七曜の起源 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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とっぴ「やほほ~」
ひろじ「また来たね。今日は何」
とっぴ「前にさ、月の名前の起源の話をやったよね。あれからいろいろ考えてさ、ぼく、大発見しちゃったんだ」
あかね「もう、大げさなんだから」
ひろじ「それは面白そうだ、聞かせてよ」
とっぴ「曜日の名前って、星の名前だよね! 月曜は月の日、日曜は太陽の日、火曜は火星の日、水曜は水星の日、木曜は木星の日、金曜は金星の日、そして、土曜は土星の日だ」
 

ろだん「偶然じゃないのか」
あかね「そもそも、曜日って、起源はヨーロッパなんじゃない? 日本はほら、きのえとかきのととか、中国起源の呼び名があったでしょ」
とっぴ「だから、ヨーロッパでも星の名前で読んでたんだよ。それを訳したから、そのまま星の名前なんだ。ほら、日曜日は英語でSundayだから、Sunの日だよ」
ろだん「月曜は? マンデーってなんだよ」
とっぴ「Mondayだから・・・Monの日・・・あ、Moonの日だ!」
ろだん「こじつけっぽいな」
あかね「じゃ、火曜日は? 火星は英語でMarsよ。でも、火曜日はTuesday。水曜日はWednesday。どこが星なの?」
とっぴ「うーん・・・そうだ、土曜日はサタデイだから、サターンの日、つまり土星の日だよ!」
あかね「ちょっと待って、ええと、電子辞書で引くと・・・土曜Saturdayは・・・ローマ神話の農耕の神、サトゥルヌスの日・・・英語の綴りはSaturnus。サターンはSaturnね。土星・・・あ、これもローマ神話サトゥルヌスのことって書いてある!」
とっぴ「ほら!」
 

むんく「偶然じゃないかも・・・」
あかね「じゃあ、他の曜日は? 金曜日のFridayは・・・北欧神話Friggの日。金星って、ビーナスでしょ。Venus・・・ローマ神話のウェヌスのことだって。ギリシャ神話でAphroditeアフロディーテに当たる・・・ぜんぜん違うじゃない」
とっぴ「でも、7つの曜日のうち、3つも星の名前なんだから、絶対、なんかあるよ」
ひろじ「とっぴくんは、ときどき鋭いね。ジャストミート!」
あかね「えっ、ウソ!」
ろだん「ホントかよ」
ひろじ「これを見てごらん。手書きで汚いけど・・・前に書いたものなんだ」
 

 

曜日名2

 


あかね「あっ」
ろだん「ホントだ」
ひろじ「ローマ時代の曜日の呼び名を見ると、みんな惑星の名前が元になっているのがわかる。メソポタミアからギリシャに入ってきた占星術の文化は、ギリシャ時代にはばかばかしいと眉を潜められていたけど、ローマ時代には結構広まったようだね。星が人の運命を左右するという占星術の理論が曜日名の決定に深く関わっているといわれている」
 

とっぴ「わあ、本当だ。ほら、あかね、火曜日は火星で、金曜日は金星! ほらほらほら!」
あかね「もう、そんなに勝ち誇らなくてもわかったわよ! でも、なぜ火曜日から金曜日まで、北欧神話になっちゃったのかしら」
ひろじ「それはイギリスという国の歴史に、北欧の国が深く関わってきたからだよ。なにせ、スウェーデンなどの北欧のバイキングたちは、イギリスに女性をさらいに来たというからね。英語はいろんな国の言葉が混じりあって、もっとも複雑な言葉になっている。綴りと発音がぴったり合わないのは、他のヨーロッパの言語にはない特徴だよ」
とっぴ「うん、うん。英語の綴りって、覚えるの大変だもん」
あかね「そうか。ローマの神々の名前が、イギリスでは北欧神話の神々の名前に入れかわっちゃったのね。火星は軍神だから、北欧神話の軍神の名前に置き換わった・・・」
ひろじ「その通り。面白いのは水曜日と木曜日だ。木曜日はローマ神話の最高神ジュピター(ユーピテル)だけど、英語というか、北欧の国々では雷神トールの日で、最高神のオーディンは水曜日に移っている」
 

ろだん「なんで入れかわってるんだ?」
ひろじ「さあ、詳しいことは分からないけど、推測はできるね。そもそも、北欧の国々では、もともとトールが最高神だったんだ。時代を経て、知略が力より重視されるようになると、最高神が智恵の神のオーディンになった。だから、英語や北欧語で木曜日がトールの日なのは、古い時代の最高神トールがそのままジュピターの場所に置き換わったんだろうね」
あかね「星の名前が曜日の名前の起源だっていうのはわかったけど、曜日の順番はどうやって決めたのかしら。聖書で、七日目は神様も仕事を休んだっていうから、それでお休みの日曜日が最後なのかな」
ひろじ「週の始まりを決めたのは、ローマ帝国の宗教となったキリスト教の影響だけど、曜日の順番はもっと昔、占星術の影響で決まったといわれているね。これは、古代の宇宙像にも深くつながっている」
 

とっぴ「面白そう! どういうこと?」
ひろじ「古代は天動説が主流だった。大地の周りを、星座が一日に一回転し、その星座の中を七つの特別な星だけが、さまようような、独特の動きをした。それで、さまようもの、という意味で、ギリシャ語のプラネットつまり、惑星という名がついた。惑星の動きから、地球から近い順もだいたいわかった。それが最初にあげた表だよ。もう一度、ここにあげておこう」
 

 


あかね「あら、月と太陽も、惑星なの?」
ひろじ「当時の常識ではね。月も太陽も星座の中を動くから、惑星だよ。肉眼で見える水星、金星、火星、木星、土星に、月と太陽を加えた7惑星は、星の中でも特に重要な星だと考えられた。それが占星術では、人生に決定的な影響を与える星として、ホロスコープなどの主役になっていった。占星術では、遠くにある惑星ほど人生や地上の出来事に深い影響を及ぼすと考えられたので、影響の強い順に、土→木→火→日(太陽)→金→水→月となる」
 

ろだん「七曜の順と違うぜ」
ひろじ「まあまあ、占星術はなかなか複雑でね。これらの惑星は一日24時間を、今いった影響力の強い順に、回り持ちで、一時間ずつ支配すると考えられた。こちらの表を見て」
 

曜日名3
 

とっぴ「うわあ、複雑」
 

むんく「あ、そうか、24を7で割ればいいんだ」
ひろじ「むんくくん、さすがだね。そうなんだ。24を7でわると3余る。だから、第1日の第1時間目が【土】から始まると、第2日目の第1時間目は影響力の順番で、3つあとの【日】から始まることになる。第3日目の第1時間目はさらに3つあとの【月】から始まる」
ろだん「なるほど。そうすると、第1時間目は、土→日→月→火→水→木→金→・・・と続くな」
ひろじ「こうした複雑な仕組みは占星術師たちの秘伝だったんだろうけど、これが今の七曜の順の起源になったといわれている」
ろだん「そうか。天が地球の周りを回るって信じてたのなら、こういう考え方にもなるかもしれないな」
ひろじ「ただ、前にも話したことがあるけど、プトレマイオスの天動説モデルは、こういう占星術とは違う発想で作られている。実際の惑星の運行をどこまで正確に予測できるかという観点で、周天球という目に見えない架空の回転球を惑星にくっつけるなんてことまでして作られたモデルなんだ。コペルニクスの地動説との対比で語られることが多いから、誤解されがちだけど、当時の世界で、観測ともっとも一致する現実的なモデルだった。実際の惑星の運行予測をするなら、コペルニクスのモデルより優れていたんだからね」
 
むんく「太陽中心のケプラーのモデルを地球中心に座標変換したら、たぶんプトレマイオスのモデルに近いものになる気がする」
ひろじ「そうだね。数学的には、どちらも同等だろう。こういうのは物理現象を調べるときにはいくらでも起こることだ。数学モデルとしては同等だけど、物理的にはどちらが正しいか、それは、実験や観測によるしかない」
ろだん「お、いいな、それ」
あかね「いつの間にか、ムツカシイ話になってきたわね」
とっぴ「ぼくは大満足。なんたって、曜日の秘密がわかっちゃったからね!」
あかね「とっぴも、まぐれ当たりがあるのね」
 

とっぴ「まぐれって・・・ぼくは理論的に考えたんだけど」
ひろじ「理論というより、類推だね」
あかね「ほらほら!」
ひろじ「でも、科学史をひもといてみると、新しい発見には、理論は役に立たなくて、類推が大きな働きをすることが多い。だから、とっぴくんの類推は大成功だったんだと思うよ」
とっぴ「ほらほらほらほら!」
あかね「はいはい、今日はとっぴの勝ち! ・・・ということにしてあげる」
とっぴ「あれ、なんかひっかかるなあ」

 

 

 
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