、なお「治安は改善したとはいえない」と逡巡(しゅんじゅん)する。一方「そもそも治安悪化そのものが幻想だ」との見方も有力で、「治安」の概念自体が揺らぎ始めたと言えそうだ。

 白書によると、交通関係を除く「一般刑法犯」の認知件数は96年以降、毎年「戦後最多」を更新。「日本の安全神話の崩壊」の象徴として使われてきた。ところが失業率と軌を一にして、02年にピークを迎えた後、03年から3年連続で改善。05年は226万9572件と前年より11.4%減った。検挙率も28.6%と4年連続で改善した。

 「専ら窃盗の減少によるもの。ほかの犯罪は必ずしも減ったとはいえず、景気のように回復宣言は出せない」と説くのは同省法務総合研究所の小栗健一総括研究官だ。

 一般刑法犯の76%を占める窃盗は前年比12.9%減。件数で25万6502件減り、全体の数字の減少を牽引(けんいん)している。

 「治安悪化の指摘で地域の防犯活動など治安意識が高まり、監視カメラが普及した」。結果、窃盗のような「人の目に見えやすい犯罪」が減ったという。「いくら数字が改善しても、凶悪犯罪が次々と起きる中、国民の『体感治安』が改善したといえるでしょうか」

 治安は良くなったのか、悪くなったのか、足踏みをしているのか。

 「その、どれにも当てはまらないですね」

 小栗研究官は少し間を置いて、答えた。

 ↑なんだろうこの含みな表現は?・・・。


 「そもそも悪化しているのは体感治安であって、客観的な犯罪情勢ではない。これまでの白書のデータでも明らかだ」と話すのは龍谷大の浜井浩一教授(犯罪学)。03年まで法務省勤務。白書を執筆したこともある。

 例えば、外国人犯罪。白書は「手荒で組織的な犯罪の増加は国民の警戒心や不安を急速に高めている」と指摘。一般刑法犯の検挙は02年以降増え続け、05年は4万3622件と過去最多だった。

 だが、総検挙人員に占める外国人は3.8%。「外国人すべてを日本から追い出したと仮定しても、どの程度犯罪が減るでしょう」と浜井教授。

 警察が事件を把握した「認知件数」の多少で論じることへの疑問もある。05年まで東京都治安対策担当部長だった久保大(ひろし)さんは「何を取り締まるべきかという市民と警察の意識によって表面化する数字は左右される」と話す。警察庁は99~00年、ストーカーや夫の暴力など「民事不介入」が原則だった分野に積極対応するよう通達。「届け出のハードルが低くなった。社会の不寛容の態度も影響しているだろう」

↑行政の内部にいた人がいってるということをお忘れなく!


 法務省は、逆の方向に目を凝らす。「認知件数の裏には、被害者が届け出をしないまま表に出ない『暗数』がある。本当の治安を考える上では暗数の分析も必要になる」

 ↑えっあの逆の方向じゃなくて、浜井先生が「暗数」を含んだ被害実態調査やってるじゃない?そこでも日本は先進国中一番安全だったじゃない。それに「暗数」が少ないとされる「殺人」の動向出してよ。増えてないじゃない?さらに暗数を掘り起こしてるだけなら「治安悪化」ではないでしょう?


 成城大の川上善郎(よしろう)教授(社会心理学)は次のように分析する。

 行政の不審者情報の通知サービスや銀行の指認証システムなどを見聞きする市民は「治安対策が盛んなのは、治安が悪いからだ」と不安になる。その不安感をすくい上げた行政が――。「そういったループがものすごい勢いで進んでいる」

 ↑そのとおりです。


 「論争」って見出しにありますが、なんというか、かんというかなんですが・・・。不安不安とあおってばかりいる新聞が気が付いたことは、よかったかも。とりあえず前進した気分です。




 以下の文章は、2003年という早い段階で「法律時報」で浜井先生が座談会に参加されていて、そのとき話されていたものです。内容を抜粋、要約します。的確に今の状況をとらえていると思います。

 当時、表の論者はきっとオーウェル、オーウェルとかなんとかいってて、読者をしらけさせていたんじゃないでしょうか(わたしもその読者のひとりでした)。また「物語」ですかぁ?みたいな。


浜井浩一氏:
 監視国家というよりは。「監視社会」という枠組みでというお話がありましたけれども、私は今年の3月まで法務省に勤めていまして、いわゆる国家権力の末端にいたわけです。そこにいて、国家権力が何か意図的な意思として国民を監視しようとしているふうに感じたことはあまりありません。

 ただ個々の思惑による動きが同じ方向に向かっているようなことはあると思います。そういった観点からすると、最近の情報公開の流れで国も世論の動向を気にしていますから、国家権力が何かを画策しているという視点よりは、市民の不安を背景にして、国がそれぞれの官庁の利害に基づいて対応していると考えるのが妥当ではないでしょうか。
 もちろん、これは役人の性みたいなものですが、場合によっては市民の声にのっかって、それぞれの官庁の権益を拡大しようとする動きは当然あると思います。

 昨年の白書を取り上げた新聞各紙が一斉に主要国の認知件数や検挙率の動向を比較したグラフを一番に取り上げて、各国の動向だけではなく、数字を比較して日本の検挙率が主要国でもっとも低い水準になったと伝えたのにはびっくりしました。
 私も研究官だったときはこのグラフを作成していたのですけれども前任者からの引継ぎで主要国の犯罪統計のグラフはそれぞれの国の認知件数なりの動向を知るものであって国と国を比較してはいけない統計だということを何度も注意されました。各国の犯罪統計はそれぞれの国の犯罪構成要件も違うし、警察力も違うし、統計の計上手続きも違うのですから当然比較はできません。ただ省スペースのために同じ図表に各国の動向を載せているのです。たとえばこのグラフを使ってドイツの窃盗の認知件数は増加傾向にあるのに対して日本のそれは減少傾向にあるという比較の仕方はしてもいいけれどもドイツより日本が低いとか高いとかいってはいけないんです。

 そうしたグラフがマスコミに取り上げられるというのはおそらく治安が悪化している証拠をほしがっている記者に対する統計の見方についての説明が十分でなかったのではないかと思います。

 マスコミなどで治安が悪化しているといういろいろな論調を見ていくとたとえば刑事法の前田雅英先生の本「日本の治安は再生できるか」を読みますと、いろいろな統計を取り上げてきた結果最後に「戦後後半の犯罪の増加や質的変化を大きく捉えれば社会規範の喪失の説明できる」と突然出てくる。それに対する科学的な説明はほとんどないのですけれども。また例えば毎日新聞社の論説委員の三木さんという人が書いている「改めて「体感治安」を見つめよう!」でも体感治安の悪化を取り上げ「人々の道徳心や規範意識は地に落ちている、特に教育関係者には教育の荒廃が深刻なモラルの低下につながっていることを理解してもらわなければならない」というふうに統計を示したうえでこうした結論がくるものが多い。

 日本のモラル、特に子供のモラルが低下してどうにもならない状態になっている。世の中全体がおかしくなっているというようなことが叫ばれているわけです。

 統計が脅威が現実のものであることと誇張されて示されることが多いといわれています。新聞の社説などもそうですし、前田先生の本でも統計が根拠として使われています。