ワタルの独立起業物語(第17話)
ワ「あ、社労士の神野さんだ」
タジン鍋屋の入口には、以前会った社労士のカミノがいた。
カミ「どうも!こんにちは~」
ワ「どうも!紹介します。今回会社を一緒に立ち上げた、吉原リュウジといいます。リュウジ、こちらは、社労士の神野さん。」
リ「はじめまして!」
カミ「はじめまして!もう、会社立ち上げられたんですね~?」
ワ「そうなんですよ、つい先日ね。」
カミ「それはそれは。おめでとうございます!」
ワ「ありがとうございます! そうだ、この間お会いしたとき、「助成金」っていう国からもらえるお金がある、って言ってましたよね?」
カミ「あ、はい!そんなこと話してましたね。ありますよ^^」
リ「え?お金?国からお金がもらえるんスか?それ、ぜひとも教えてください!」
ワタルは、リュウジの「お金」という言葉を聴いたときの反応のすばやさに驚いていた。
ワ(こいつ、おかねへの執着心すごいな。)
カミ「お二人の場合だと…今後、人を雇う時なんかも出てくるかと思うんですけど、その時にも、助成金あるんですよ。」
リ「人を雇ったら、国からお金がもらえるんスか?」
カミ「そうなんですよ。まぁ、誰でもいいっていうわけではないんですけど、たとえば、今年の3月に卒業したけど就職していない人とか、母子家庭のお母さんとか。助成金によったら100万円ほど出るものもあるんです。」
リ「へぇ~!!」
カミ「ただ、色々と条件だったり、順序があるので、“雇おうかなぁ”と考えたとき一声かけていただけたら、またいつでもお教えしますんで!」
リ「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
カミノは、待ち合わせていた堀北マイという行政書士の友人がきたから、と別のテーブルに行った。
リ「ワタルさん、さっきの助成金の話、いいっすね。俺、去年卒業したけどプータローのやつ、知ってますよ。そいつ雇って、助成金もらいましょうよ。」
ワ「おいおい、いきなり人を雇うなんて、無茶なこと言うなよ」
リ「ワタルさん、何固いこと言ってんスか。お金もらえるんならいいじゃないっすか~!上手くやればいいんですよ、うまく♪ よし、早速声かけてみよ!」
リュウジは早くも心に決めたようだった。
ワタルは、そのスピードについていけていない自分がいることに気づいていた。
登記のときもそうだった。ペペニーニョ・カフェとの契約書の件もそう。
ワ(なんか、リュウジのペースに巻き込まれてるな・・・)
しかし、ワタルはこうも思っていた。
ワ(きっと、自分一人でやっていたら、この短い期間で、ここまでの状況に持ってくることは到底無理だ。)
ある意味、リュウジには感謝していたのだ。
ただひとつ、漠然とだが、心の片隅にもやもやがあることを除いては・・・。
いいのかなぁ~このまま進んで…。
いや、いいんだよなぁ、きっと…。
大好きなAKB48の「会いたかった!」がかかり、上機嫌で口ずさんでるリュウジを見ながら、ワタルはそんなことを考えていた。