『 山 の 職 人 ( 続 ・ 石 の 花 ) 』



前回までのお話し  「山の職人 1」  「山の職人 2」  「山の職人 3」  「山の職人 4」
「山の職人 5」





 するとその場に、カーチャと同じ「くさはら村」に住む、

職人の親方が、1人居合わせており、

この男が、店の主人に小声で言いました。



『この娘は、頭がおかしいんだよ。

 この娘が仕事台に座っているのを、

 近所の者たちが、見ているんだぜ。

 さぞ、ご立派な細工物を作って来たのだろうよ。』



 それを聞いた店の主人は、



『どれどれ、一つ見せてごらんよ。

 どんなに立派な物を持ってきたって言うんだい?』



と、カーチャの品物を出すように言いました。


 そこでカーチャは、飾り板を一枚、主人に渡しました。

主人は、ちょっと見てから、カーチャを見つめ、



『どこから盗んできた?』



と、言ったのです。



 カーチャは、むっとして怒り出しました。

そこで先ほどまでとは、打って変わって、



『あんた! どんな権限があって、

 人を知りもしないでそんな事を言うの?

 盲目じゃ無いのなら、ほらちゃんと見なさい!

 同じ模様の飾り板を、私はこんなに沢山持ってきているんだよ。

 一体誰の所から盗めるって言うの?

 さあ、私が誰の所から盗んだか、言ってごらんなさいよ!』



 カーチャは、台の上に、持ってきた板を全部置きました。

店の主人も、そこに居た全ての人たちも、

カーチャの飾り板を見ると、

なるほど、カーチャの言う通り、全て同じ模様なのです。

それも稀に見る立派な模様なのです。

飾り板の真ん中から、まるで木が伸びていて、

枝と言う枝に、小鳥が止まっているように見える模様なのです。

模様は、くっきりとしている上に、仕上げもとても綺麗です。



 店に居た客たちも、このやり取りを聞いていました。

どれどれ、どんな品物だろうと、

皆、主人とカーチャの傍に寄ってきました。

ところが主人は、カーチャの持ってきた飾り板を

直ぐに、隠してしまったのです。

そして上手い言い訳をしたのです。



『こう飾り板が重なっていたら、良く見えませんからね。

 今、ガラスのケースの中に並べますよ。

 それから好きな物を選んでいってくださいな。』



と言って、カーチャにはこう命じました。



『あのドアの向こうにお行き、すぐにお金をあげるから。』



カーチャは、言われた方へ歩きました。

そのすぐ後ろを、主人が付いて来て、

ドアを閉めると、



『いくらで売ってくれるかい?』



と、尋ねてきました。



 カーチャプロコピッチ親方から、

値段を聞いていたので、その値段を言いました。

すると主人は、はっはっはっと、笑い出したのです。



『なんだって?

 お前は、何て法外な値段を言いだすんだ!

 そんな値段で、わしが買い取ったのは、

 プロコピッチ親方ただ1人だけさ。

 そうだ、それにもう1人いたな。

 その養子のダニーロも居たよ。

 何しろ、この2人は名人だったからな。』



『私は、その2人から品物の値段を聞いて来たのよ。

 私も、その家族ですからね。』



と、カーチャは答えました。



『そうなのか?』



主人は驚きました。



~本日は、これにて~




ここまで読んでくださって、誠にありがとでしたぁ。

おしまいっ。
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