柴田孝之『S式1問1答重要論点問題集』(自由国民社) | 司法試験情報局(LAW-WAVE)

司法試験情報局(LAW-WAVE)

司法試験・予備試験・ロースクール入試の情報サイトです。司法試験関係の情報がメインですが、広く勉強方法(方法論)一般についても書いています。※ブログは完全に終了しました。コメントなどは受け付けておりません。ご了承ください。

S式1問1答重要論点問題集/自由国民社
¥2,415
Amazon.co.jp


LEC柴田講師 作成の教材です。
S式法律用語問題集 の姉妹版(応用編)です。

 

科目の基本の修得を狙った前掲書と比べ、本書の価値は微妙です。

 

まず、論点の修得を目的とするのはいいのですが、本書が論点の「何」を修得させようとしているのか、いまひとつ分かりにくいです。

 

本書を開いたことがない人ならば、あるいは本書で論点の規範と理由づけの記憶チェックができると思うかもしれません。しかし、本書のチェック項目はそういうものではありません。なんというか、論点の理解という微妙なものをチェックしようとしているようにみえます。

 

しかし、これは狙いとしては微妙です。

 

ある事柄を「理解」しているかどうかの意味は、実際には極めて多義的なものです。

 

たとえば、しっかりと基本書を読み込めること「理解」と呼ぶなら、そういう理解を身に付けるには、しっかりと基本書を読み込むしかありません。

あるいは、漠然とある概念と概念との結びつきに気づいたり、特定の概念をもっと深い視点から説明できたりするような、いわば気の利いたトリビア的な説明ができることを「理解」と呼ぶのであれば、そういう理解を身に付けるには、様々な教材に手を出しまくって、理解・記憶の範囲を見境なく広げていくしかありません。

 

このように、ある事柄を「理解」しているかどうかは、その人が何をしたいかという目的と無関係ではないのです。「理解」は、目的との関係で相対的に定義されるものに過ぎません

 

司法試験対策の観点に立った場合、「理解」が何を意味するのかは簡単明瞭です。

すなわち、理解しているとは、問題が解けることに他なりません

 

問題が解ければ理解していると言っていいですし、反対に、ある受験生がどれだけトリビア的理解をふんだんに持っていたところで、問題が解けなければ理解していることには絶対になりません。

 

このように、試験対策という観点に絞っていえば、「理解」の有無は簡単に切り分けられます。

 

逆にいえば、どんなに必死に基本書を「理解」していても、学者先生の御託に酔いしれたりしていても、問題が解けなければ、それだけで試験という観点からは理解していないことが確定します。試験という目的に定位するとはそういうことです。

 

そうなのであれば、このレベルまで来た受験生が「理解」すべきことは、一つしかありません。

それはすなわち、問題を解くこと(解けるようになること)。それだけです。

 

それが試験対策として最も正当な方法であるはずです。

これ以外のいかなる勉強も、的からどれだけ離れているかは別として、総じて的外れです。

 

したがって、本書の学習が無駄とは思いませんが、その時間があるなら、もうさすがに問題集をやったほうがいいでしょう、と言いたくなります。

 

ただ、それでも普段とは別の角度から「理解」の補充をしてみたいという方がいるかもしれません。

そういう方が、あくまでも問題集学習の合間に趣味的に眺めるくらいならいいと思います。

本書を問題集として解く必要は、いかなる意味でもないと思います。

 

基本的には不要な教材でしょう。

 

おすすめ度⇒B