オーストラリアで障がい児を育てている人、もしくは障がいのある家族を面倒見ている人以外は興味がないであろうNDISシリーズ第五弾です。
前回までの記事はこちらから・・・
④ NDISがやってくる 4 《一番最初のプロセス~申請の仕方は?》
これが自分の人生には重要なんだ!これが人生のゴールなんだ!と言えば、認められてその分のお金がすべてもらえるのでしょうか?
そんなことないですよね(笑)
NDISだって全員にそんな風にお金をばらまいていたら、いくらお金があっても足りません。
もちろんきちんとルールがあります。
NDISのプランを考える時に重要なキーワードが、Reasonable & Necessaryです。
つまり「合理性と必要性」。
「このサポートは合理的で必要なものかどうか?」が判断の基準になります。
さらに他にも色々とルールがあります。
さて、実際はどういうものにNDISファンドが出るのでしょうか?
- NDISはその人の障がいに関連したものにのみファンドが出る
- 障がいのない人と障がいのある人を考えた時、障がいがない人が通常支払いをするものに関してはファンドが出ない
- 食費、家賃など日々の生活にかかる費用などはファンドが出ない(NDISは収入サポートではない)
- 学校教育に関するものはファンドが出ない(スクールエイドの費用など)
- 医療費やMedicareでカバーされるものは出ない
- その他の分野のファンドですでにカバーされているものは出ない
- 同年代の人にとっての「普通の生活」で考えてみる
例えば、よく使われる例のひとつが「スポーツジム」です。
知的障がいのある成人が、「週に2日健康維持のためにジムに通う」というゴールを設定した場合。これがこの人の場合は「合理的で必要である」と認められたとして・・・・
スポーツジムの会費は自分で払わなければいけません。
なぜなら、この人に障がいがなかったとしたらスポーツジムの会費は自分で普通に払いますよね。
でも、この人は障がいがあるために、自力でスポーツジムには通えない。
サポートワーカーさんに一緒についてきてもらわないといけません。
もし障がいがなかったら、この人はジムに行きたい時にひとりで行けます。
でも障がいがあるためにひとりでは行けません。←ここが障がいがない人とのギャップになるので、この部分のみファンドが出ます。
ということで、ジムに一緒についてきてくれるサポートワーカーさんのお給料分はNDISから出ます。
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または、車いすを利用する子どもがいる場合、車いすが乗れるように改造された特別な車が必要になります。
でも、NDISは車自体はファンドを出してくれないので自分で購入しないといけません。
障がい児のいない他の家庭では、皆さん自分のお金で車を購入しますからね。
でも、車椅子ごと乗れるようにする「車の改造の費用」は認められればNDISからファンドが出ます。
また、車椅子自体はNDISのファンドで買えますよ。
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何かのイベントに行きたい、でも障がいがあるのでひとりでは行けない。
その場合も一緒に行ってくれるサポートワーカーさんの時給や、会場まで連れて行ってくれるトランスポートの分はNDISが出してくれますが、イベント会場に入るチケット代などは自分持ちです。
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障がいのために自分で献立を考えて料理を作るのが難しいので、健康的な食事を家まで宅配してくれるサービスが必要な場合。
NDISは生活費自体は出しませんから、材料費分は差額として自分で出すことになります。
この場合も、もし障がいがなければ自分で材料を買ってきて料理が出来ると考え、あくまでも障がいがある為に必要となるサポートの分のみが出るのです。
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他には、例えば8歳の子に「ひとりで外出できるようにサポートが欲しい」というのは承認されないかもしれません。
通常オーストラリアでは、8歳児は障がいがなくてもひとりであちこち外出することはなく、親が色々な場所に送り迎えしているからです。
でもこれが、例えば25歳の障がいのある成人だったとしたら・・・
通常その年齢ならひとりで好きなところに自分で行くことが出来ているはず、でも障がいがあるためにそれが難しいわけですから、この場合は「ひとりで外出できるようにサポートが欲しい」というのは妥当なサポートということになります。
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国内旅行に行くことがひとつのゴールとして設定されたとして・・・
その為に、サポートワーカーさんも一緒に旅行に連れていくとなると、サポートワーカーさんのお給料はNDISから出ますが、サポートワーカーさんの飛行機代、宿代などはNDISでカバーされません。自腹です。
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ここでちょっと難しいグレーエリアがあります。
セラピーに関して、例えばスピーチセラピー(ST)や作業療法(OT)なんかは、個人のゴール達成に関係していれば比較的簡単にファンドが承認されます。
でも、音楽が好きだからピアノのレッスン代、一般のスイミングのレッスン代、一般のアート教室代などは、セラピーとして認められるのが難しい場合が多いです。
こういったレッスンなどは、障がいが無い子も「習い事」として通ったりしますからね。
逆にSTやOTは、障がいがない子は通うことはないですね。
だから、これらのレッスンが個人のゴール達成に必要でしかも合理的だと認められればファンドが貰えることになります。
ただ「この子は音楽が好きなので~」という理由だけではダメだと思います。それはただの趣味の習い事ですよね。
でも例えば、障がい児向けの特別セッションをしているミュージックセラピストが、「この子にはミュージックセラピーでこのような効果が期待される」なんてことをサポートレターに一筆書いてくれたりすれば、ファンドをもらえる可能性は高まります。
でも、人によってはサポートレターがあってもこういった類のレッスン代は出なかった・・・という話も聞きますので、やはり個々のケースで違ったりと難しいです。
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こんな感じでいくつか例を挙げましたが、なんとなく、どんなものはファンドが出て、どんなものには出ない・・というイメージがつかめたでしょうか?
障がいがあるからどんな施設への入場料もタダ!
障がいがあるから車椅子ごと乗れるような車ももらえる!
障がいがあるから趣味のアクティビティ代も全部もらえる!
なんてことではないのですよね。
障がいがあるからって何でもかんでもタダになってたら、本当の意味での平等にはならないわけですから・・・。
障がいが無かったら自腹で支払っていたであろう部分については、きちんと自分で払う。
それが原則になっています。
個々のケースに当てはめてみると、どこまでが《合理的で必要性があるか?》という線引きが難しいことが沢山あるとは思いますが・・・
お子さんのゴールを設定して、欲しいサポートについて考える時には、そのサポートはこの「合理性と必要性」に当てはまっているかも併せて考えてみるといいと思います。
《合理性と必要性》については、NDISのウェブサイトに簡単な英語で説明された動画があるので、よかったらこちらも参考に♪
また続き書きますね☆