ガダルカナル戦書籍一覧   
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矢野大隊長 1月21日 よりつづいております。

 

矢野大隊(臨時編成歩兵第二百三十大隊)

大隊長 矢野 桂二少佐 

昭和18年1月24日

 

早朝より陣地を巡廻した矢野大隊長は陣地が良く構築され偽装も出来ており昨晩不眠不休の工事がされていたことに満足している。

巡回中の兵との会話で、兵は実弾を一発しか撃ったことが無いと言う。

射撃訓練では五発づつ撃つのに一発とは腑に落ちぬと疑問に思い更に尋ねたところ青年訓練で一発撃ったとの事、軍隊に入って未だ射撃訓練を受けていないのだ。

 

水無川付近 矢野大隊推定布陣図

巡回中、二中隊長より報告

昨晩遅く海岸方面の監視兵より数名の者が陣地に向い泳いで来ると報告を受けた五味二中隊長は「敵の斥候か、勇敢な行動だ」と警戒を怠らず監視していたところ海岸に上がった者が全員真裸体なので安心して近づくと全員日本軍であった。

話を聞くと

敵状捜索の為、第一線へ派遣され任務を終えて自陣に帰ったが既に敵に占領されており敵中に残され進退窮まったが海に出て浪間に隠れ泳ぎ着いた

話を聞いた五味中隊長は苦境脱出行動をねぎらい負傷を手当てし食料を与え着替えに持って居た衣類を全員に支給し後方へ行かしめた。

此処まで二中隊長の報告。

 

この斥候隊の後日談として、矢野大隊長は数か月後、初対面の斥候の上官から非常に感謝されている。

 

午前十時、敵陣・一文字台の迫撃砲が8~9門に増加しているのが望見され約八十名の敵兵が接近、我が軍の斥候は隠れ忍んで敵情を窺うが、敵軍は白昼堂々と銃を肩にベルトでかけ手をポケットに口笛を吹きながら恰も散歩しているかのようだ。

ガダルカナルの米軍迫撃砲隊

我が大隊は敵を引き寄せ一斉射撃を実施しコブ山から側面攻撃で打撃を与えようと目論むも、まだ実弾を一発の兵を対戦車肉薄攻撃班として最前線に配置したものだから引き寄せて撃ったつもりでもかなりの遠方射撃となり不意を突かれた敵は蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

四散した敵は叢を逃げるので目視不可、我が兵は慌てており距離も遠く命中率は悪く敵に損害を与える事が出来ない。

 

ガダルカナルの密林を行く米軍兵士

 

その間、一部の敵が右翼コブ山へ浸透し監視兵の気づかぬうちに手榴弾を投げ込まれ爆音で気付き軽機関銃で応射、此の分隊は未教育補充兵で軽機関銃の操作が出来ず古兵を含めてあったので要領よく敵に射撃を加え前進近接射撃と状況に応じ機敏な行動を取った。

山砲中隊の記録では23日↓要図の戦闘があったと記録されています。

各記録で一日二日のズレがあるのは止むを得ません。

予備隊の第一中隊は丸腰のまま作業中で武装を督促、漸く戦闘

可能になった時は敵は逃げてしまい付近に姿は見えない。

戦場も初めて、中隊長も初めて、実弾一発の未教育補充兵の初めての戦闘はこのような事情で敵に十名足らずの損害を与えただけで、矢野大隊も亦四名の独歩可能負傷者を出した。

歴戦の兵であれば可成りの損害を与えた事であろうが、矢野大隊の兵には爾後の戦闘における良い経験となった。

 

午後若干の砲撃があるが静かで不審に思い双眼鏡で敵陣を覗く矢野大隊長の眼には陣地を構築している米兵が写る。

今夜米軍の侵攻は無いと思われたが四粁後方小川(ママラ川)の線へ陣地交換の準備として大江中尉を地形偵察に派遣。

ママラ川 2012年撮影

毎年襲来するサイクロンにより地形は行くたびに変わっています。

 

夜に入りコブ山より更に南方右翼に敵の動きがあるような予感を感じ、敵状を探るべく機関銃中隊長大石少尉をイ道付近へ派遣。

 

矢野大隊の受けている命令は

25日まで水無川付近の陣で抵抗、状況真に止む無き場合は24日陣地移動可、成るべく長く抵抗せよ。

 

矢野大隊長は現状止む無きと言えぬも右方台上イ道付近の敵に包囲される可能性を捨てきれず、かと言ってあまり早く下がって卑怯者と呼ばれるのも耐え難いジレンマに陥っている。

水無川からママラ川にかけての位置関係

水無川より四粁後方とありますが実際は一粁後方、四粁後方付近には川は無く五粁後方はボネギ川となります。

午後八時、矢野大隊長は四粁後方の小川(ママラ川)の線へ陣地交換を決心。

本日の状況及び陣地交換を第二師団司令部へ報告を出す。

小川の線に布陣していた野重砲部隊も先遣した大江中尉の報告により後方へ移動している。

この第二師団への報告と野重砲隊からの二師団への報告のタイミングが後に矢野大隊長を苦しめることになる。

 

つづく

 


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