フォトフォンをつくる〜光通信物語 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 フォトフォンは、かのテスラが考えた、光通信による電話。

 

 残念ながら、実用化は見送られましたが、上の図はその原理を再現した装置。

 

 岐阜物理サークルの人たちが開発したものです。(*1)

 

 コップに向かって話すと、音声の振動にしたがってラップに貼られたアルミテープが振動し、その揺れのために太陽電池に届く光量が変化する。太陽電池は吸収した光に応じて電流を生み出すので、それが音声を記録した電流として働き、ラジカセなどのマイク入力端子につなぐと、音声として再生されます。

 

 太陽電池が音声信号を捕らえる感知器として動作するというのは、今では理科教材で普通に使われるようになりましたが、初めて見たときは衝撃でした。

 

 え、太陽電池でできるの!?・・・という驚き。

 

 本当にびっくりしました。

 

 そもそも、変位がプラス側とマイナス側にまたがって変化するのが振動なのですが、それが光の量の大小に変換され、それがまた電流の大小に変換されるので、最終的な電流は、振動するといってもプラス側だけの変化です。

 

 それでも、電流の大小の変化がもともとの音声の振動の情報を持っているので、電流の振動を音声に変える仕組み、つまりスピーカーに通すとちゃんと音に戻してくれるんですね。

 

 この仕組みは、実際に働いている装置を見てみないとピンと来ないのではないでしょうか。

 

 林ヒロさん考案の光速測定装置(*2)でも、発振器のプラスマイナスの振動をフォトダイオードで変化する光量に変え、それをまた感光素子で受け止めて振動電流として感知しますが、この場合も最後の電流の電圧はプラス側で揺れています。でも、オシロスコープの基準点をずらすことで、一見、プラスマイナスの振動に見えるんですね。

 

 

 こちらが、ぼくが最初に岐阜の人に見せてもらった光通信の装置。

 

 当時の理科教材では、変調入力つきのレーザー光源装置を音源装置につなぎ、レーザー光を受光機で受けるというものがありました。光通信用の特別な装置を使って見せる演示実験だったんですね。

 

 ところが、こちらは、フツーの懐中電灯を光源として使い、受光機はどこにでもある太陽電池。

 

 岐阜の人たちは「ハイテクライト」と命名していましたが、図にあるように、懐中電灯には、ただコイルが入れてあるだけ。実体とは真逆のウィットに富んだネーミングですが、その発想はまさしくハイテク。

 

 原理をちょっとだけ解説しておきます。

 

 豆電球は、電池の電圧+コイルの電圧によって光ります。

 

 電池の電圧は豆電球を一定の明るさで光らせるためのものです。コイルの電圧だけでは豆電球を光らせることはできないので、まず光を得るために必要な「底上げ」のための電圧です。

 

 コイルの電圧は、ラジカセからやってくる音声を記録した電流の変化に応じて、電磁誘導により生まれるものです。この分が「底上げ」された電圧にあわさることで、豆電球に流れる電流が音声振動に応じた変化をし、懐中電灯からでる光も、その光量が音声振動に応じた変化をします。すごい発想ですね。

 

 この頃、岐阜の人たちは愛知物理サークルの例会に毎回のようにやってきては、次々にびっくりするような装置を見せてくれました。

 

 

 

 ・・・こんな具合。すごいでしょ。

 

 熱電流が、こんな素朴な形でやれるというのも驚きでしたが、十円玉が太陽電池代わりになる(*3)という実験は驚天動地。

 

 そういえば、前任校でのこと。

 

 この実験のことを紹介したら、受験前だというのに毎日実験室に来て、10円玉に光を当てて、電圧を調べるのに熱中していた物理部員がいましたね。(幸い、大学には受かりましたが)

 

 それだけ、人を惹きつける実験なんですね。

 

 

(*1)今回のイラストはどれも「のらねこの挑戦」岐阜物理サークル編著(新生出版)に、ぼくが描いたイラストをベースに、手を加えたものです。

(*2)うちの自然科学部とともに、この装置につきあって3年になります。非常に優れた装置ですし、林ヒロさんも、多くの人に使ってもらいたいと考えておられるので、いずれこのブログサイトで詳しい原理や作り方を紹介したいと思っています。少々お待ちを。

(*3)岐阜物理サークルの人たちがこれらの光通信実験を開発したときの苦労談は、上記の本「のらねこの挑戦」の「光通信物語ーーぼくたちの宝探し日記」に詳しく書かれています。この本は新生出版が廃業したため、書店では手に入りません。岐阜物理サークルのウェブサイトで直接注文してください。

 

 

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