弘屋の夜は更けて | ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

ワインな日々~ブルゴーニュの魅力~

テロワールにより造り手により 変幻の妙を見せるピノ・ノワールの神秘を探る

最近開業して同業者になった先生たちと、6月29日に弘屋を訪れた。
この先生はわたしより少し若く、出身大学は異なるが、勤務医をされていたころから
とても仲良くしている。
お互い平日夜の診療終了後、ということで、午後8時過ぎに店に入った。


フランク・パスカル キュヴェ・プレステージ ブリュット1999

まずはグラスシャンパーニュから。これはドライでわたしの好みのシャンパーニュだった。
ウメムラさんで売っていたのでコメントを読んでいたら、ノン・ドザージュと書かれているが、
ホンマかいな。
エクストラ・ブリュットとまでいかないと思ったが、このくらいの酸味が丁度よく、
果実の香りもする。
自宅用にちょっと買っておこうかな。


前菜に生ハムとラディッシュと桃(だったかな)をいただいたあと、キャビアと卵黄の
スープ。続いて魚料理の穴子。


メインは仔羊と・・ネギ。


ドメーヌ・エティエンヌ・ソゼ ピュリニー・モンラッシェ 1985

白ワインはどんなんがありますか、と言ったら最初に店主が出してこられたのは
ポンソのモレ・サン・ドニ82だったが、ちょっと迷って選んだのがこれ。
言わずと知れたソゼだが、おそらくこんなに古いヴィンテージのものは入手困難だと思う。

畑名は入っておらず、村名ワインであると思われる。
新しいシャルドネはけっこう舌にまとわりつくが、このワインは果実味を残しながらも
きれいに熟成した素直なものだった。

大きな声であ~だこ~だとワインを選んでいたので、ブルゴーニュオタクだと
思われたらしい。
大きなチューリップ型のブルゴーニュグラスで、蘊蓄をたれながらブルゴーニュを
飲まれていた隣席の先客から声がかかった。
「ブルゴーニュはお好きですか」

おおっ、渡りに船だ。
「あなた、nackさんですよね。さて、わたしは誰でしょう」
と返すと、明らかに彼の顔には驚愕の表情が・・・

実は入店したときから、nackさんに間違いないと思っていたのだ。
だって、顔に「nack」と書いてあったもんね(ウソ)。
そしてそのお隣の東京弁の方は、Nさんに違いないと思っていたら、やっぱり
その通りだった。

それから先は、わたしの連れをほっぽらかして、しばらくワイン談義になってしまった。
予期せぬ出会いが生んだ、楽しい夜でありました。

nackさんから、「よかったら少し飲んでみて下さい」とおっしゃっていただいて、
飲ませていただいたのがこれ。

(左)クレール・ダユ シャンベルタン・クロ・ド・ベズ 1982
(右)ベルナール・セルボー シャンボール・ミュジニー レ・ザムルース 1990

2本ともnackさんが店に持ち込まれたワインだそうだ。
この82のダユ、上品に枯れており、すでにパワーこそ失われているが、
良い畑の古酒でしか味わえないきれいなワインであった。
こういうのは、グラスをゆっくりと傾けながら、1人でほくそ笑みながら飲むのがいいのだ
・・・と好意に甘えて頂いたワインながら、勝手なことを思う。

そして、醤油みたいですみません、と言いながら、これまた良年のザムルース90を・・
え~、果実味はしっかりしているし、それほどコケているわけでも、、、と
最初は思ったのだが、アフターが確かにいただけない。
お二人が帰られたあと、あつかましくも残されたワインを一口飲んでみたのだが、
これは間違いなく醤油だと分かった。

妙に濃いガーネット色だったが、熱入りだとこんな色になるんです、とのことだった。
これは知りませんでした。


(左)ベルナール・セルボー シャンボール・ミュジニー レ・ザムルース 1976
(右)造り手不詳?? シャンベルタン・クロ・ド・ベズ 1972

nackさんたちがお店のリストからチョイスされたのが、同じセルボーのザムルース76。
これは飲み頃と言える良い状態の古酒であった。

こちらの真打ちは、店長菅沼さんお勧めの、造り手不詳というクロ・ド・ベズだったのだが、これが大当たりだった。
個人的には、今年これまで最高の赤だったと思う(最近自宅で外れているからなあ)。
パワーはなくとも幾重にも重なる複雑味に溢れており、これが畑の力なのかと思った。

必然とも言うべき運命の出会いは、ワインを美味しくするのである。
nackさん、Nさん、楽しい時間と美味しいワインをありがとうございました。

ところで、何でnackさんが注文されたワインのボトルが、うちのウサギと写ってるの?