東北新社
スイミング・プール 無修正版



ミステリー作家のサラは、出版社の社長の別荘で、夏を過ごすこととなります。南仏にあるプール付きの別荘での生活を始めたサラは、すぐに執筆を始めますが、そこへ、持ち主である社長の娘というジュリーがやってきます。毎晩のように違う男を連れ込んで騒ぐジュリーにサラは苛立ちますが、次第に、ジュリーに興味を持つようになり...。


ジュリーを見つめるサラの視線。そこには、若さに対する嫉妬と憧れ、自分の老いに対する不安や恐怖...。様々な感情が交錯します。


そして、どこまでが現実でどこからが妄想なのか...。現実と非現実が入り混じる不思議な空間。


ジュリーは、実在したのか、サラの妄想の中の住人なのか、亡きジュリーの母の怨念が生み出した存在なのか...。サラがジュリーの母について問うた時の別荘の管理をするマルセルの妻の恐怖の表情を考えると、ジュリーは幽霊だったかとも思いたくなりますが...。


ロンドンでの場面は事実。サラが南仏へ行ったのも事実。ジュリーが登場する場面は、小説の中での出来事。というところが妥当な解釈でしょうか。


ただ、本作の面白さは、謎解きよりも、サラのジョンへの気持ちの変化です。恐らく、サラはジョンのかつての恋人。けれど、現在は、色恋よりビジネスライクな関係になってしまっているし、サラは、ジョンの気持ちが自分に向いていないことを感じている。そして、そこに、ジョンの新しい恋人とも思われる若い男性作家の登場。別荘でのジュリーの登場も、サラにとっては、自分よりもジョンに近しい関係の人物。ジョンとの関係が薄れていくことへの苛立ちが感じられます。

けれど、ラストで、サラは、ジョンに対して三行半を突きつけます。ここで、最初、嫉妬と憧れの対象であったジュリーが、共犯者となり、サラは、ジョンから軽やかに自立していきます。

忍び寄る老いへの焦りや不安から抜け出し、自分を取り戻し、自分らしい道を選び取ったサラの表情からは苛立ちが消え、穏やかな落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

女優陣の演技はさすが。新旧の女優の演技が本作の味わいを深めています。正解は見えませんが、あれこれと考えさせられる印象的な作品です。



スイミング・プール@映画生活