とっぴ「やほお、ろだん、なにやってるの」
ろだん「ひろじさんから教えてもらった、摩擦ジョイントを作ってるんだ」
とっぴ「え、何?」
ろだん「ほら、これ」
あかね「あら、まんが雑誌2冊が重ねてあって・・・ロープが通してあるわね」
ろだん「ロープをもって、ひっぱってみな」
とっぴ「むんく、そっち、持って。せえの!・・・あれ? 離れない」
あかね「なにか、しかけがあるんじゃないの」
ろだん「(雑誌のページを1枚1枚めくりながら)これだよ」
あかね「あ・・・ページが交互に重ねてあるだけね・・・」
とっぴ「うーん・・・いくらひっぱっても外れないな。よし!」
あかね「とっぴ、どこ行くの!」
とっぴ「運動場!」
ろだん「あ、そうか、鉄棒だな。(鉄棒にロープをひっかけて、摩擦ジョイントにつけ直す)よし、これでいい。ぶらさがってもいいぜ、とっぴ」
とっぴ「よし!(そういって、ロープを持ってぶらさがる)おっ、ぶらさがれる!」
むんく「摩擦、すごい」
ろだん「1ページ1ページの摩擦はそれほどでもないけど、100ページ以上1枚ずつ重なっているからな。合計するとすごく強くなる。予備実験してたら、本がはずれず、ちゃんと結んでなかったロープの方が外れたよ」
とっぴ「これ、おもしろい! 読み終わったまんが雑誌を1ページずつ重ね合わせるだけなんだね。ぼくもやってみよっと!・・・2冊を置いて・・・ページを1枚ずつ重ねる・・・」
むんく「あー、それ、なんかヘン。形がゆがんでる・・・」
あかね「フチから重ねるからよ。最初はキレイに重ねられるけど・・・だんだんかさばりが大きくなって、形がゆがんできてるわ」
とっぴ「うーん、何度やってもダメだな・・・ろだん、どうやって作ったの?」
ろだん「へへん。どうやったと思う?」
むんく「形が上下対称だから・・・真ん中から重ねた・・・」
とっぴ「真ん中からなんて、どうやって重ねるんだよ」
ろだん「それが、できるんだな。ほら、こうすれば、キレイに重ねられる」
あかね「2冊を真ん中で開いて、机の上に伏せて置いて・・・真ん中のページからフチへ向かって、1枚ずつ交互に重ねていくのね・・・」
ろだん「そう。それが終わったら、全体をひっくり返して、残りの半分のページを重ねていく・・・さ、できた! あとは、ドリルで穴を開けて・・・と」
とっぴ「ほんとだ! キレイに重ねられる!」
ろだん「最後に、ロープを穴に通して、できあがり」
(↓実物の写真:雑誌が古くなったので、ガムテープで表紙を補強してあります)
ミオくん「やほ! あいかわらず、へんなことやってるね、みんな」
とっぴ「へへえ、すごいだろ! 人間ひとりくらい、ぶらさがってもへっちゃらなんだぜ!」
あかね「とっぴったら、自分が考えたみたいにいってる!」
ミオくん「へえ、これは静止摩擦力の性質を見るのにもってこいだね」
とっぴ「え? どこが?」
ミオくん「ロープをひっぱる力が変化しても、この2冊は離れずに止まってるんだろ」
とっぴ「うん。だから?」
むんく「あっ」
ろだん「そうか!」
あかね「そうね!」
とっぴ「え? 何が? 何?」
ミオくん「静止摩擦力は一定の大きさじゃなくて、他の力に応じて大きさが変化するんだ。それが静止摩擦力の性質だよ。ロープを引く力をいろいろ変えても、2冊が離れないってことで、それがはっきりわかる」
とっぴ「あ、そうか。でも、もっと力の強い人が引っぱったら?」
ミオくん「もちろん、静止摩擦力が大きくなれる限界もあるから、その限界に達すると、それ以上は大きくなれない。ロープを引っぱる力がそれより大きくなれば、2冊は離れることになるさ」
とっぴ「よし! あかね、ぼくといっしょにこっちのロープを持って! ろだんとむんくはそっちのロープ! せえの!」
あかね「だめ! 離れないわよ! 手が痛くなってきたわ」
ミオくん「静止摩擦力が大きくなれる最大値のことを最大摩擦力というんだ。この装置では、その最大摩擦力がかなり大きいからね。人間の力じゃ、2冊を引き離すのは無理じゃないかな。どうしても引き離したかったら、ゴリラでも呼び出そうか?」
あかね「それはやめて」
とっぴ「ろだん、ところで、この装置、なんでまんが雑誌を使うの? 安いから?」
ろだん「そうだな。穴も開けるから、いらない雑誌じゃないとだめだろ。ページ数もたくさんないとだめだろうし」
あかね「まんが雑誌って、ページの紙がざらざらだから、摩擦が強いんじゃないかしら。教科書みたいに、すべすべしたページの本を使ったら、こんなふうに強く重なり合うことはないんじゃない?」
むんく「やってみれば、わかる。教科書を2冊、重ねて・・・」
とっぴ「よし、ドリルで穴を・・・」
あかね「ちょっと、とっぴ、そこまでやらなくていいわよ! 本を重ねるだけでじゅうぶん。ひっぱってみましょうよ」
ろだん「うん・・・おっ、これでもけっこう強いぜ。でも、まんが雑誌ほど強くなさそうだな。力をこめたら、ちょっとずれたぜ」
とっぴ「そりゃあ、ざらざらしてる紙の方が、摩擦は強いからさ」
ミオくん「ふふふ・・・」
とっぴ「なんだよ、その顔は」
あかね「そうね。とっぴにしては、まともなことをいったと思うわ」
とっぴ「・・・あかね!」
ろだん「おれも気になるな。ざらざらしてれば摩擦は強いだろ。摩擦って、細かい凸凹のひっかかりあいが原因だって、どこかで聞いた気がするぞ」
あかね「わたしも!」
とっぴ「ほら、みんなぼくと同意見だ。ミオくん、違うというんだったら、説明してよ」
ミオくん「(時計を見ながら)うーん、今日はこの後仕事があるし・・・また、明日! じゃね〜!」
あかね「あーあ、行っちゃった・・・」
とっぴ「わぁーっ、気になる! そういえば、摩擦って・・・何だろ」
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