<艶が~る、妄想小説>


座興杯の続きですキャッ

春香を賭けた男達の戦いは??

そして、誰にお菓子を渡すのかニコ

良かったら、読んで下さいませ(^ω^)



#1  #2  #3  #4



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*バレンタインの夜は…* 最終話  ~尊皇攘夷の志士編~



(……はぁ…これからどうなってしまうのだろう…?)


私は心の中で呟きながらも駒の出た目を確認し、大の杯だったので、一番大きな杯にお酒を注ぐと高杉さんは美味しそうに飲み干した。


次に、枡屋さんが高杉さんの前に転がっている駒を取ると、ゆっくりと回した。出た目は、小だったので小さい器を渡してお酒を注いだ。こんな具合に、時計周りにそれぞれがどんどんと杯を交わして行った。


そして、七順目くらいからだった。


正座をしていた翔太くんは、やがてあぐらをかきはじめ、目がトロンと据わり始めた。そんな彼が心配になったのか、龍馬さんが声をかけた。


「翔太、しょうまっことなんちゃーがやないか?(本当に大丈夫か?)」
「……はい…だ、大丈夫っです…」


早くも酔い始めた翔太くんを見て、高杉さんは笑いながら、「これからが本番だ」と言うと、私から銚子を奪い翔太くんの大器に注ぐ。


「翔太が酔うところを、早く見たいもんだな」
「……まだまだ…絶対に負けませんからね…」


翔太くんは、高杉さんを上目遣いで見ながら言うと、大器になみなみと注がれたお酒を少しずつ飲み干した。


(……あんなに顔を赤くして…大丈夫かな翔太くん…)


それから、次に翔太くんと同じくらい顔を赤くさせて色っぽい顔を見せ始めたのは、枡屋さんだった。私は傍に寄って彼を気遣うと、吐息混じりに呟いた。


「あきまへんな……」

「無理はしないでくださいね、枡屋さん…」

「おおきに……」


逆に、まだまだ全然平気そうだったのは、龍馬さんと高杉さんだ。彼らは、何回かこの遊びをやってきたから、コツが掴めているのだろう…さっきから、大器はあまり出していない。


そして、ついに……。


十一順目を迎えた頃、翔太くんが駒を手に持ったまま俯いて動かなくなった。私は、翔太くんを見守っていると、彼は突然、下げていた顔をガバッと上げると一点を見て叫んだ。


「……いいかぁ~っ、春香は……誰にも渡さないからなっ!」

「え?……」


私は突然の彼の言葉にびっくりすると同時に、嬉しさが込みあげてきて、思わず彼を見て微笑んだ。そして、彼は左肩を捲り出すと、駒を力強く回しだした。


そんな彼を見て、龍馬さんも高杉さんも、枡屋さんも苦笑しながら駒の行方をジッと見ている。


「酔うと、翔太はこうなるちや……ほいで、もっと酔うとごんごん(どんどん)脱ぎ始めるき」
「ええっ?」


龍馬さんの言葉に、私は顔を赤くしながら翔太くんを見ると、確かにもうすでに左肩を出し始めている…。


「それはかなり面白いな!もっと、飲め!翔太」


駒は小器を指し示すと、彼は高杉さんからお酒を注がれ、喉を鳴らしながら男らしく飲み干した。


「くぁぁあああ……」

「翔太はんに、こない一面があったとは…意外どしたな」
「わしも、初めて見た時はたまげたちや」


枡屋さんと龍馬さんが微笑みながら言うと、その横で眉間に皺を寄せながら翔太くんが、勢い良く隣にいる龍馬さんに駒を渡した。


そんなこんなで、それからまた三順した頃。


枡屋さんは、顔を真っ赤にしながら残念そうに離脱し、龍馬さんも、「もう、飲めんぜよ…」と、言い、離脱した。


私は、ふぅ~と、吐息を漏らす二人にお水を用意して手渡した。


「お二人とも、大丈夫ですか?」

「わしは、なんちゃーがやない(大丈夫)けんど、枡屋さんは辛そうじゃのう」

「酒は強いほうやったが、わても焼きが回ってしもたのかもしれへんな…」


「さらに男を上げたみたいだな…翔太」


高杉さんが、微笑みながら言うと、翔太くんは無言で思いっきり駒を回し始めた。


もともとはあまりお酒を飲まない翔太くんが、こんなに飲んでいるということは、もうとっくに限界を超えているのかもしれない…私は彼の肩に手を置きながら、もう止めて欲しいと懇願した。


「翔太くん、もうギブアップして。さっきから、とっても辛そうだし…」
「いや……俺は…まだ……大丈…夫……」


言いながら翔太くんは私の肩ごしにもたれ掛かると、次の瞬間、全体重をかけて私の上に覆いかぶさってきた。


「しょっ……翔太くん?!」
「翔太!」


龍馬さんが慌てて彼を抱き起こすと、彼は半分、意識を失い始めていた。枡屋さんも、高杉さんも驚いた顔をして彼を見つめている。


「翔太くん!翔太くん!!」
「……まだ…いける…って…」


翔太くんは、息を荒げながら薄っすらと目を開けて泣き笑いのような顔で言った。私はそんな彼の頬にそっと触れると、異常な熱さを感じ急いで額や首にも触れてみた。


「……っ…すごい熱!」


思わずそう言うと、彼を龍馬さんに預けたまま、私は布団と桶と布巾を持ってきて、急いで布団を敷くと彼を寝かしつける。彼は、大丈夫、と何度か言いながらも、次第に深い眠りに入っていった。


それからしばらくして、翔太くんの容態を窺っていた高杉さんと枡屋さんは、先にお座敷を後にすることになり、私は、見送ると同時に二人にお礼を言った。


「今日は、会いに来てくださってありがとうございました…」

「わてのほうこそ、楽しかったどす。あんさんの思いを受け止められへんかったことは残念どしたが…」


枡屋さんは、節目がちに言うと、私の隣で座ったままだった高杉さんが静かに口を開いた。


「今回は、俺の完敗だ…」

「……高杉さん」

「翔太に伝えておいてくれ。次、また勝負しよう…とな」


高杉さんはいつもの笑顔で言うと、二人は私に「必ずまた会いに来る」と、言い残し、揚屋を後にした。



それから、私はまた二人の待っているお座敷へ戻ると、翔太くんに付き添っていた龍馬さんに声をかけた。


「龍馬さん、お水とかもっと飲まれますか?」

「いや、もう要らんちや」


私はまた翔太くんの傍に座ると、龍馬さんが静かに話しだした。


「……きっと、ここんところ続いた一件が、まっこと大事じゃったから…翔太もだれちょったんがろう(疲れていたんだろう)」
「そうだったんですか…」
「おお、この間おまんに会いに来た時も、しょうまっこと忙しかったがや…。やけど、わしらはずっと京に留まることはできんき、わしが声をかけていつも連れて来ちゅう。翔太からはなかなか、おまんに会いに行きたいと言えんじゃろうから」


(……翔太くん……)


「翔太は心から、おまんのことが好きなんじゃな。さっきのあの真剣な顔、わしも初めて見たがよ」
「龍馬さん……」


言いながら、私は額の上の布巾を取り水に湿らせて絞り、また彼の額の上に乗せた。


「春香、わしは先にいんじゅう(帰っている)から、今夜は翔太を頼んだぜよ」
「……はい」
「………わしも、ちっくとばかり期待しよったが…翔太には負けたちや」


龍馬さんは私に微笑むと、手を振りながらお座敷を後にした。


こっちに来てから、彼はずっと龍馬さんについて旅をして…。いつの間にか、少年から青年へと変わっていって、私は翔太くんに会う度に、ドキドキしていた。



<いつか、必ず一緒に現代へ帰ろうな…>



その言葉をずっと信じて、会えない時も彼の無事を祈り私は私が出来ることを頑張ってきた。


花里ちゃんとバレンタインの話になった時、彼に渡すことは出来ないと思っていたけれど、彼の為にお菓子を作っていた時間がとても楽しかった…。でも、この間、龍馬さんとお座敷へ遊びに来てくれた時、もしかしたら、渡すことが出来るかもしれない…そう思っていたんだけど……。


まさか、こんなバレンタインデーを迎えることになるなんて、思ってもみなかった。


「……翔太くん…」

「………っ…てぇ…」


思わず声をかけると、その声に応えるかのように彼が眉を顰めながら、ゆっくりと目を開けはじめた。その目はまだうつろだったが、しっかりと私を見つけると一瞬驚いた顔をした。


「……春香?」
「気分はどう?急に熱を出して倒れたから、すごく心配したんだよ」

「……ごめん……」


彼はそう呟くと、ハッとして寝たまま周りを見回した。


「…俺、負けたんだよな?」
「うん、でもみんな翔太には負けたって言って帰って行ったよ」
「……そ、そっか…なんか…倒れちまうなんてかっこ悪いな…」

「もしかして、ずっと体調悪かったの?」

「……ん、ああ…」


彼は仰向けのまま、私を見上げて苦笑した。

私は彼のおでこに置いてあった手拭を取り、自分のおでこを近づけて彼の体温を感じた。彼は、少しびっくりしていたようだが、しばらくそのままの体勢でいると、ふいに彼は私の頬に優しく触れ、「ありがとう」と、囁いた。


(……良かった、少し熱も落ち着いたみたい)


私は、ゆっくりとおでこを離し、私の頬に触れている彼の手を握り締めながら、お菓子を貰ってくれる?と、尋ねると、彼は一瞬、驚いた顔をしつつも真剣な眼差しで私を見つめながら、「……お菓子だけ?」と、呟いた。


(……えっ……)


そして彼は、上半身だけ起き上がると、戸惑っている私の耳元にそっと触れながら頬に優しいキスし、私をそっと抱きしめた。


「本当は、お前を……」
「……えっ……」

「……いや、何でもない。俺の風邪が移ってしまうといけないからな、今夜はこれで我慢しておくよ」


彼は、少し照れ笑いを浮かべながら、私を見つめて微笑んだ。


私は、ふと見せた彼の大人っぽい顔に胸をドキドキさせながらも、台所から金華糖を持って来て彼に手渡した。


「気に入って貰えるといいんだけど…」

「……ありがとう、春香」


そう言うと、彼はにこにこしながら頬張った。


「……翔太くん…」

「ん?」

「あのね……す…す……やっぱ、何でもないっ」


改めて好きですと言えずに俯く私を見て、彼は優しく微笑み、「好きだよ、春香……お菓子美味かった…」と、囁いた。


この無邪気な笑顔が私を幸せにしてくれる……。


次は、いつ会えるか分からないけれど……。


彼がまた元気な姿で私に会いに来てくれますように…。


神様にそっとお願いをした……。




<おわり>



~あとがき~



今回は、多少無理な設定だっただけに、難しかったです;

でも、この人達って、住んでるところが微妙なので(笑)お座敷に集まって貰うほかなかったのでした汗

結局、翔太くんが貰えるっていう結果にキラキラ 

お菓子が金華糖って時点で分かっていた方もいるかもしれませんが( *´艸`)


余談ですが…。

私が熱でうなされたときは、龍馬さんに看病されたいと思ってしまいました(笑)



今回も、読んで下さってありがとうございました!