住宅ローンの接客 | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

私は金融機関での研修をさせていただくようになって今年で8年目になります。お陰様で今年は過去最多数の研修をする予定になっていますが、昨年から徐々に増えているのが、金融機関以外、保険会社、日本FP協会、宅建協会といった住宅ローンに関係するプロからの研修依頼です。

日々、関連業務に従事されていらっしゃるので知識(インプット)はOK。しかし、現場は一般論では解決しないケースもありますし、なにより「もっともっとお役立ちしたい」という想いを持っていらっしゃり、せっかく蓄えた知識をお客様に上手に伝える方法(アウトプット)に関して日々ご苦労されていらっしゃいます。そこで、私が住宅展示場で実施している相談会や日頃の個人相談業務で行っている接客方法をご紹介させていたいています。これが、ありがたいことに好評です。

前半は「初めての住宅購入なので、住宅ローンのことをまったく知りません。基本的なことを教えてください」といったお客様への対応です。住宅ローンのチラシを使うのは方法の一つですが、商品概要の部分は小さな文字が並んでいて、それを指したところで見えません。一例ですが、変動金利の金利の見直しは大概以下のように書いてあります。

4月1日と10月1日の年2回見直しを行い、それぞれ6月と12月の約定日の翌日から新利率を適用します

一度以下のような文章も見たことがあります。

4月1日と10月1日の年2回見直しを行い、金利を見直した月の翌々月の約定日の翌日から新利率を適用します

これって、読んでいる途中で萎えますよね。そもそもお客様はこの文章を「読んでもわからないから教えてくれ」といっているのですから、それを朗読しても意味がありません。そこで、以下の図を示しながら


7月から12月返済分の金利は4月1日に決まり、1月から6月までの返済分の金利は前の年の10月1日に決まります

と話した方がわかりやすいのではないでしょうか。こんな事例をいくつか取り上げます。東日本大震災の復興支援で作成した「住宅ローンの基礎知識」という自作のリーフレットを持参して休み時間などには見ていただいていますが、知識のある方ならばそこに書いてある図を使えば簡単です。

後半は「頭金は必要か」「老後にローンが残ったら」「どんな金利を選んだらいいか」「将来金利が上がったら」といったお客様の不安解消について。日頃からいっていますが、これには「数字と根拠で対応する」に尽きます。この根拠の所在や数字の出し方についてお話をさせていただきます。特に数字に関しては、住宅ローンの提案技術の向上は「頭で覚えるのではなく体で覚えるもの」です(座学の研修講師がこれをいっては元も子もないのですが…)。CASIOさんからいただいた「BF-750」を会場に数台配って、実際に触って「体験」していただいています。

BF-750をお持ちの方でも、「借入額計算」や「年賦償還」はあまり使ったことがないという方が多く、その使い方をご説明すると「おぉーーっ!」と会場が湧きます。そういった機能を使ってお客様に数字を見ていただくことの重要性、その作業は簡単だということを知っていただたいた上でiPadのアプリをご紹介すると、皆さん即ダウンロードされます。私は無料のアプリしか使っていませんが、無料のアプリで十分です。というより、無料のアプリは大変素晴らしく助かっています。

金融機関の研修で「ロールプレイ」を実施するケースが多いと思います。私は参加者にやっていただく前に、「10年固定と全期間固定の償還表の説明」や「ローン電卓を使った借り換え試算」という場面を自分でやっています。「あの講師、実際どこまでできるの?」という思いを払拭するにはそれか一番簡単な方法ですし、あれこれ理屈を並べるより見てもらった方が刺激になり印象に残るという狙いからです。毎回そのロールプレイは撮影しているので、以前のものをビデオで流せば講師は楽ですが、それでは寝ます。講師が楽をしたら、簡単に見透かされ緊張感がなくなります。ですから、受講者が100人以上いようが、毎回実演しています(メディアで偉そうにしているFPの大先生でこれができる方何人いますかね…)。

前回も書きましたが、私は「FPは対面販売の接客業」だと思っているので、私はこういった点が気になって仕方がありません。私が初めて住宅展示場で相談会やセミナーをさせていただいたのが、平成14年。その頃は今ほどインターネットが発達していた訳ではないので、ブログやSNSといった手段が普及しておらず、とにかく「人と会う」以外に手段がありませんでしたが、そのお陰であれこれ接客技術について試行錯誤しました(今でもしています)。

今は当時と状況が違うので、ブログを書いたりすれば「一端のFP」を気取ることはできますが、それは集客や宣伝の一手段であって実際の業務ではありません。所詮は机上論です。お客様の悩みはそれぞれ異なります。ブログを100回見てもよくわからないことが、面と向かってキチンとした説明を1回聞けば解決するということはいくらでもあり、「百聞は一見に如かず」(この場合、見ると聞くが逆ですが)の典型がFP業務であり、この仕事の醍醐味ではないでしょうか。

この業界では「FPは先生業」だと勘違いしている人が多く「こうしなさい」みないなのは典型です(そういう人ほど大したことがない)。実際は色々とご相談をしてくださるお客様がいて、その解決をお手伝いすることで私達が成長していくのだと思います(私はそうでした)。

つまり、学校で「問題を出してくれる」のは先生ですが、その問題を出してくれる「先生はお客様」であり、私達FPはその問題を必死に解いていく「生徒」ということ。その問題が解決できて初めて先生から「」をいただける訳です。私も「講師」という立場で「先生」と呼ばれることがありますが、勘違いしないように気をつけます。

ということで、同業者を見渡したところこういった研修を実施している様子があまりないようなので、「接客方法」にご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひ声を掛けてください!という宣伝でした。

最後に…

今日で東日本大震災から4年経ちました。私は恵まれているので被災地に足を運ぶことができていますが、皆さんご承知の通り復興はまだまだです。仮設住宅から復興住宅への移転など、これから現地では生活環境が大きく変化する方達がたくさんいらっしゃいます。

そういった方達のためにも一層の努力をし、東北の復興に少しでもお役立ちし、独立後ずっとお世話になっている東北の皆さんに恩返しをしたいと思っています。