※この記事は過去記事の再構成です
諸君、ご壮健かな。
機動戦士ガンダムの宇宙世紀サイドストーリーに、2つのOVAがある。
「機動戦士ガンダム 第08小隊」
「機動戦士ガンダム ポケットの中の戦争」
この二作品にはには、それぞれ似た境遇のヒロインがいる。
クリスチーナ・マッケンジー。
この二人は合せ鏡。
アイナは敵シロー・アマダ と、クリス は敵バーナード・ワイズマン(バーニィ) と。
恋に落ちる。
奇しくも倒すべき相手としてたたかうのだが、その最期はあまりにも異なる。
シローとアイナは、お互いの立場を知りながら、恋に落ちる。
連邦のシローは懸命に手を伸ばし、ジオンのアイナはその手を振り払い、軍に戻ろうとする。
しかしその魂を削る戦いの末、最終的にお互いの軍から抜け、人里離れてひっそりと、だが穏やかな暮らしを送る。
対して、クリスとバーニィはどうか。
二人は近くの家同士でお互いに恋をしながら、相手のことを知らなさすぎた。
互いがパイロットとは知らずに、目の前のガンダムとザクを倒そうと戦う。
名も知らぬ敵の操縦士と思いこみ。
全力で。
愛する人の命を奪おうとする。
そして最後は、クリスがバーニィの命を奪ってしまう。
平和を取り戻し、バーニィに会うために。
このあまりにも切ないギャップが、私の心をうつのだ。
この二人をわけたもの。
アイナとシローは敵味方と知りながら、恋をする。感情むき出しの戦場だからこそ、相手の心に恋をしたのかもしれない。
しかし。
クリスとバーニィは戦場から離れた、平穏で出会った。戦場での苦しみを癒すように。
平和の中で出会ったから。そこに彼がいれば、それでいい。
それ以上、知る必要がなかった。
全てが終わってから知ればよかった。平穏は何時もそこにあると思うから。
私は思う。
人を知ること。
これは楽しいことであり、同時に。
苦痛でもある。
人は時に、温もりや楽しさで出会った人に、ここもダメなんだ、あそこもダメなんだ、と。
減点法で知っていく。
だから平和なのにすれ違う。なのでクリスとバーニィは知り合おうとしなかったのではないか。
対して辛い時やぶつかりあいから始まった人。こんないいところも、あんないいところも、と。
加点法で知っていく。
この萌えに近い感情が、戦時に出会った二人には生じたと考えるのだ。
周りを見回してみる。
長く一緒にいる人。
ずっと付き合いが続く人。
怒って。
泣いて。
喧嘩して。
それを乗り越えたからこそ。
ともに杯を酌み交わせるのだ、と。
ぶつかった時。
その後に手を握れるかが、本当に近づける相手なのかの分岐点なのだ。
(参考記事)
アイナとシローの平穏なエンディング → こちら
クリストバーニィの悲劇のエンディング → こちら
(過去記事の目次 )