不合理な弁解をすれば疑われるのが当然だが、・・・・ | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

禁固3年の求刑はなかなか強烈である。

指定弁護士の論告は、産経の配信記事を読む限り素直に頭に入る。
聞いていてよく分からないような屁理屈の溢れた弁論が続くときは、大体はその弁論は裁判結果を左右しないものだ。
聞いていて頭にスッと入るときは、それだけ中身が精査されており、上手に整理されているという証拠だ。

検察審査会の議決を無効だという弁護側の主張に対して、審査会の議決の有効無効を争う手続きが夭死されていないから、審査会の議決の無効を言うのであれば無罪判決を言い渡すのが筋だ、と言う指定弁護士の主張は分かりやすい。
私も手続きの有効無効で争うよりも、起訴された以上は本体での有罪無罪を判断すべきである、という考えである。

指定弁護士は、小沢被告の弁解の不合理性を厳しく指弾している。

虚偽の記載を紛れ込ませた検察官の捜査報告書の存在や取調べ検察官の違法不当な取調べの事実が明らかになっているが、だからと言ってこれが小沢被告の不合理な弁解を正当化する理由にはならない、ということを指定弁護士は言っているようなものだ。

私も小沢被告の不合理な弁解には納得していない。

しかし、だからと言って、小沢被告が自分の秘書に対して4億円の現金の存在を隠すように指示したとか政治資金収支報告書に不実記載をするように指示した、とまでは認定できないのではないかと考えている。
具体的な指示の存在を推認させるような証拠がどこかにあるかという観点から検討すると、銀行からの融資申込書の存在だけでは如何にも弱いように思う。

ひょっとしたら石川被告は法廷での証言で大事なことを語っているかも知れない。
不合理な弁解、不合理な主張を続けてきた小沢被告がこれから何を言っても裁判所は信用しないと思っていた方がいい。

説明責任を果たさないとこんなことになる。
後からどんなことを言っても信用されない、というのは大変なペナルティだ。

後から本当のことを言っても、誰も信用してくれない。

小沢氏に再犯の可能性などないことは皆、承知しているが、それでも悪質な事件隠し、証拠隠滅工作があったということになると禁固3年の実刑判決が求刑されることになる。

本来は会計責任者の略式起訴ぐらいで終わる事件が、一連の隠ぺい工作の結果、情状が極めて悪質な重大事件になってしまった、ということだ。
公判を担当している弁護団は極めて有能だが、もともとの事件処理にあたった弁護人や小沢氏の関係者は対処方針を誤った、ということだろう。

指定弁護士の今日の厳しい論告に関わらず、私は、石川被告との関係では小沢氏は無罪判決を言い渡される可能性が高いと見ている。
いずれにしても今月19日の弁護側の最終弁論をよく聞く必要がある。

聞いていてよく分からない屁理屈だらけの弁論であれば、その弁論は裁判所を動かさない。

そう思っていて、大きな間違いはない。


参考:産経の本日付け法廷傍聴記事から指定弁護士の論告の一部を抜粋引用

指定弁護士 「取引は、被告が陸山会に対し、4億円の債権がある痕跡を薄くし、土地に関する陸山会の所有権にリスクを生じさせ、無意味に多額の金利負担を強いるなど、通常の処理をしている場合に比べ、被告・陸山会に不利なものがある。しかし、これにより、石川(議員)らは何らかの利益を得るわけではない」
 「被告の関心が強い土地の購入に関し、不利益をこうむるリスクを負う被告の指示・了解なしに、独断でこのような操作をする動機が石川(議員)らにはない。いかなる意味でも、石川(議員)らが、被告の指示・了解なしに自らの判断だけで、取引自体を操作し、収支報告書に虚偽記入をする可能性はない」

 《続いて、指定弁護士は小沢被告と元秘書の間に共謀共同正犯が成立することを立証しようとする》

 指定弁護士 「(4億円の分散入金や登記の先送りなどの)平成16年10月になされた一連の工作は、16年分の収支報告書に4億円を記載せず、17年分に土地代の支出などを記載するための外形作り、ないしは操作である」
 「これが被告の指示・了解のもとに石川(議員)によって行われたことは明らかであり、被告と石川(議員)との間では16年10月に、共謀が成立していたことがゆうに認められる」

 《指定弁護士はその理由について説明を始める》

 指定弁護士 「16年10月29日、石川(議員)は被告のもとを訪れ、(銀行から4億円を)借り入れるための融資申込書などの書類への署名を求めた。この日は土地取引の決済日であり、被告に隠すべき事情も、報告を制限される事情もないのに、その報告をしないことは到底考えられない」
 「しかも、本件土地の本登記は翌年1月7日に先延ばしして、それにもかかわらず代金を支払うという異例の措置をとっていた」
 「また、すでに(小沢被告が提供した)本件4億円を利用して土地代金の全額を決済したにもかかわらず、さらに4億円を借り入れるのであるから、なぜ必要なのかについて被告の了解が得られない限り、被告の署名を得ることは不可能である」
 「被告と石川(議員)との共謀は16年10月になされ、石川(議員)はこの共謀に基づき収支報告書を作成したのだから、被告に刑事責任があることは明らかだ」

 《指定弁護士は、やや早口で小沢被告の関与が共謀にあたるという主張を述べていく》

 指定弁護士 「被告が石川(議員)らを指揮命令する立場にあり、犯行を止める地位にあることは疑いない。石川(議員)らの犯行が、被告に対する批判を回避するためになされたものであろうことは容易に認められる」
 「被告の法廷での供述は、きわめて不自然で、証拠上も明らかに事実と反している部分があり、到底信用できない。責任回避のための虚言だ」