『養生訓』 養生の道(巻一16) | 春月の『ちょこっと健康術』

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おてがるに、かんたんに、てまひまかけずにできる。そんな春月流の「ちょこっと健康術」。
体験して「いい!」というものを中心にご紹介します。
「いいかも?」というものをお持ち帰りくださいませ。

「昔の君子は、礼楽を好んで行い、弓と乗馬を学んで、運動し、歌を詠み舞踏して血脈を養い、嗜欲を抑えて心気を安定させ、外邪を慎重に防いだものだ。このようにいつも心がけていれば、鍼灸や薬を用いなくても、病いにかかることはない。これが君子の実行する養生の根本であって、上策といえるものである。

 病いに多くかかるのは、みな養生の術を心得ていないからである。病気になって、薬を服用し、痛い鍼や熱い灸をして、父母から受けた大事な身体に傷をつけ、焼くような熱痛をがまんしてまで身体を攻め立て、病気を治療することは、きわめておろかな下策である。

 たとえば、国を治めるに際し、徳をもってすれば、民はおのずから心服して反乱は起こらず、兵を出して討伐する必要がない。また、保養しないで、ただ薬と鍼灸に頼って、病気を治療するのは、国を治めるうえで、徳を用いないで、下の者を治める道がなく、臣民が恨んでそむき、乱を起こすと、それを鎮圧するために、兵を出して戦うようなものである。たとえ百戦して百勝したとしても、尊ぶようなことではない。養生をよくしないで、薬と鍼灸にたよって病気を治すのも、こうしたたとえと同じことである。」


正直にいうと、鍼灸師としては、この一文は紹介したくなかったの。だって益軒先生ったら、薬と鍼灸は身体に傷つけるっておっしゃってるんだもの。しかも痛い鍼と熱い灸ですって。誤解を呼んでしまうじゃないですか。


『養生訓』の「身体と運動」 にも書きましたけど、益軒先生の時代とは違って、いまどきの鍼は表面がなめらかで細いから、そんな痛いものじゃありません。お灸だって、やけどの跡が残るようなお灸は普通やりません。


でも、よく考えると、確かにそうなんですよね。薬は元々毒でそれをコントロールして症状を抑えるものですし、鍼や灸も身体に刺激を与えることで身体の反応を呼び起こすもの。小さな傷をつけることで、身体が健康体に戻ろうとする力を呼び覚まそうとする・・・とも言えますね。


現代でも痛い鍼法はあります。『醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)』といって、脳卒中後遺症の治療法として注目されています。強い刺激を与えて、筋肉の拘縮を防ぎ、神経麻痺の回復をねらうものなので、相当に痛いらしいです。


また、かなり熱くて、わざとやけど跡を作る灸法もあります。日本古来の『弘法の灸』。免疫力を強化して、身体を丈夫にするために行われます。戦前まではけっこう行われていたようで、子供の頃は虚弱体質だったという方で、背中に直径1cmくらいの丸いやけど跡が6つあったら、それは『弘法の灸』を受けた証です。


益軒先生のおっしゃるように、今回のブタインフルエンザでもそうですけど、予防が一番なのは言うまでもありませんね。


『養生訓』の原文はこちらでどうぞ→学校法人中村学園 『貝原益軒:養生訓ディジタル版』


次→ 身体と運動(巻一17)


今朝アップした写真は、長野で撮影したツツジ。↓これはマーガレットに似てますけど、ずっと花が小さくて葉っぱの形も違いますでしょ?この花を乾燥させると、ハーブティーになる。そう、カモミールです。


春月の『ちょこっと健康術』-カモミール