林整形外科のブログ
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 口と胃をつなぐ部分が食道です。医学用語ではイソファガスesophagusと言いますが、これはギリシャ語の「運ぶ」というoisoと、「食べる」というphageinを連ねてできた言葉です。つまり「食べたものを運ぶ所」という意味になります。日本語での食道とは、全く似た表現です。

 食べ物をうまく飲み込むことができず、むせることがあります。物を食べると神経作用で自動的に気管にフタがされて、確実に食道に送る働きがあるのですが、フタの締まりが遅れるとむせることになります。

 食道の病気でマロリー・ワイス症候群というのがあります。激しい嘔吐を繰り返すことで、胃の中の圧力が食道に伝わってしまい、胃に近い部位の食道が裂けてしまう疾患です。ここには太い静脈が多く走っていて、時に大量出血を来すことがあります。原因としては多量の飲酒によることが多いので、お酒を飲み過ぎた際には注意が必要です。

 熱いものを食べても、飲み込んでしまうと熱さは感じなくなります。これは食道の粘膜に知覚神経がないためです。苦しかったことを簡単に忘れる「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の由来になっていますが、やはりうまくいかなかったことは、忘れることなく次の教訓としたいものです。

 「低温やけど」は、冷たい温度で生じる火傷のことではなく、体温より高めの温度が長時間皮膚に触れることで起こる火傷のことを指します。電気ごたつ、カイロ、湯たんぽなどが原因になります。赤ちゃんや高齢者に多いのですが、若い人ではお酒を飲んだ後カーペットの上で寝込んでしまい、受傷することがあります。

 「低温やけど」は一見軽く見えますが、意外と皮膚の深い部分まで障害されています。普通の火傷と違って、すぐに水で冷やしても意味がありません。また踵やくるぶしなど、皮下にすぐ骨があるところではとても治りにくく、時には手術が必要になることもあります。

 通常の火傷のことは「高温やけど」とは言いません。火傷が英語ではバーンburnと言いますから、日焼けのことはサンバーンsunburnと言います。Burnには「焼ける、燃える」といった動詞の意味がありますので、これだけで高温による火傷というニュアンスが含まれています。

 ですから「低温やけど」という言い回しは、厳密に考えるとおかしな言葉になります。あえて言うなら「非高温やけど」か「軽高温やけど」でしょうか。しかしやはり日本語の語呂としては、「低温やけど」が言いやすいようです。

 椎間板ヘルニアは、一般によく知られている病名です。しかしこの病気が発見されたのは比較的新しく、約110年前のことになります。

 1910年。イギリスで38歳の男性が、重量物を持ち上げた際に急激な腰痛と足の痛みを呈して入院しました。症状は改善せず、さらに膀胱の機能障害も出現しました。この男性は元来健康だったのですが、全身の衰弱と膀胱からの感染で、16日目に亡くなってしまいました。

 医師のミドルトンとティーチャーは、病気の原因を調べるために病理解剖を行いました。その結果、神経を圧迫するように突出した椎間板を発見した以外に異常がなかったことから、病因は椎間板にあると結論を出したのでした。2人の医師はこの結果を、「椎間板の破裂による神経障害」と言うタイトルで学会に報告しました。それまでは、椎間板が病気を起こすという概念はなかったので、医学界には衝撃が走りました。

 実はこの疾患に対してヘルニアherniaという言葉が用いられるようになったのは、この報告からかなり後のことです。ヘルニアとはラテン語で「飛び出す」という意味で、鼠径ヘルニアや横隔膜ヘルニアなど、椎間板以外にも多くの病名に使われています。

 身体からは、そのときどきの状態で色々な音が発生します。英語には、その音を真似して作られた言葉がたくさんあります。

 咳のことはコーフcaughと言いますが、これは咳をする際の音からできた言葉です。日本語ではコホコホとかゴホゴホと言いますので、聞こえ方は似ています。

 しゃっくりはヒカップhiccup、うがいの音はガーグルgargleと言いますから、いずれもその現象の擬音としてできています。日本語ではそれぞれ、ヒックヒック、ガラガラとなりますから、こちらもニュアンスとしてはそっくりです。

 お腹の中で腸内ガスが進む時に聞こえる音のことは、一般英語ではランブルrumbleと言って、日本語で感じる音とは少し違っています。しかしランブルには「雷が鳴る」と言う意味もありますので、これは日本語のゴロゴロという聞こえ方に相当しそうです。日本の医療現場では、お腹が鳴る音はドイツ語の擬音であるグレンGurrenから、「グル音」と言われています。

 ちなみにオナラのことは、英語ではファートfartと言います。日本でよく使われる擬音に比べると、ちょっと上品な感じになります。

 年末年始の休診は以下の通りとなります。

ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

 

12月

 28日(月)診療(午前・午後)

 29日(火)休診

 30日(水)休診

 31日(木)休診

1月

   1日(金)祝日

   2日(土)休診

   3日(日)休日

   4日(月)休診

 5日(火)診療

      以降、通常通り