進歩のない人たち その2 | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

お正月はなにもすることがなかったのでゆっくりしていますが、昨日、以下の記事を読んだのでグラフを作りました。FP深田晶恵さんの住宅ローンに関する助言は、2016年になっても相変わらずです。

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Q9の答えは②で合っていますが、その後の解説は不適切です(以下参照)。

ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏は「乗り換えようと思う時期はすでに固定金利が上がっていることが多い。低金利のうちに固定金利の比率を高めておいた方がいい」と話す。


どこが不適切かより詳しくご理解いただきたく、グラフを2つ作りました。

まず、一つめ。2002年より、いざなみ景気の影響を受け長期金利が上昇し、ゼロ金利解除で変動金利も上昇しましたが、サブプライムローン⇒リーマンショックの流れで金利は低下しました。つまり、金利は「上がりっぱなしではない場合がある」ということ(当たり前の話)。


そして、2013年5月に長期金利が上昇し、メディアは「住宅ローン金利上昇があぁぁぁーーー」と大騒ぎしました(日経MJの上半期ヒット商品番付では西の横綱が「住宅ローン」になったほど)。しかし、それ以前から今に至るまで、変動金利はピクリともしていません。そして、その肝心の長期金利の今は、2013年5月の最高水準(0.9%)の3分の1(0.3%)まで下がっています。つまり、「変動金利が上がる前に、長期金利(固定金利)が再度下がる場合がある」ということ。


未来は不確定なのですから、こういった目の前の事実を伝えることも重要です。短絡的に「変動金利を固定金利に切り替えを」というのは、「株を買えば儲かります」と変わりません。不確定な未来を断定しているようなものですから不適切です。正しい情報提供とは程遠く、ただの偏見です。

このような安易なFPが2016年になってものさばっていて、なんの疑いもなくメディアが重宝しているという状況は、嘆かわしいとしか思えません。これは、ただの不勉強かつ不誠実でしかありません。

深田さんは同様の発言を、週刊ダイヤモンド2013年2月2日号でもしていて(というより、その前より至るところでしていますが…)、拙著「住宅ローンの教科書」では、実際の返済プランに落とし込んで具体的に把握していただきました。深田さん(を始め、多くのFP)がしてきたこの手の論調通りにしたら現在どうなっているか、次回検証したいと思います。

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