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ふたりの5つの分かれ路


淡々と事務的に離婚の手続きをする中年の男女。結婚生活に終止符を打ったマリオンとジルは、その後、とあるホテルへ向い、何年か振りに肌を合わせます。けれど、それで、ヨリを戻すということもなく、別れます。ジルの「やり直せないか?」という問いかけも虚しくドアは閉じられ、マリオンは立ち去ります。その後、二人の時計は、左に回り、過去の4つのシーンが甦ります。

1.息子がまだ幼い頃、夫の兄とゲイの恋人が遊びに来て、4人で飲食するシーン
2.マリオンが難産の末、出産するシーン
3.ふたりの結婚式と披露宴のシーン
4.ある島でふたりが出会い結ばれるシーン


タイトルから、過去を振り返って、「あの時、別の道を選んでいたらどうなっていたか?」と振り返る話を想像していたのですが、そうではありませんでした。男と女が出会って、惹かれ合い、結婚し、子どもをもうけ、すれ違い、別れた。何ということのないありふれたストーリーを逆さ回しにしたら、ちょっと面白いものになった、といったところでしょうか。


過去へと遡っていくことで、二人の亀裂が何年もの歳月を経て少しずつ広がってきたものであることが分かります。


そして、マリオンとジルのカップルとは対照的な存在として描かれているのが、マリオンの両親。絶えず、諍いを繰り返しながら、別れようとはしない二人。夫婦の愛情とは何なのか?何だか、本作を観ていると、カップルの間の愛情についてマイナス面が強調され過ぎているような気もしますが...。最初は、幸福だったマリオンとジルも、元々は、ジルと元の彼女との別れの上に成立したカップルで、当初の幸せの中にも不幸の影は忍び寄り、離婚してもなお、ジルは強引なまでにマリオンの身体を求め、未練を示す...。マリオンの両親は、長く結婚生活を続けているもののケンかばかり。ジルの兄とその恋人の間にも、不穏なものが感じられ...。


本作では、マリオンとジルの他に、マリオンの両親、ジルの兄とその恋人の青年、ジルとジルがマリオンと出会う前の彼女というカップルが登場し、それぞれの間のそれぞれの愛情のあり方が描かれます。この辺りの対比が、もっと丁寧にされていると、愛情の複雑さのようなものがもっと立体的に感じられたような気がします。


全体に、起伏のない淡白な作りになっていて、それこそが、本作の魅力にもなっているのかもしれませんが、それにしても、あっさりしすぎた感じがしました。


これまでに、何作かフランソワ・オゾン監督の作品(「ぼくを葬る」 「まぼろし」 「8人の女たち」 「スイミング・プール」 )は観ていたこともあり、それなりに期待しつつ観たのですが、期待した程ではなかったというのが、正直なところです。



ふたりの5つの分かれ路@映画生活