『養生訓』 灸の効用(巻八33) | 春月の『ちょこっと健康術』

春月の『ちょこっと健康術』

おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

「人の身体に灸をするのは、どのような理由からであろうか。

 人の身が生きているのは、天地の元気を受けて根本としているからである。元気は陽気である。陽気は温かくて火に属している。陽気は、よく万物を生じる。陰血もまた元気から生じる。元気が不足して、鬱積停滞してめぐらないと、気が減って病気が起こる。血もまた減ってしまう。

 それゆえに、火気をかりて、陽を助け、元気を補うと、陽気が発生して強くなり、脾胃が調って食がすすみ、気血がよく循環し、飲食が滞って気の流れを塞ぐことなく、陰邪の気が去るという。これが灸の効力で、陽を助けて気血を盛んにし、病いを癒す原理なのであろう。」


お灸がなぜからだにいいのか?実にわかりやすく説明されていらっしゃいます。ただし、お灸は温めるために使うのではないんですよね~。とか言いながら、今朝の「かかとを温めて腰痛予防?」 では、お灸で温めるように言ってます。だって~、そう言ったほうがわかりやすいから~。


古典に「陥下するときは之を灸す」とありますので、おもに気の不足が見られるときに、それを補うためにお灸をするもの。つまり補気のためであると解釈できます。決して温めるためだけじゃないのですが、益軒先生もおっしゃるように、気のもとは元気であり、元気は陽気であって、からだを温める作用を持っています(→東洋医学講座 No.21 )。したがって、補気によって、からだは温まる。なんだか、屁理屈のようですが、目的は温めるのではなくて補気なんです。


日本では灸法が発達して、実際には補気のためだけでなく、気血のめぐりをよくするためにも使うようになりました。つまり、陥下だけでなく、圧痛のあるところにもお灸をします。押すと痛みの出るところは、たいていちょっとしたかたまりのようなものがあって、これを硬結点と呼びます。硬結点は気血が滞っている場所。ここへお灸をしたり、鍼を刺したりすると、滞りが解除されます。これが、古典にある「痛をもって輸と為す」ことではないかしら。


とても鍼灸師っぽい(笑)、ちょっと専門的な話になってしまいました。お灸は、不足した気を補う、あるいは痛みをとって気の流れを回復させる、そのようにご理解くださいませ。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


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