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「為替コリドー」の可能性

USDの下落を一貫して主張する当ブログですが、QE2が終了した後のドル反発について何度か言及している。

そんな中、これはちょっと覚えておいて欲しい仮想シナリオになる訳ですが、以下「霧掛かるアメリカ 」から。


QE2が終了する事によって、仮にドル高傾向になった場合、通貨安によって引き上げてきたマクロ指標も伸び悩む事が予想される。雇用の「緩やか過ぎる回復」が続く事を考えても、QE3という「破滅の議論」は起こることになるだろう。そうなった時には株価が再点火した後、悪性インフレがその株価すらかき消す事になるかも知れない。

(記事)

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「仮にドル高」というところがポイントになる訳ですが、新たな緩和策がスタートしようがしまいが、それ(QE3)は「破滅に向かった延命政策」にしか成り得ない。


加・経済学者のロバート・マンデル 氏もそのようなシナリオを懸念している1人のようで、彼はQE終了後の(今年後半における)ドル高&リセッションを念頭に置いた上で、「EUR/USDの固定相場制への移行」という奇抜かつ考慮すべき提案をしているようだ。


行き詰るポリシーミックス


一見、マンデル氏のアイデアは非現実的に思える訳ですが、現在の経済政策が行き詰っている 事を考えれば手っ取り早いアイデアかも知れない。財政政策は拡大するとかしないとかで野党の抵抗(演出?)もあり、実行ラグは非常に長く、一方の金融政策は実行ラグは短いものの、効果ラグ(効果を発揮するまでの時間)は遥かに長い。


第一、肝心のFRBは、今現在QE3など念頭に置いてはいない。

なぜなら、昨年から懸念されていた スタグフレーションが今現在明らかに芽生えつつあり、それは先日発表されたインフレ指標でも確認する事ができる。 FRBは今現在、悪性インフレの脅威を感じ取っている事だろう。


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そんなFRB(FOMC)が、今後の見通しを立てる上で、QE3を前提としていない事は4月公表のプロジェクションを見ても明らか。 FOMCは長期的なインフレ見通し(PCE Inflation)で、2011年を「2.1-2.8%」としている。これは2012年、2013年と比較してもかなり上ブレしている訳ですが、QE2がその要因となっていると捉える事ができ、QE3を前提としていない事を裏付けている。彼らが「インフレは一時的」と言っているのはこの為だ。

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先日少しだけ触れた 政策金利のコリドー・システムにしても、経済が回復基調になった時に効果を発揮するものであって、今現在の経済状態にFFレート中心の金融政策が効果を発揮するとは(とても)言い難い。自分が「ブレーキもアクセルも踏み込めない」と言っているのは手の打ちようが無いからだ。



為替レートの「バンド政策」


09年10月下旬にQE1が終了した時、ドルは対ユーロで上昇し、米経済は再び悪化した。

今現在はQE2終了直前ですが、ギリシャ問題が取り沙汰されており、背景としても当時と似通っている。 それを考えても、QE2終了後に懸念されるのは「QE1終了後」と表現する事ができる。


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ポリシーミックスが行き詰った今、マンデル氏は米国と欧州が為替レートで協力すれば良いと言う。EUR/USDに上限と下限を設け、バンドを敷いた上で相場を安定させる事が景気回復に繋がると提言している。これは何より、QE3という破滅のリスク政策を避けるためでもある。彼によると、FRBではなく財務省が責任を持つ事が重要だと言う。それは全くその通りで、流動性の罠にハマっている今、中央銀行にできる事は無きに等しいからだ。

レンジを設定する事は、当然ながら急激な変動を抑える事を意図している。今現在の米国が輸出依存している事を考えると、急激なレート変動は国内の消費に悪影響を及ぼす事になる。言ってしまえば、インフレ・デフレが問題というよりは「急激な物価変動」が問題になるからだ。


実現性は遥かに低いように思える為替のコリドー政策ですが、「行き詰る現状」を考えれば、いずれ議論される事になるかも知れない。