食道の話 | 林整形外科のブログ

 口と胃をつなぐ部分が食道です。医学用語ではイソファガスesophagusと言いますが、これはギリシャ語の「運ぶ」というoisoと、「食べる」というphageinを連ねてできた言葉です。つまり「食べたものを運ぶ所」という意味になります。日本語での食道とは、全く似た表現です。

 食べ物をうまく飲み込むことができず、むせることがあります。物を食べると神経作用で自動的に気管にフタがされて、確実に食道に送る働きがあるのですが、フタの締まりが遅れるとむせることになります。

 食道の病気でマロリー・ワイス症候群というのがあります。激しい嘔吐を繰り返すことで、胃の中の圧力が食道に伝わってしまい、胃に近い部位の食道が裂けてしまう疾患です。ここには太い静脈が多く走っていて、時に大量出血を来すことがあります。原因としては多量の飲酒によることが多いので、お酒を飲み過ぎた際には注意が必要です。

 熱いものを食べても、飲み込んでしまうと熱さは感じなくなります。これは食道の粘膜に知覚神経がないためです。苦しかったことを簡単に忘れる「喉元過ぎれば熱さ忘れる」の由来になっていますが、やはりうまくいかなかったことは、忘れることなく次の教訓としたいものです。