レモン電池でモーターを回す | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 夏休みになりますので、恒例のお家でできるかんたん実験をいくつか紹介します。

 

 有名なレモン電池ですが、ネットで検索しても、太陽電池モーターを回す例を探すのは結構大変です。今回は、太陽電池用モーターを回せるレモン電池(とレモン汁電池)を紹介します。

 

【必要なもの】

1)太陽電池用モーター(数百円。ネットでカンタンに購入できます。プラスチックのプロペラがおまけでついているものもあります)

2)亜鉛版と銅板(レモンに刺せる程度の幅のもの。ホームセンターでも手に入りますが・・・小さな端切れくらいの大きさを使うので、大きなものを買うのはもったいないかもしれません)

3)ミノムシコード(色とりどりの10本組くらいの小型のものが、安く売られています。写真のコードは中型のもので、けっこうお高いので、お薦めできません)

4)オキシドール(過酸化水素水。切り傷の消毒などに使う薬品。500mLのものが数百円で手に入ります)

5)レモンを入れるプラケース(どうしても必要なものではありませんが、過酸化水素水をレモンにかけたりするので、机の上を汚したくないなら、用意してください)

 

 太陽電池用モーターといえども、10〜20mmAくらいの電流がないと動きませんし、動き始めには逆起電力も生じます。レモン電池に極板を差し込んだタイプのレモン電池だと、レモン中の内部抵抗が大きいので直列にしようが並列にしようが、モーターはなかなか回ってくれません。そこで、電子オルゴールなどを鳴らして我慢するというケースが多いようです。

 

 でも、モーターが動く方が電池というイメージはわかりやすい。やっぱり、モーターにプロペラをつけて回したいですね。

 

 今回使った太陽電池用のモーターの定格は0.4V、27mA。銅と亜鉛でつくる電池の電位差はこの倍以上あります(接触電位差は1.1Vですが、実際に作って測ると0.9Vくらい)が、レモン中の内部抵抗のため、電位差が小さくなるだけでなく、電流量がずいぶん少なくなりますから、太陽電池用のモーターといえども、おいそれとは回りません。もちろん、極板と極板の間の距離を縮めれば内部抵抗は減り、電流量も増えます。

 

 映像の2枚の極板は接触するかどうかという距離に突き刺してあります。実際にはそれでも距離があるので、2枚の金属板を両側から押してやります。こうすると、モーターが回り出します。

 

 まず、レモンを半分に切って、箱の中へ。箱は100円ショップで2個100円のもの。ちょうど小さなレモンが入る大きさでした。

 

 

 これに亜鉛版と銅板を差し込みます。手に入ったものがぎりぎりの幅だったので、少し苦労しました。

 

 

 このくらいの隙間です。真ん中を挟むと実の袋がじゃまなので、少しズラした場所に2枚の金属板を突き刺してあります。隙間は見ての通り。1枚目を刺しておいて、2枚目を少しだけ離して並行に突き刺します。といっても、まだ2枚の距離は遠いので、モーターはすんなりと回ってくれません。金属板の両側を指でつまんで、実を押しつぶすような感じでぎゅっと押しつけると、モーターが回り出します。(あまり力を入れすぎて、レモンの内部で2枚の金属板が接触してしまわないように)

 

 

 せっかく回り出しても、すぐにモーターの回転が落ちてきます。極板で水素が発生するので、それを防ぐために酸化剤(電池の場合は減極剤という)を入れます。家庭でよく使われている消毒薬のオキシドール(過酸化水素水)がちょうどいい。これを上からレモンにかけると、モーターの勢いがよくなります。

 

 形にこだわらなければ、次のような作り方をした方がカンタンだし、性能も高い。

 

 まず、亜鉛版と銅板を1枚ずつ用意します。

 

 なんどか使っているので表面がキタナイのですが、気にせずそのまま使えます。ただ、長く放置してあった場合は、最初だけ紙やすりをかけましょう。

 

 

 片方の金属板を少しだけ顔を覗かせて、2枚重ねのティッシュで包みます。もう1枚を最初の金属板の端の先に、垂直に置きます。

 

 

 もう1枚をその上に置いて、ティッシュの上でレモンを搾り、レモン汁でティッシュを濡らします。

 

 

 1枚目の金属板を起こし、2枚目に重ねます。

 

 

 こうすると、2枚の金属板の間に、レモン汁に浸したティッシュペーパーが挟まれる形になります。これで、レモン汁電池の完成。この形なら、誰がやってもモーターは回ります。

 

 ・・・といっても、すぐに勢いが落ちてきますので、減極剤のオキシドールを振りかけましょう。

 

 

 こうなります。うまく回りますね。

 

 なお、いうまでもありませんが、使い終わった後のレモンは食べられません。捨ててください。

 

 さて、ここから先は理論的なお話。難しいと思われる方は読みとばして頂いてけっこうです。

 

 化学的には、金属が液にイオンとなって溶け出すことが電池になる条件ということになります。そこでどのようにイオンになるかとか、液中でどんな反応が起きるかなど、事細かな条件が電池のメカニズムを決めていきます。

 

 水素が発生するなどして電流をじゃまするなど、さまざまな理由で電池の性能は制限されます。それに対する方策がいろいろと考えられており、現在市販されている電池はその技術の粋を集めたものといえます。(たとえば、今回のレモン電池でオキシドール(過酸化水素水)をレモンにかけたのは、過酸化水素水が電極で発生する水素を再び分解してくれるためです)

 

 でも、物理的な目で見れば、電池というのは、接触電位差の特殊な例だと考えることができます。

 

 異なる物質(金属でなくてもいいし、固体でも液体でも気体でもいい)を接触させると、その間には一定の電位差が生まれます。これを接触電位差といいます。接触電位差は原子の種類や表面の状態で決まりますから、次のような簡単なルールが生じます。

 

 A、B、Cを重ねたとき、両端にあるAとCの電位差=AとCを直接重ねたときの電位差

 

 だから、亜鉛と銅板を最終的な両極として電池を作った場合は、途中に何があっても(極板を浸した液が何であるかにかかわらず)、必ず決まった電位差(亜鉛と銅の場合は1.1V)になります。便利なルールですね。

 

※参考文献:物理学総論(下巻)堀健夫・大野陽朗共編(学術図書出版社)

 

 

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