詐欺師ノ穢レ~その陸~
なんか久しぶりだなー
というか
書き上げたヤツが最後の最後で消えてしまったというトラブルから早一ヵ月
そろそろ書き直せるかなって感じで
もう前回までのお話覚えてねーよって人もいるでしょう
なんで前回までの分はコチラから
では今回の第六幕、はじまりはじまりー
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結局
何の解決も無いまま、お店のシフトの名簿から、お兄さんの名前だけが消えていた
お兄さんがお店に来なくなって数日後の事
男の子は店長に事務所まで呼ばれた
店長> あの男の退職金を抑える事になったよ
男の子> …
本来ならあのような経緯で退職となったため、退職金なんて出ないはずだった
後で他の人から聞いた話だけど、店長がだいぶ頑張ってくれたみたいで
被害金額が大きいという事もあり、その返済や保証人になった人達のためにもと、お願いをだいぶしてくれたらしく
店長> でもお前のお父さんをお金の受け取りに来させて欲しい
男の子> 父ですか?
店長> だってお前、また情に流されて、せっかく返って来たお金を受け取らなかったりしそうだし
男の子> …
男の子は内心嫌だった
親にその事を知られるってのは
男の子> もしもし――
父> ――
お兄さんの退職金が支払われた日
そこには保証人になっていたサブさん、親分、男の子のお父さん、そしてお兄さんがいた
受け取ったお金でサブさんと親分は返済
男の子のお父さんは息子が貸していた100万円を受け取った
父> 勉強になっただろ
男の子> うん…
父> ならその授業料として、お父さんが半分の50万は貰っておくからな
男の子> え?
男の子は目が点になった
なんで?
男の子のお父さんの暴挙は今考えても無茶苦茶な理論だけど、男の子は今でもその当時の店長に感謝をしています
お店の中でそういう金銭トラブルが有ったからなのかどうなのかは定かでは有りません
店長はお店を離れる事になりました
それからしばらくして、退職をされたと話を聞きました
退職後は地元を離れ、たしか山口県だったかな
そこでパチ屋の店長をしていると聞きました
でもそれから数ヵ月後
突然死だったらしいです
その話を聞かされた時には、もう葬儀も終わってしまってだいぶ経った後でした
僕らが苦労をかけてしまったから――
男の子は今でも思い出します
元気だった頃の姿を
もしパチ屋の店主になるような事が有ったら、店長みたいな自由な発想を持てる人間になりたいと
他人の意見に左右されず、自分の意思を強く持てるような店主になりたいと
それが男の子の夢になりました
今の男の子がその夢を実現出来ているかどうかはわかりません
というお話の終わり
でも―――
【エピローグ】
お兄さんからお金が返ってきて数日後の事
あ、電話
サブさん> もしもし
男の子> ハイ?
サブさん> お兄さんから電話かかって来てさ…
男の子> え?
サブさん> 退職金を全部取られたから、お金が無くて生活が出来ないって言ってるんだよ…
男の子> で、どうするんですか?
サブさん> なんか可哀想だからさ、次の就職先も決まっているらしいし…
男の子> ハイ…
サブさん> 子供もご飯食べれないって言ってるし…、10万だけ貸してあげようと思うんだ
男の子> …
サブさん> でもそれだけじゃ最初の給料貰うまでがキツイという事で、君にも10万ほど借りたいって…
男の子> サブさんも貸すのですよね、それなら僕もお兄さんを信じます
翌日
男の子はサブさんとお兄さんとの待合場所まで出かけた
ハイ、と10万円
お兄さん> ゴメンね、ゴメンね、このお金は絶対に返すから、絶対に返すから
男の子> 就職は決まったのですよね、何の仕事ですか?
お兄さん> パチ屋さんだよ
男の子> えー、どこですか?
お兄さん> サブさんには教えてるけどね、それは内緒
男の子> えー、えー
そして
結論から言うと、その日が男の子がお兄さんを見た最後の日になってしまった
何故自分にだけ働いてるお店を教えてくれなかったのか?
男の子は思った
でもサブさんが知ってるならまぁいっか
男の子は単純だった
お兄さんに再びお金を貸してしまって2ヵ月後くらいだったかな?
お店の事務所で休憩をしてたら電話が鳴った
男の子> ハイ、●●●●●●です
???> もしもし、私、●●の社長ですが―――
男の子は驚いた
だってその名乗った人、男の子がいつも通ってるパチ屋の社長さんだったんだもの
???> 君はそこの責任者かな?
男の子> いえ、違います
???> ちょっと責任者の方と代わって貰っていいかな
男の子> ハイ、少々お待ちくださいませ
インカムでホールにいた主任を召喚
なんか●●の社長さんが主任をお願いしますって電話来てますよー、と
事務所に入って来た主任が社長さんと電話応対
その様子を隣に座って見てた男の子
なんだろ?
他のお店の社長さんが電話してくるとか、普通は無いよねー
あ、電話終わった
主任> あの男があの店で働いてるって知ってた?
男の子> えー
主任> よく行ってるお店だろ?
男の子> でも見た事無いですよ、ホント、見た事無いですよ
その理由は後でサブさんに聞かされた
お兄さんがそのパチ屋で働くとなったその時、店舗希望でM店を希望したそうだ
男の子がよく行くお店はK店、PK店、たまにC店
その事はお兄さんも知っていた
だから男の子が唯一行かない、M店の希望を出したそうだ
男の子はそのグループの常連客
親しい従業員もいる
過去の自分を知っている人間からは離れたかったのだろう
マジメに一からやり直そうとした人間的には
その気持ちを汲んでだと思う、サブさんも男の子に勤めているお店を言わなかったのは
絶対に言わないでと念を押されたそうだ
もしその事を聞かされたら、男の子は多分お店に遊びに行っただろう
例え遊びに行かなくても、親しい従業員にお兄さんの事を話していたかもしれないし
だけど
サブさんは黙ってても、向こうの方から電話が来てしまった
主任> あの男、そこでも金銭トラブルやったらしいぞ…
男の子> え?
主任> あの社長から、あいつは一体どんなヤツだったのかを一から十まで聞かれたわ
男の子> …
主任> もう正直に言ったよ、ここで起きた事を
それから先の事は誰もわからない
その後どうなったのか、どこへ行ったのかも含めて全て
お金は魔物
自分だけではなく、身近な人、また、それに関わった人達全ての人生を狂わせる事もある魔物
金銭トラブルの果ての物語
それから十数年後
男の子> 部長ってココ、もうだいぶ長いんですよね?
営業本部に来ていた男の子は、椅子に座って仕事をしていた部長にそう声をかけた
ふと思い出したのだろう
部長> うん、長いよー
男の子> 今から十数年前、M店にいた●●って人、覚えてますか?
部長> ●●?そんなのいたかな…
男の子> 金銭トラブルなんかが有ったと思うのですけど…
部長> あー、おったおった
男の子> 実はその人、僕が以前勤めていたお店にいた人なのですよ
部長> へー
男の子> ちなみにそのトラブルの時、社長がそのお店に電話かけてきまして、最初に取ったのが僕だったという
部長> そうだったんだな
男の子> まさかその社長の元で働く事になるなんて、その時は全く思わなかったですけど
部長も覚えていた
では、その後の行方も知っているのかな…
男の子> ちなみに●●さん、その後どうなったのでしょうか…
部長> 最終的に社長にお金を貸して下さいって頼みに行ったんだよ
もしかしてアノ電話が有った日
まさにその時の話だったんじゃないのかな―――
部長> でも社長に怒られてお金も借りれず、それでは旅に出ますって言ってその日に退社したって聞いたぞ
男の子> …
今…
どうしてるんだろうな…
――というお話
詐欺師ノ穢レ
終