日経新聞被害者の会 | 池上秀司のブログ

池上秀司のブログ

ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。

週明け日銀の金融政策決定会合が行われました。結果は現状維持です。

当面の金融政策運営について(2014年3月11日)

ここから変動金利の動向を考えてみましょう。多くの変動金利型住宅ローンは借入期間中

4月1日と10月1日の年2回金利の見直しを実施し、それぞれ6月と12月の約定日の翌日から新利率を適用する

となっています。

3月の日銀金融政策決定会合で現状維持

4月1日の変動金利見直しも現状維持

それは7月から12月の返済で適用

2014年中、変動金利の金利は変わらない

という結論が得られる公算が高くなっています。

そこでです。以下当ブログの過去エントリーを考えてみます。

日経新聞を読んでいない日経新聞記者(2012年3月26日)
日経新聞記者の経済観念(2013年8月13日)

要旨としては日経新聞の大賀智子記者とファイナンシャルプンランナーの深田晶恵さんが「変動金利は危険だから固定に変えましょう」といっていた訳です。結果はどうでしょう。

彼女達の見立ての逆です。

2012年2月1日の記事で大賀記者が「1年後に1%上がったら」という滅茶苦茶な論法で不安を煽り、それを示した図を深田さんは絶賛しました。



現実は2年経ってこれっぽっちも動いていません。彼女達(それ以外の人達も)はポイントを見誤っています。考えるべきは「金利が1年後1%上がったらどうなるか」ではなく「金利が1年後1%も上がるのか」です。彼女達のいう通りにした方は現状明らかに損をしています。これについて彼女達はなんの罪悪感も抱かないのでしょうか。まぁ、深田さんに至っては10年以上やっているので罪悪感の「ざ」の字もないのでしょう。

彼女達が悪質なのは、最初のエントリーで取り上げた元の記事は2012年2月1日の紙面に掲載されています。そのときの長期金利の利回りは0.96%。次に取り上げた元の記事が書かれたのは1年4ヶ月後の2013年6月8日。当時の長期金利は0.86%。

つまり、最初の記事を書いた時期より後の記事を書いた時期の方が金利が下がっていたのです。彼女達は「長期金利(固定金利)は短期金利(変動金利)よりも先取りして動く。だから変動金利が上昇してくる頃には固定金利はすでにかなり上昇しているから固定金利に変えられない。だから、今すぐ固定に変えなさい」という論調です。その先取りする長期金利が下がっていたということは、最初の記事の固定金利への誘導は明らかに不適切だった、長期金利が下がっているのだから短期金利(変動金利)は上がりにくくなったということなのに、それは一切スルーして同じことをいっています。普通の神経では考えられないことです。

そして、今はどうでしょう。長期金利は昨日(2014年3月12日)の終値で0.625%です。当時よりも下がっています。日銀は大規模金融緩和中。消費増税(10%まで視野に入っている)を控えて利上げという判断はしにくい。確かに5年後、10年後はわからないにしても、この2~3年の変動金利の先行きはある程度わかります。

大賀記者や深田さん達はどうでしょう。ダンマリです。というより、これで少し金利が上がる気配を感じたら、また大騒ぎして消費者に無用な不安を煽りでもしたらとんでもないと思います。現状は10年で見たらまだまだ低水準で、2倍になってもまだ低いといえます。

【過去10年の長期金利推移】


彼女達に良心というものがあるのか相当な疑問です。私には単純に消費者を欺いているとしか思えません。あの記事を読んで仮に固定金利に変更してしまった方がいたとしたら、完全な被害者です。最終的にはご本人の判断ですのでどうすることもできないにしても、皆さんで「日経新聞被害者の会」でも立ち上げて、苦情の一つでもいっていいと思います。実損が発生しているのですから、その権利は十分有しています。なにより、日経新聞は記事の提供の仕方を考え直すべきです。このような無責任な姿勢では他人のお金に口出しをする資質がありません。

深田さんは住宅販売に従事している方達のことを「業者が変動金利で試算するのは売りつけたいから」「彼らは住宅のプロであって住宅ローンのプロではない」などと散々蔑んできましたが、どの口がいうのでしょうか。真摯にお客様と向き合っている方達に対して失礼極まりない発言です。こんなことを10年以上繰り返して、考察も反省もない深田さんを「住宅ローンの第一人者」として重宝しているメディアは、私からすれば最近話題の作曲家とその取り巻き連中と同じです。

【文章追加】
日経電子版を見たところ2014年3月13日には以下のような記事がアップされていました。

追加緩和、是非の判断は7月か

追加の金融緩和を視野に入れているという報道をしておいて、住宅ローンの話になると「変動金利の急上昇」となります。これでは日本経済(音痴)新聞といわれても仕方がないでしょう。

【参考記事】
検証記事を書いてほしい