NDISがやってくる 2 《今までとどう違う?》 | カイとわたしの場合~オーストラリアx自閉症xシンプルライフ

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高校生になった自閉症児カイと、シングルマザーのわたし。オーストラリアはメルボルンにて、ふたり暮らし。そんな私たちの毎日を綴っています。

オーストラリアで障がい児を育てている人、もしくは障がいのある家族を面倒見ている人以外は興味がないであろうNDISシリーズ第二弾です。
 
前回までの記事はこちらから・・・
 
 
 
さて、NDISって結局何なんでしょう?
今までと何が違うんでしょう?
 
自閉症児が今まで受けていたサポートを例に見てみるとわかりやすいかな?と思い、こんなものを作ってみました。
ちょっとごちゃごちゃ見づらくてごめんなさい。イメージというか、流れが分かればいいので細かいところは気にしないでくださいね。汗
 
《今までの特徴》
 
○政府のいろんな部門から、それぞれに対応するファンドや補助金を受け取っていた
  • Medicare(国民健康保険)からオムツ代の補助が出たり、セラピー代が少し戻って来たり(Mental Healthプランなど)。
  • 自閉症の診断がついたらFaHCSIAから全員同額のファンドが出た(7歳誕生日まで$12,000)。そこからセラピーなど受けていた。

○障がい者福祉に関するファンドは各州ごとに管理されていた

  • 州によって障がい者福祉サービスの内容やサポートの充実度がかなり違っていた
  • 州の障がい者福祉部門から、各NPOにそれぞれまとまったお金が渡り、そこからそれぞれのプログラムやサポートが提供されていた(ホリデープログラム、アドボカシーなど)
  • このファンドは一年分のまとまったファンドが年度の始まりにNPOに出るのが一般的。
  • 住んでいるエリアなどで使えるサービスが限られたりする。また、引っ越しなどすると今までのサービスが使えず、また新たに申し込みなどし直すことに。
 
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今までは、ファンドが色々なところに振り分けられていて、自閉症児は欲しいサービスがあるNPOなどにそれぞれ申し込みなどしていました。
すでにあるサービス内容に欲しいものがあれば行く感じです。多くの場合、ウェイティングリストが長かったりもします。
 
 
《NDISになると…》
 
○今まで政府からプロバイダー(NPOなど)にまとめて渡っていたお金が、直接政府から個人にまとまって渡るようになる
  • 個人のサポートニーズに合わせてプランを作り、それに沿ってまとまったファンドが各個人に出る。プランがひとりひとり違うので、ファンドの金額もひとりひとり違う。

○決定権などはあくまでも個人にある(Choice & Control)

  • 個人はそのファンドを使って自分の選んだサポートを購入する
  • もしプロバイダーやセラピストが気に入らなければ変えてよい

○州ごとに管理していた障がい者福祉サービスが、全国統一のシステムに

  • 全国統一なので、もし州を越えて引っ越すことになっても、自分のプラン=ファンドはそのまま持っていける
  • 今まで州や地域によって福祉サービスに大きな差があったが、その緩和につながる

○今までいくつも分かれていたお金の出所がほぼひとつに

  • Medicareから出ていたオムツ代補助金や、FaHCSIAから出ていた自閉症ファンドなども、全部NDISから出ることに
  • 一部のサポートやサービスなどはこれまで通り。例えば、MedicareのMental Healthプランなどは従来通り使える
  • カウンシルのレスパイトやセルフケアサービスもなくなり、全部個人プランに盛り込まないといけなくなる。ただし、NDISが貰えない人は、カウンシルからのサポートを従来通り受けられるかも?(下の図だと一番左の人)
  • アドボカシーサービスは、NDISからファンドが出ない=別口のファンドでサポートが提供されるようです(今のところ)
 

流れとしては、こんな感じ。

ものすごく簡素化してしまってるので、細かい部分ではなくあくまでも流れとして参考に見てくださいね。

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ビクトリア州でも昨年の7月から一部の地域で本格的にNDISが開始しましたが・・・
福祉の現場ではかなりの混乱をきたしています。
 
なぜか?それはもう大変ですよ。
今までは、年度の始まり(オーストラリアでは7月)に、政府から各プロバイダーに「はい、これ今年度の分ね」とまとまった大きな額のお金を貰えていたのです。
そして、そこからやりくりしつつ、プログラムなどを障がいのある人達に提供していたのです。
 
でもこれからは、まず個人にまとまったお金が渡ります。プロバイダーにとっては個人=お客様です。
お金を持っているお客様にたくさん来てもらわないと、商売が成り立たなくなってしまう・・・。
 
NPOって、非営利ではありますが・・・NDISの仕組みになったら、もう周りのNPOとの競争みたいになってきています(汗
 
 
では、こういうプロバイダー達は今までのようにまとまったお金が政府から入らなくなって、どうやって経営していくのでしょう?
 
かなりおおざっぱに説明しますね。
前回の記事に載せたPrice Guideをちょっと見てみると、何やら金額が載っていますよね。
これをユニットコストと言います。
 
一番最初のサポートを例にとって・・・
 
Assistance with self-care activities during daytime weekdaysが 1時間 $42.79 (Price Guide P24)
 
これは平日にセルフケアのサポートでワーカーさんに来てもらう場合、1時間で$42.79かかります、という意味です。
 
この$42.79がサポートワーカーさんにそのまま入るのではなくて、この金額の中には
サポートワーカーさんの時給
ワークカバー(労災保険)
スーパーアニュエーション(年金)
などが含まれていて、プロバイダーはこれらを払った残りで事務所を運営していかなくてはいけないんです。
 
だから、お客さんに沢山来てもらわないと立ち行かなくなってしまうんですよ・・・
 
しかも今まではプロバイダーの方にお金があって、サービスを欲しい人が群がっていたわけですが、これからはお金を持っているのは個人の方。そしてその個人に決定権があるから・・・
 
「このプロバイダー、なんかダメだな。違うところに変えよう」
という事が出来てしまうんです。
自然と、プロバイダーも「お客さん」に来てもらう為に、選んでもらう為に必死に良いサービスを提供しようとします。
 
福祉の現場に競争市場が生まれます。
 
上の二枚目の図だと、NPO3には何人もお客さんが集まって、お金も集まってますが、、、
NPO2と4は、なんだか寂しいことになっていますね。
 
今までは基準さえ満たしていれば、年度の始まりになればお金がまとまって入っていたのに、これからはどんどんサービスの質を向上して沢山の人に選んでもらえるようになる必要があるんです。
 
障がい者個人からすれば、今までよりもこの仕組みの方がいいはずですね♪
 
でも、プロバイダー側からすると結構なカオスです(笑)
 
 
 
 
さらに、ちょっとややこしいことは・・・・
 
カウンシルや一部のNPOでは、NDISの登録プロバイダーにならないことを決めたところもあります。
そうなると、今までそれらのサービスを利用していた個人がNDISのファンドを貰えるようになると、もうそのプロバイダーからはサポートが受けられなくなってしまったり。
 
NDISのファンドがあって、さらにそういうプロバイダーからもサポートを受けると、二重にサポートを受けることになってしまうからです。
 
この辺もはっきりと線引きがされていきます。
 
実際に、カイが今通っているホリデープログラムのひとつは、カウンシル主催で特別にファンドを充てられて運営されています。
 
でも、カイはNDISを早めに始められると連絡が来たことをコーディネーターさんに言ったら、
「カイのNDISプランが出来たら、もうこのプログラムではカイを受け入れできません」
と言われてしまいました 涙
 
カイはまだ実際にプランが出来ていないので、今回のプログラムもいつも通り申し込みしたのですが、ホリデー前にコーディネーターさんから電話があり
 
「まだカイのNDISプラン出来てないか、念のため確認です」と再確認されてしまいました。
 
もう、カイのプランミーティングの日程が決まった時点でコーディネーターさんにすぐさま連絡をすることになっています・・・。
なんか、せっかく長年通っていた慣れたプログラムも通えなくなるなら、早めにNDIS始められるメリットがあまりないような気もしてしまいます。
 
 
また、つい先日ずっとウェイティングリストに載せて4年以上も順番を待ったケースマネジャーが、ついにカイにもついてくれることになりました。
 
だがしかし、こちらのケースマネジャーを派遣してくれるNPOはNDISとは関わらないことを決めたそうなので、カイのNDISプランが出来た時点でこちらもカイへのサポートは即打ち切りだそうです。
 
なので、今短期で必要なモノを貰えるように考えているところです。
 
今まで4年以上も待ったのに!こんなに焦ってサポートを受けるハメになるとは・・・とほほ。
 
 
公的なファンドというのは、出所によって色んな事情が発生するのですよね。
貴重な税金を使っているのですから、仕方のないことですが。
 
 
 
とにかく、NDISは今までの福祉サービスの在り方を根本的に変えてしまいました。
これが吉と出るか凶と出るか・・・吉だと思いたいですが。
 
まだまだ混乱が続いている福祉業界なので、今後も見守っていきたいと思います。