この件は、社会保障審議会の報告が出る前にご紹介しなくてはと思っていたのに、結局今になってしまいました(柏崎刈羽原発のことも、浜岡原発のことも、それにイラクの戦費の件の続きも同様に出遅れています)。


12月15日付けで、障害者自立支援法に定めた「応益負担」の継続を含めた内容が報告されました。

どう考えてもこれはひどすぎる話です。


この応益負担は本来、社会保障で規定された生きる権利のための支援分を、行政側に「ポイント還元しろ」と言っているわけですから(詳しい説明は後述します)、筋の通らないことこの上ない、と思います。

「財源不足を補う」にはあまりに小さな額である、なのにとり続けることにも注目しなくてはならないと思います。


次期国会に送られるこのいいかげんな報告書で悪法の悪い点がまたも堅持されることを、断固阻止しなくてはならないと考えます。


日経 2008/12/16

障害者団体、1割自己負担継続に失望 社保審自立支援法見直し

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081216AT1G1502P15122008.html


 障害者自立支援法の施行3年後の見直しを進めている厚生労働省の社会保障審議会障害者部会は15日、福祉サービス料の利用者1割負担を現行のまま維持すべきだとの報告をまとめた。軽減措置で実質的な負担が抑えられていることが理由だが、抜本的な見直しを求めていた障害者団体の間には失望が広がった。

 報告を受けて厚労省は次期通常国会に同法改正案を提出する方針だが、与党内にも1割負担を撤廃して軽減措置を恒久化すべきだとの声があり、調整が続いている。(07:00)


軽減措置で実質的な負担が抑えられていることが理由」とあるので、本当に厚労省はそれを理由にしているのでしょう。


つまり、四国新聞の1年前の見出しが物語るように、これは世帯年収に対しての免除額の上限をゆるくしたからいいでしょう、ということで、お政府様のへりくつです。



四国新聞 2007/11/23 18:06

障害児世帯などの軽減拡充/負担、所得に応じた性格に

http://news.shikoku-np.co.jp/national/main/200711/20071123000229.htm


 福祉サービスを利用する障害者の負担軽減策を検討している与党のプロジェクトチームが近くまとめる報告の原案が23日、分かった。2008年度から障害児のいる世帯と低所得世帯を対象に現行の負担軽減策を拡充。その上で、08年度までとなっている軽減策を09年度以降も続ける。

 昨年4月に施行された障害者自立支援法は、サービス利用に応じて負担が増える「応益負担」を原則としているが、所得に応じた以前の「応能負担」の性格を強める方針。年間数百億円の財源上積みを目指すが、財政当局との折衝の決着は12月に持ち越されそうだ。

 自立支援法はサービス利用料を原則1割負担としたため、負担増でサービスを中止する例が続出。政府は昨年末、負担上限額の引き下げなど3年間で1200億円の特別対策を決めた。

 現在、障害児世帯で軽減策の対象となるのは夫婦、子1人の場合で年収600万円まで。与党は年収890万円程度まで対象範囲を広げ、障害児世帯の8割をカバーしたい考えだ。


一定以上のお金のある世帯からは生きているだけでお金を取る、と言っているだけです。


8割の世帯では軽減するからいいだろうという主張は、障碍を持つ方とその家族を分断することすらあれ、本来不当な応益負担分の徴収を正当化する理由になどなっていません。限られた集合の中での平準化を無茶な形で偽装しようとするだけで、

 「結局取るんだからね」

 「払って(絞られて)いる人はいるのだからね」

といった実績を作ろうとすることに変わりはありません。


この報告書の問題を詳しく書いているのがしんぶん赤旗の記事です。



しんぶん赤旗 2006/12/16
自立支援法
応益負担を堅持
社保審部会が報告書了承

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-12-16/2008121602_02_0.html


 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の障害者部会は十五日、障害者自立支援法の施行三年後の見直しに関する報告書を大筋で了承しました。政府は報告書をふまえ、同法改正案を次期国会に提出します。


 報告書では、障害者・家族に重い負担となってのしかかっている「応益負担」(利用した福祉やサービスの原則一割を利用者が負担)の考えを堅持する立場を改めて示すものになりました。

 これまでの議論では、委員から「応益負担」についての反対意見が出されましたが、報告書では、「負担軽減措置」で、実質的に「応能負担」になっていることを強調しました。いくら軽減措置をとっているといってもあくまで期限付きの「特例」で、原則一割の負担を強いる制度の根幹は変えないというものです。


解説
届かない現場の声

 自立支援法の見直しについての厚労省の報告書を了承した十五日の社会保障審議会・障害者部会では、「議論が不十分」「現場の声が反映されただろうか」との声が相次ぎました。


 「(法施行で)現場では大変な状況に陥っているが、議論されてこなかった」(小板孫次・日本知的障害者福祉協会会長)

 「(さまざまな課題が)議論にはならなかったというのが率直な意見だ」(安藤豊喜・全日本聾唖<ろうあ>連盟理事長)

 「所得保障、利用者負担への対策がない。ここも(議論が)不十分だ」(副島宏克・全日本手をつなぐ育成会理事長)


 事業所の収入減の要因となっている「日払い」方式や、「障害程度区分」についても議論が必要だった、との声も出されました。


 今年四月からの見直しの議論の過程では、厚労省は国民からの意見も公募(七百九十七件の意見)したほか、障害者関係団体のヒアリング(二十六団体)も実施されました。これだけ広範な人たちの意見を聞きながら、報告書は「最初に結論ありき」というものに終始しました。


 今後、政府は自立支援法の改正法案の検討に入りますが、「応益負担」の撤廃をはじめ、報告書の枠組みにとらわれない抜本的な見直しが問われています。(鎌塚由美)



~~~


また、村野瀬玲奈さんの11月5日のエントリーを、敬意を表してこちらに転載させていただきます。

玲奈さん、いつも弊ブログのご紹介もありがとうございます!


市民体育館や、公民館の会議室を借りる際の施設利用料と応益負担は、お政府様によって(まず間違いなく)意図的に混乱させられるような形で説明されますが、いったいこの、意地になって継続されようとする「応益負担」の不公正がどこにあるかを明確に示してくださっています。リンク先もぜひお読みください。



2008-11-05

村野瀬玲奈の秘書課広報室
『「障害者自立支援法」の根拠である「応益負担論」の冷血的不公正』


http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-968.html

何らかの先天的な障害をもって生まれてきた人、あるいは病気や事故などで後天的に障害を持ってしまった人であっても、そのハンディキャップを補って社会の中で生きる権利が当然にある、とする考え方は「人権」という概念を基礎にして長い年月をかけて障害者福祉の取り組みの中で確立してきたと思っていました。障害を持ってしまうことはむしろ確率的な問題であって本人の自己責任に帰すべきものではなく、障害によるハンディキャップは社会全体で支えるべきであるという考え方を人間社会は長い歴史の中で獲得してきたはずだと思っていました。


この考え方を真っ向から否定するのが2006年に施行された「障害者自立支援法」の根拠である「応益負担論」です。障害者が受けるサービスを社会全体で負担するのではなく、障害者自身がサービスを受けたければ自分のお金でサービスを「買う」べきだという考え方が「応益負担論」です。


この考え方は反人権的・反人道的な考え方であり、現代社会ではすでに終わっていた考え方だったはずなのですが、強行採決された「障害者自立支援法」によって、財政赤字を錦の御旗にして「応益負担論」を前面に出し、障害者に負担を押し付ける政策が強化されました。この法律の対象になる当事者たちは、「障害者自立支援法」の国会審議時から強く反対してきました。それにもかかわらず、障害者の生活基盤を切り崩す「障害者自立支援法」は強引に可決され、成立、施行されてしまったわけです。


障害が重く、生活・生存のために介助が必要な障害者が、介助をしてもらうたびにお金を払わなければならない。これは、健常者が生きるために呼吸するたびにお金を払わなければならないようなものです。あるいは、施設に働きに行くと、「施設利用料」をとられる。これは、健常者が会社に働きに出ると、「勤務先利用料」をとられるようなものです。しかも、障害者はそんなに大金を得られるわけではありません。場合によっては得る賃金よりも施設利用料の方が高いという事態さえ少なくありません。障害者に「生きるな」と言っているようなものです。


この冷血的不公正に対して、当事者たちが、「障害者自立支援法」は日本国憲法、障害者権利条約に反するとしてこの問題を司法の場で問うべく立ち上がりました。


この動きを応援したく、自ら施設を営む「大脇道場」の友さんの記事、そして、「障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会」のサイトをご案内します。「めざす会」からは、カンパのお願いの部分だけ転載しておきますが、ぜひサイトをごらんください。


●大脇道場!
NO.670 新たな人間裁判=障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会発足集会に全国から160名が参加
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-731.html


●障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会
http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/index.html

■支援カンパ 振込先

◆郵便振替口座
  口座番号  00120-4-484666
  口座名称  めざす会

◆振込先  ゆうちょ銀行
  口座番号  10060-25823761
  名義人    めざす会(メザスカイ)


(引用ここまで)


この法律を成立させ、施行させた政府、与党、国会議員、中央官僚のみなさん、考えてもみてください。あなたがたは国の施設を利用しています。国家機関で働いています。そこで働いて賃金を得ることで「利益」を得ています。「国家機関を利用して」稼ぐお金より高額な「施設利用料」を払っていますか。生活基盤がしっかりしていて負担力のあるあなた方が「施設利用料」を払っていないのに、なぜ生活基盤があなた方よりも弱い人たちに「施設利用料」を払わせるのですか。


あなたが障害者でないのも、あなたが障害者であるのも、めぐりあわせ、ただそれだけ。そのようなめぐりあわせに特別なお金を払わせるのは間違っています。


「障害者自立支援法」が審議されているときから私は反対でしたが、そろそろこのような冷血的に不公正な政策はやめるべきときです。一般の人もこの冷血的に不公正な政策の非道さをもっと意識すべきときです。そういう思いを込めて、この訴訟の動きに支援を表明します。


このことを「国にお金がないからまだまだ続けます」とぬけぬけと言い放っているものが今回の報告書だ、という点を重視しなくてはならないと思います。


これが誰にでも潜在的に降りかかりうる問題であるという意味は二つあるようにも思います。


 誰もが、障碍の当事者になりうること。

 誰もが、なんらかの属性を理由に、ここで実績を得た不当で冷血な手法の対象者になりうること。


~~~


以前、知人から入手して驚いた資料をもとに、以下のエントリーを書いたこともあります。


2008-02-18
『原発も基地も安全確保までが地方の「自己責任」なのですか(障害者自立支援法説明資料に片鱗を見る) 』
http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10073502339.html

2008-05-27
『40歳以上の障碍者は介護保険に移行させるとした平成12年厚生省案(現在も続く方向性)』

http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10100450558.html


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※『麻生でてこい!!リアリティツアー救援会ブログ』

http://asoudetekoiq.blog8.fc2.com/
3人は釈放・不起訴となりましたが、不当なやらせ逮捕、基本的人権の弾圧、権力の横暴に引き続き抗議します。昨今のあらゆる言論弾圧の高まりに抗議します。


※引き続き、「もやい」への寄付とカンパをお願いいたします!!

いくらからでもOKだそうです。政官財の非情がこれ以上漫然と繰り返されないためにも、もやいを支援しながら、積極的に反貧困を訴え続ける必要があります。

http://www.moyai.net/modules/weblog/details.php?blog_id=384

(もやいの危機について解説したエントリー: http://ameblo.jp/garbanzo04/entry-10147525072.html


当面のカンパは集まりつつありますが、誰しもが思うように世襲議員の貴族クラブのような与党政治家から正しい手当てへの判断がなされないことをもやいのような団体が埋めていることを考えなくてはなりません。

サポーター会員も募集中とのことです。


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汚染と利権まみれの市場移転計画に反対する「東京大行進」へのご参加と、真実を明らかにする署名へのご賛同ありがとうございます。


UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA
中越沖地震から1年以上たちました。

引き続き、柏崎刈羽原発停止への署名↑をお願いいたします。

被災された方々の不安と風説被害に心よりお見舞い申し上げます。

洞爺湖「原子力」サミットで、柏崎刈羽の安全アピールや六ヶ所村再開目処の発表などがリンクされました。

11月に7号炉の核燃料装填状態の系統試験が行われました!!

原発しか当面のエネルギー問題の現実策がないという原子力バブルの欺瞞をまかり通らせるわけにはいきません。


NPTを骨抜きにした米印原子力協力協定に異議を申し立てます。

http://www.cnic.jp/modules/abolition2000/index.php  (ABOLITION2000)


「壊すな築地 7.12東京大行進」(雨天決行) 

→好天のうちに今回終了です。ありがとうございます。またよろしくお願いします。
http://tsukiji-iten.org/
江戸街初夏示威行歌舞伎座引幕版
(↑管理人による勝手バナーです(^^;)


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