椎間板ヘルニアの発見 | 林整形外科のブログ

 椎間板ヘルニアは、一般によく知られている病名です。しかしこの病気が発見されたのは比較的新しく、約110年前のことになります。

 1910年。イギリスで38歳の男性が、重量物を持ち上げた際に急激な腰痛と足の痛みを呈して入院しました。症状は改善せず、さらに膀胱の機能障害も出現しました。この男性は元来健康だったのですが、全身の衰弱と膀胱からの感染で、16日目に亡くなってしまいました。

 医師のミドルトンとティーチャーは、病気の原因を調べるために病理解剖を行いました。その結果、神経を圧迫するように突出した椎間板を発見した以外に異常がなかったことから、病因は椎間板にあると結論を出したのでした。2人の医師はこの結果を、「椎間板の破裂による神経障害」と言うタイトルで学会に報告しました。それまでは、椎間板が病気を起こすという概念はなかったので、医学界には衝撃が走りました。

 実はこの疾患に対してヘルニアherniaという言葉が用いられるようになったのは、この報告からかなり後のことです。ヘルニアとはラテン語で「飛び出す」という意味で、鼠径ヘルニアや横隔膜ヘルニアなど、椎間板以外にも多くの病名に使われています。