<艶が~る、妄想小説>
今回は、主人公(春香)のお菓子と思いの行方が気になった、龍馬さん、翔太くん、枡屋さん、高杉さんは、それぞれが途中で鉢合わせになり、お座敷で彼女の来るのを待つことに。主人公からの愛の告白は、いったい誰に?って言っても、今回は旦那様からの思いを打ち明けられるだけで、バトルは次回になります
バレンタインだというのに、ものすごいこじつけですよね
今回も、良かったら読んでやってくださいませ
(勝手ながら、主人公の名前を、春香と名づけています)
↓続きものにつき、初めての方はこちらからお読み下さいませ
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*バレンタインの夜に…* #3 +龍馬、翔太、枡屋、高杉+
そこで私を待っていてくれたのは……。
龍馬さんと、翔太くん、そして、高杉さんと枡屋さんだった。
「み、みなさん…今夜はどうしたんですか?」
私が部屋の中へ入りながら尋ねると、龍馬さんが、「春香、会いに来たぜよ」と、笑顔で言った。そして、龍馬さんの隣に座っている翔太くんが、「龍馬さんが、どうしてもお前に会いに行こうって言うから…」と、苦笑しながら言った。
「今日は、ばれんたいんやき」
龍馬さんが満面の笑顔で言うと、手酌をしながらお酒を飲んでいた高杉さんが私に声をかけてきた。
「春香、酌を頼む」
「は、はい……ただいま」
私は戸惑いながらも、急いで高杉さんの傍に行くと、いきなり肩を抱き寄せられる。
「待ちかねたぞ。今夜は俺の為に菓子を用意したんだってな」
「え?……あの…それは…その……」
私が頬を染めながら俯いていると、高杉さんの傍に座っていた枡屋さんが口を開いた。
「高杉はん……何か勘違いしてはりまへんか?ばれんたいんでーいう行事は、女子から思いを告げられるまで男は待ち続けるものどすえ」
「なら、枡屋殿は何故ここにいる?」
「わては、ただ……春香はんに会いとうなってな…」
「……物は言い様だな」
言い合う二人に挟まれ、私は高杉さんと枡屋さんにお酌をしながら言いよどむ。
「あ、あの……えっと…ですね…」
私があたふたとしていると、今度は翔太くんがこれまでの経緯を説明しはじめた。
「俺と龍馬さんとでこっちへ向かっている時、偶然、二人にも会ってさ…龍馬さんが、せっかくだからみんなで春香に会いに行こうって言い出して…」
「そ、そうだったんだ…」
「……もう、バレンタインのお菓子は…誰かにあげたのか?」
翔太くんが俯き加減に言うと、私はそれぞれの視線を感じながら、みんなの顔を見る。その優しげな視線に、私は心臓がドキドキした。
「…まだ…なんだけど…」
「……そ、そうか」
翔太くんが頭をかきながら苦笑すると、高杉さんがまたお猪口を差し出しながら、「もう一杯くれ」と、言った。
「お前の惚れた男は、俺以外に誰がいるってんだ?」
高杉さんに尋ねられ、私はまたお酌をしながら何て言っていいのか考えていると、それを見ていた枡屋さんが……
「あんさんというお人は、ほんまに節操の無い…節義というものを一から学ばれはったらどないどす?」と、呆れながら言った。
「節義だ?男と女の間にそんなものは要らん」
また二人に板挟みにされている中、翔太くんが助け舟をだしてくれた。
「お二人とも落ち着いて…。バレンタインデーっていう行事は、さっきも枡屋さんが言われたとおり、女の子のほうから好きな人のところへ行ってお菓子を渡し、告白するっていうものなので…春香に尋ねるのは…ちょっと…」
「それに、もしも春香はんの思い人がこの中にいるとしたら、なおさら…言えへんやろうね」
枡屋さんも目を細めながら静かに言った。
(……そ、その通りです…)
私が戸惑っていると、また高杉さんに腕を掴まれ抱き寄せられる。
「単刀直入に聞く。この中にいるのか?」
私がお菓子をあげたい人は、この中にいる…。
けれど、今ここで言えるはずもなく、私は戸惑うばかりだった。
「あの、私……」
「春香はん、無理に言わなくてもええよ」
「枡屋さん…」
「この中に居ても居なくても、わてらが騒ぐことや無いさかい」
そう言って、枡屋さんは私に微笑んだ。
すると、私の腕を掴んで抱き寄せたままの高杉さんが真剣な顔で、「この際、菓子はどうでもいい」と、言った。
「俺は、明日…長州へ戻ることになっている」
「え、長州へ?」
私が驚いた顔を見せると、高杉さんは私を見つめたまま、「俺と一緒に来い」と、言った。
その一言に、私は思わず吃驚して手で口を押さえた。それを聞いていた翔太くんや龍馬さん、枡屋さんも目を見開いて驚いている。
「高杉、おんしゃ~何を言うちゅうが!とりあえず、春香を放すちや」
龍馬さんが私達に近寄りながら言うと、高杉さんは私をさらに抱き寄せて、「……本気だ…」と、呟いた。そんな高杉さんのいつにない真剣な眼差しに、龍馬さん達も呆然としている。
(……高杉さんのこんなに真剣な顔を見たのは初めてかもしれない…)
すると、枡屋さんが背中を正しながら節目がちに呟いた。
「……そういうことなら、わてかて同じどす。こない状態で言うことやおまへんが…春香はんを誰かに取られるくらいなら…わては……」
私は、高杉さんと枡屋さんから同時に見つめられ、顔から火が出るくらい恥ずかしくなって俯いた。
すると、龍馬さんが、高杉さんに抱かれたままだった私の身体をひょいっと持ち上げ、自分の前に降ろしながら……「わしも、おまんのことが好きじゃ。春香が誰を好きやろうと、関係ないちや」と、囁いた。
「はやじき(もうじき)わしらも京を離れるちや。やき、今夜はどうしてもおまんに会いたかったがや」
龍馬さんの優しい眼差しを受けながら、私は一瞬、翔太くんのほうを見た。龍馬さんといつも行動を共にしている彼もまた、旅立ってしまうということになる。
「翔太くん……」
「なんか、ごめんな…」
翔太くんは、なぜか私にそう言うと、目線を逸らしながら呟いた。
「その……何て言うか……思いが届くといいな、お前の好きな人に…」
(…どうしよう……こんな事を言われたら…なおさら言えなくなってしまう…)
こちらから告白したいのに……。
何故か、それぞれから告白のような言葉を貰い、私は胸の中で何とかしなければと思いつつ、さっきよりも大きく跳ねる鼓動を抑えることが出来ずにいた。
<つづく>
<あとがき>
今回も、読んで下さってありがとうございました
バレンタインだというのに、旦那様たちから先に告白されてしまうっていう無理な設定に、ちいとばかし戸惑いがありましたが
私が言われてみたい旦那様からの告白をそのまんま書きました
次回こそは、主人公をかけた男たちのバトルが
お菓子は誰に渡されるのか……。
じつは、艶イベみたいにそれぞれに渡すパターンも考えています
でも、まずは…あの人で
この中の4人なら…あなたは、誰に渡したいですか?