エジソンとアインシュタインその1 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

マンガ・イラスト&科学の世界へようこそ。

 

 

 

エジソン

 

とっぴ「やほ♥」
ひろじ「やあ、また来たね」

ろだん「わ、汚い本読んでるな・・・表紙も取れてるし・・・」
あかね「ほんと、紙が黄ばんでる」
むんく「ううん。茶ばんでる・・・漢字も・・・難しい・・・」
ひろじ「これはね、1951年に刊行された【アインシュタイン(Pフランク著/矢野健太郎訳/岩波現代叢書)】だよ。ぼくが生まれるより前に出版された本でね、漢字も旧漢字。ぼくが高校生のときに古くなって学校の図書館から払い出しになったのをもらったんだ。そのときすでに表紙と最初の20ページくらいが欠損していた」
とっぴ「うわあ、どんだけ古い本?」
ろだん「そっちのもう一冊は? それはキレイだけど、太い本だな。オレ、そんな辞書みたいな本、読んだことないぜ」
ひろじ「うん、こっちは近所の図書館で借りてきた【エジソンー20世紀を発明した男(Nボールドウィン著/椿正晴訳/三田出版会)】。2段組で700ページ弱だから、ちょっとした分量だね。借りる人がいないのか、閉架にあったのを取り出してきてもらったんだ。きめ細かい記述の伝記で、読むのに二日くらいかかったよ」
あかね「アインシュタインとエジソンか。どっちも有名な人ね」

 
 
むんく「最高の理論物理学者と、最高の発明家」
とっぴ「ついこないだまでガリレオやケプラーの話だったのに、こんどはいきなりアインシュタインとエジソン?」
ひろじ「まあ、ガリレオのところで相対性原理の話をしたから、というのもあるかな」
あかね「ガリレオの相対性原理からアインシュタインの相対性理論が生まれたって話ね」
ひろじ「さすがにあかねちゃん、よく覚えているね」
ろだん「エジソンは? オレ、エジソン好きだからいいけど。ええと、駅で働いていたときに駅員に殴られて難聴になって、駅長の息子が列車にひかれるのを救って電信のやり方を教えてもらったんだろ」
ひろじ「エジソンの有名な自伝はエジソンの許可の元に書かれているからね。全部が全部本当とは限らないよ。例えば、エジソンは自分のお祖父さんは銀行家だったと自慢しているけど、その銀行家は同性の別人で、本当のお祖父さんはオランダから移住してきた粉屋の娘の子どもで、農家を営んだ人だよ。エジソンは自分の子どもにもお祖父さんが銀行家だったと言い聞かせてきたというから、自伝に真実ばかりが書かれているとはいえないだろうね」
ろだん「ふうーん」
ひろじ「殴られて難聴になったというのも、本人の弁だけど、どうかなあ。エジソンの子どもの一人も難聴だったからね」
とっぴ「子どもを助けた話は?」
ひろじ「駅長の子どもを救った話は本当みたいだよ。当時もけっこう話題になった有名な話らしい。でも・・・」
とっぴ「なに?」
ひろじ「エジソンはもっと小さいとき、友だちが池で溺れて沈むのをじっと見ていて、助けを呼びに行かなかったことがあり、親からこっぴどく叱られたらしい。そのうち浮かんでくると思ったんだって。こちらはアシモフ情報だけど」
ろだん「・・・」

 
 
ひろじ「エジソンとアインシュタインを比較すると、いろんなことが見えてくるからね。自然科学教育論的には興味深いんだ」
あかね「ちょっと、興味が湧いてきちゃった」
ひろじ「二人はちょっとした接点もある。アインシュタインが最初にアメリカを訪問したとき、エジソンが過剰反応したんだ」
とっぴ「わあ、おもしろくなってきた。何があったの」
ひろじ「アインシュタインは皆既日食の観測隊の報告で相対性理論が実証され、一躍時の人になっていた。アメリカでも本人がびっくりするほどの大歓迎を受けたんだ」
あかね「でも、それがエジソンとどういう関係があるの」
ひろじ「エジソンは大学へ行っていないからね。新聞の売り子を手始めに、様々な機械を自分で開発してそれを売ってのし上がり、研究者を集めた一大発明会社を作り、もっとも偉大なアメリカ人とまでいわれるようになっていた。自分のことを【純粋な実践】と呼び、大学の教育を意味のあるものとは考えなかった。ものすごい読書家で【自分は図書館を読んだ】という名言まで残しているよ」
むんく「図書館で本を読んだ、でしょ」
ひろじ「いや、図書館の本を隅から隅まで読んだ、という意味合いでいったらしい。本を読み、研究し、実験を繰り返し・・・という生活を一日18時間、何十年も続けた」
ろだん「すごいな」
ひろじ「アインシュタインがアメリカを訪問しているとき、エジソンは大学教育に価値はなく、教育は事実を学ぶことに向けられるべきだと発言した。エジソンは自分で考えた質問書を作成して、それで試験をしてみれば、ほとんどの大学卒業生がそれに答えられないだろうといったんだ」
あかね「あらら、なんかタイミングがぴったりね」
ひろじ「たぶん、アインシュタインに騒ぐ国民やマスコミに対するデモンストレーションだったんだろうね。石原藤夫著【ニュートンとアインシュタイン】には、エジソンがその問題集を持ってアインシュタインに面会に行き、解いて見せてくれと迫った、と書かれている」
あかね「うわあ・・・それは、ちょっとイタイなあ」

 
 
ひろじ「Pフランクの【アインシュタイン】によれば、アインシュタインがエジソンの質問書を受け取って【答えられるかどうか】尋ねられたということは書いてあるけど、それがエジソンじきじきの面会だったとは書かれていない。たぶん、記者の誰かがエジソンの質問書を入手して、アインシュタインの反応を見たんだろうね」
とっぴ「それで、アインシュタインは答えられたの?」
ろだん「うん、オレもそれ、知りたい」
ひろじ「質問書の内容は音の速度はどれだけか、みたいな実用的な質問集だった。エジソンは自分の会社の研究者を雇うときにこういった試験を行っていたみたいだから、エジソンは自分が得たさまざまな実践的な内容を知っていることが重要だと考えていたんだろう」
あかね「それで、どうなったの?」
ひろじ「アインシュタインは【私は知らない】と答えた。【教科書を見れば分かるような事実について頭を悩ますことはしない】と。アインシュタインは科学者の仕事は未知のことを研究することにあり、すでにわかっていることをお勉強することではない、と答えたんだね」
とっぴ「ぼく、それに一票!」
ひろじ「アインシュタインはエジソンの発言を聞いて、大学教育の価値は事実を学ぶことではなく、教科書から学び得ないことを考える精神を養うところだとも答えている」
ろだん「うーん、でも、実験を実際にすることも大切だぜ」

 
 
ひろじ「そうだね、エジソンのために、べつのエピソードも紹介しておこう。自分の会社に大学での研究者を雇うとき、自分の発明した電球を取り出して、電球内の体積を量れるかどうか尋ねた。きみたちだったら、どうする?」
むんく「まず球の直径を測って、球の体積の公式で計算する。それから、球形から外れている部分の体積を、電球の側面の形から積分計算して・・・」
ろだん「まてよ、そんな計算、むんくにしかできないぜ。エジソンって、大学出てないんだろ。そんな質問、するかな」
ひろじ「まさに、ろだんくんのいうとおり。その入社希望者はむんくくんみたいに計算を始めたんだけど、エジソンは電球の一部を割って見せ、【ここに水を入れて、その水をビーカーで測ればいい】といったそうだ。もちろん、これらのエピソードも、自伝には書かれていないから、いろんなところで生まれた【伝説】の一つかもしれないけどね」
ろだん「オレ、エジソンに一票!」
あかね「おもしろいわね。もっといろいろ話したいな。あ、そうか、こうやって対話するのって、アインシュタインのいう【本から学び得ないことを考える】ってことかしら」
ひろじ「うん、そうだね。読書も大切だけど、議論も大切。ぼくも、もう少し、きみたちといろんなことを話してみたくなってきたよ。エジソンは小さな頃は注意力散漫でろくな生徒じゃないといわれたし、アインシュタインは語学や文学が嫌いで大学入試に落ちてる。二人とも、いわゆる秀才とか神童とかいうタイプじゃなかったし、違いばかりじゃなく、共通点も多かっただろうね」
とっぴ「近々、また来るよ。のんびりしてないで、相手してよ。約束」
ひろじ「はい、はい」


 
 

〜ミオくんと科探隊 サイトマップ〜

このサイト「ミオくんとなんでも科学探究隊」のサイトマップ一覧です。

 

***   お知らせ   ***

 

日本評論社のウェブサイトで連載した『さりと12のひみつ』電子本(Kindle版)

Amazonへのリンクは下のバナーで。

 

 

 

『いきいき物理マンガで冒険〜ミオくんとなんでも科学探究隊・理論編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。

 

 

『いきいき物理マンガで実験〜ミオくんとなんでも科学探究隊・実験編』紙本と電子本

Amazonへのリンクは下のバナーで。紙本は日本評論社のウェブサイトでも購入できます。