「さまざまな獣肉を食べることは、日本人には胃腸の弱い者が多いので、あまりよくない。多く食べてはいけない。烏賊(いか)や章魚(たこ)なども同様に、多く食べてはいけない。消化しにくいからである。
鶏卵や鴨卵などは、丸煮すると気をふさぐ。俗に言う「ふはふは」という料理にして食べるのがよい。肉でも野菜でも、大きく切ったもの、また丸煮にしたものは、みな気をふさいでつかえやすいものである。」
「梅雨~夏は「湿」と「思」に気をつけて」 でお伝えしたように、日本は湿気が多いために、脾胃の弱い人が多い。だから、獣の肉はたくさん食べてはいけないんです。獣肉とは、江戸時代のことですから、いのしし、鹿、熊あたりでしょうか。昨日の「虚弱な人の保養」 でも、取り上げていた肉は、獣ではなくて鳥と魚でしたね。
『養生訓』では、他にも「湯茶の飲み方」 や「夏は生もの・冷たいものに注意」 、「脾胃の好む十一品目」 、「脾胃の嫌う十三品目」 、「脾胃の弱い人と餅・だんご」 、「脾胃の弱い人の魚の食べ方」 、「暴飲暴食の戒め」 、「塩・酢・辛いものを少なく」 など、脾胃にかかわる項目が目白押しです。
「ふはふは」という卵の調理法は、いったいどんなものでしょうね。益軒先生の時代に流行したものなのでしょう。言葉のイメージから察すると、スクランブルエッグかオムレツというところでしょうか。
『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』
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