↑ 第2部からの続きです。
ジローに襲いかかったコウモリが
電撃攻撃を行う。
「あぁっ!」(ミツコ)
「無論、タダのコウモリではないがね」(バット)
「サイボーグだ。普通のコウモリに放電機能を付けただけだが
あの数で襲いかかれば、さすがのキカイダーもただでは済むまい」(バット)
「そんなぁ …。
ジロー! チェンジして。
早くチェンジして、そこを出るのよ。… ジロー!?」(ミツコ)
「嫌だ。僕はチェンジしない。ミツコさんの前では」(ジロー)
「ジロー … どうして …?」(ミツコ)
「はっはっはっはっは」(バット)
「何がおかしいの?」(ミツコ)
「分からんのか? ヤツはチェンジした醜い姿をお前さんに見られたくないのだ。
愛する人に見られるぐらいなら、いっそ死んだ方がマシだとな」(バット)
以前の事をミツコは思い出す。
「ミツコさん … 僕を …
僕を … 見ないで …」(ジロー)
「…………」(ミツコ)
「ブラボォー! 素晴らしい! キカイダー 最高の道化だ。
見事な悲喜劇だ。ははははははははは」(バット)
「黙って!
ジロー、あなたは自分の姿を恥じる必要なんてない。
兄弟同士で戦わなければならない悩み。悪い心と戦う悩み。その悩みが身体の半分を不完全なまま残してしまう。
それはあなたの心が、それだけ正直で純粋だから。だから、それが形になって現れているだけ。
決して恥ずかしがる事なんかじゃないの。
ジロー !? どうして!」(ミツコ)
「そろそろカーテン・コールの時間だ。
さらばキカイダー。我が下僕達の熱き抱擁を受けたまえ」(バット)
コウモリ達が一斉にジローに襲いかかる。
「ジロー!」(ミツコ)
「あっ!?」(ミツコ)
「悲惨な物を見つめ続けるのもあまりいい趣味とは言えまい。
結末は見えているのだ。時を待とう」(バット)
「ジローが、ジローが負けるはずないわ。必ずチェンジして脱出してくる」(ミツコ)
「ありえんね」(バット)
「ヤツの考えている事など所詮お前さんには理解できない。
機械とも人間ともつかぬ理不尽な存在として世に送り出された理不尽な生、それが私とキカイダーなのだよ。
良心を持った事を憎み、悪に染まれぬ心を憎む。そして誰かに愛される事など決してない。
誰にも理解などできはしない」(バット)
ジローはサイボーグ・コウモリの攻撃を受けるがまま。
「じゃあ … あなたに私の心が理解できるっていうの?」
(ミツコ)
「うん?」(バット)
「人間みんなが幸せだと思っているの? 人間みんなが誰かに愛されて
生まれてきているとでも思っているの? 自分が一人ぼっちだと思っているのは、あなただけじゃないのよ。
そんな泣き言はもうたくさん!」(ミツコ)
「何を戯言を」(バット)
「戯言? そうかもしれない。でもジローは今も戦っている。
化物と呼ばれても、みんなに忌み嫌われても
いつも一人ぼっちで」(ミツコ)
コウモリ達の攻撃に耐えていたジローが
ギターに手を伸ばす。
「そうか … ここは父の古い実験室。
ここで兄さんは○んだのね。あの事件が無ければ私達がこんな風に悲しみをぶつけ合う事は無かった。
こんな不毛な争いも必要なんてなかった」(ミツコ)
「我々は泣きながら生まれてきたのだ …か。まるでシェークスピアだな」(バット)
「それでもやはり、お前さん達人間には理解できないのだよ。我々にはその悲しみから逃れる日は決して来ないのだから」(バット)
「何の音だ? この周波数は?」(バット)
「音!?」(ミツコ)
「まさか?」(バット)
ジローがコウモリ達に反撃していた。
「ジロー …」(ミツコ)
「何と … 妨害音波を出してコウモリの音響探知をかく乱しているというのか。しかし、どうやって …
そうか …。指で拾った弦の振動周波数を体内の回路で変換させているのか。
見事だ、キカイダー!
決着を着けよう。表で待っている」(バット)
ジローも退くつもりはない。
ミツコの見守る中、良心回路を持つジローとゴールデン・バットの死闘が始まる!
↓ 終幕の第四部へと続く。