原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の一部を改正する法律案
原子力損害賠償・廃炉等支援機構から資金援助を受ける原子力事業者による廃炉等の着実な実施の確保を図るため、原子力事業者は廃炉等積立金(仮称)を同機構に積み立てなければならないこととする法案です。
本来であれば、福島第一原発事故が発生した時点で、 一定額の賠償への備え(一般負担金)が確保(積立て)されているべきでありましたが、実際には、措置は講じられておらず、予め資金が確保されていませんでした。
その結果、「過去分」を負担していない当時の電気の全需要家は、より安価な電気を享受していた一方、 自由化以後は、引き続き原子力事業者から電気の供給を受ける需要家と、新電力へ切り替えた需要家との間で負担に格差が生じているとして、「過去分」について国民全体で負担することが妥当でないか、との意見があり、これらを反映させた法案と考えます。
予算案では、資源エネルギー庁の電力等安定供給確保費として「積立金制度を導入するための調査委託費」に2041万2000円を計上。
●法案の概要
(1)積立金制度の創設
事故事業者に対して、事故炉廃炉に充てるために必要な資金を毎年度機構に積み立て、着実に廃炉を実施するための資金計画(取戻し計画)の承認を受けなければならない等の義務を課します。
(2)事故事業者に対する立入検査
積立金の額の認可等にあたり必要な場合に、経済産業省又は機構の職員が事故事業者の本社や現場等へ立入検査を行うことを可能とします。
●資源エネルギー庁 予算案 平成29年度・前年度はゼロで新規予算 単位は千円
電力等安定供給確保費 |
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89,672 |
0 |
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電力市場環境調査委託費 |
69,260 |
0 |
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廃炉等積立金制度導入調査委託費 |
20,412 |
0 |
積立金制度を導入するための調査委託費に2041万2000円を計上。
●業務の範囲
1 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「機構」という。)の業務に、廃炉等積立金の管理等の業務及びこれに附帯する業務を追加すること。(第三十五条関係)
2 業務方法書には、廃炉等積立金に関する事項を記載しなければならないものとすること。 (第三十六条第二項関係)
3 機構は、毎事業年度、廃炉等積立金管理業務に関し事業計画書及び収支予算書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならないこととするとともに、毎事業年度終了後、廃炉等積立金管理業務に関し事業報告書及び収支決算書を作成し、主務大臣に提出しなければならないものとすること。 (第三十六条の三関係)
●資金援助の申込みを行う場合に提出する書類の追加
廃炉等を実施する原子力事業者が第四十一条第一項の規定による資金援助の申込みを行う場合には、 廃炉等の実施に関する方針を記載した書類を提出しなければならないものとすること。 (第四十一条第三項関係)
●廃炉等積立金
1 廃炉等積立金の積立て及び管理
廃炉等実施認定事業者は、廃炉等の適正かつ着実な実施を確保するため、機構の事業年度ごとに、当該事業年度の終了後三月以内に、機構が通知する額の金銭を廃炉等積立金として積み立てなければならないものとすること。 積立金は機構が管理するものとすること。
2 廃炉等積立金の額
廃炉等積立金の額は、運営委員会の議決を経て、主務省令で定める基準に従って定めなければならないこととし、機構は、廃炉等積立金の額を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならないものとし、主務大臣は、当該認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならないものとすること。
3 廃炉等実施認定事業者の届出
廃炉等実施認定事業者は、毎年度、廃炉等の実施の状況、廃炉等の実施に関する計画等を機構を経由して主務大臣に届け出なければならないものとすること。
4 廃炉等積立金の運用等
機構は、国債その他主務大臣の指定する有価証券の保有等のほか、廃炉等積立金を運用してはならないなど、廃炉等積立金の運用等について所要の規定を設けること。
5 取戻し
廃炉等実施認定事業者は、廃炉等の実施に要する費用に充てる等の場合には、機構と共同して作成し、主務大臣の承認を受けた廃炉等積立金の取戻しに関する計画に従って廃炉等積立金を取り戻すことができるものとすること。
6 立ち入り検査
主務大臣は、廃炉等積立金の管理等のため必要があると認めるときは、その職員に、廃炉等実施認定事業者の営業所等に立ち入り、帳簿等を検査させることができるものとし、必要があると認めるときは機構に立入検査を行わせることができるものとするとともに、立入検査について所要の規定を設けること。