『 山 の 職 人 ( 続 ・ 石 の 花 ) 』



前回までのお話し  「山の職人 1」  「山の職人 2」  「山の職人 3」  「山の職人 4」
「山の職人 5」  「山の職人 6」





『それじゃこれは、ダニーロの作品がまだ残っていたのだな。』



と、店の主人が聞き、



『いいえ、違うわ。

 それは私が作った物よ。』



と、カーチャは言いましたが、



『そうなのかい?

 じゃぁ、まだ石が残っていたんだね?』



と主人が言うと、



『石だって、私が自分で鉱山から採って来たんだわ。』



と、カーチャは答えました。

しかし店の主人は、それを本気にはしないようでした。

ただ、細工が見事だったので、値切りはせず、

カーチャが言った値段を支払うと、



『これからも、もしこんな物を作れたら持っておいで。

 必ず受け取るよ。

 値段も、ちゃんとした金額を支払うからな。』



と言ったのでした。



 カーチャは、こんなにたくさんお金を貰ったわと、

喜んで家に帰りました。

お店の主人は、カーチャの飾り板を

ガラスのケースの中に並べました。

すると買い手が、わっと集まって来て、



『これは、いくらだね?』



と、聞いてきたのです。



 店の主人は、図太い奴だったので、

カーチャから買い取った、10倍の値を付けたのでした。

それから主人は、いけしゃあしゃあと、



『こんな立派な模様は、まだ見た事が無いですよ。

 「くさはら村」のダニーロ親方の仕事です。

 あの人の右に出る職人なんていませんからね。』



と、声を張って行ったのでした。



 カーチャは家に戻って来ると、

自分でも驚いてしまいました。



(なんてことなんでしょう。

 誰のよりも、私の飾り板が立派だなんて。

 良い石に巡り当ったからだわ。

 私にも、幸せがやって来たんだわ。)



それから、ハッとして・・・



(もしかしたら、ダニーロが私に、

 何かメッセージをよこしたのかしら?)



 そう考えると、カーチャは飛ぶように、

再び、蛇山へと行ったのでした。



 町の商人の前で、カーチャを辱めようとした、

あのクジャク石細工の職人の親方も、

家に戻って来ていました。

この男には、あんなに珍しい模様の石を、

カーチャが見つたことが、羨ましくて仕方なかったのです。

そこで



(どこであの娘が石を採るのか、見付けてやる。

 あの娘にプロコピッチか、ダニーロ

 他の誰も知らない石のありかを、

 きっと教えたのに、違いないんだ!)



と、考えたのです。



 カーチャがどこかへ出かけて行くのを見ると、

この男は、カーチャの後を付けて行きました。

男が見ると、カーチャグミョーシキ銅山を回って、

どこか蛇山の後ろ側に向って歩いていくようです。

そこでこの男も、そっちへ行きながら、



(あそこは森だぞ?

 森に沿って行って、石のありかを突きとめてやる。)



と、心の中で考えました。



 やがて2人とも、森に入って行ったのです。

カーチャは、男の直ぐ近くに居たのですが、

ちっとも警戒しておらず、

振り返りもしなければ、聞き耳を立てることもしません。

後を付けてきた親方は、

こんなに簡単に、石のありかにやって来られて、

ほくそ笑んでおりました。

しかし突然、脇の方で、ゴーッと言う音がしたのです。

余りに轟音なので、この男は驚いてしまいました。

男は立ち止まり、辺りを見渡している間に、

カーチャの姿が突然、消えてしまったのです。

男は、森中を駆け回って、カーチャを探しました。

やっとのことで、グミョーシキ銅山から2キロほど離れた、

セーヴェルスキー池に辿り着き、

森から出られることが出来たのです。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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