2:可塑剤・難燃剤等による室内空気汚染の実態とその曝露量評価 | 化学物質過敏症 runのブログ

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3) ビスフェノールA8,16)
ビスフェノールA(Bisphenol A:BPA)は主にポリカーボネート樹脂,エポキシ樹脂の原料として使用されている.
近年,BPAが女性ホルモン様作用を有することが明らかとなり25)、食生活に関連する曝露経路として,ポリカーボネート製の食器,哺乳ビン,缶コーティング面等からの溶出が問題となっている26).
調査の結果,BPAは室内空気及び外気の両方から検出された.室内空気中濃度の中央値は,住宅:0.35 ng/m3,オフィスビル:1.0 ng/m3であり,外気濃度の中央値は定量下限値未満(0.3 ng/m3)であった.最大値はオフィスビルで検出された(8.1 ng/m3).
4) アルキルフェノール類12)
アルキルフェノール類の一種である4-ノニルフェノール(4-n- Nonylphenol:4-NP)は,主な用途が界面活性剤原料であるが,それ以外にプラスチックの酸化防止剤及び安定剤等の原料,あるいはそれ自身が酸化防止剤として使用される.

そのため,室内では壁紙や床シートに含有されており12),揮発あるいは粉塵への吸着により徐々に室内空気中に放散される.
調査の結果,調査対象7物質のうち室内からは4-t-ブチルフェノール(4-tert-Butylphenol:4-t-BP),4-t-オクチルフェノール(4-tert- Octylphenol:4-t-OP)及び4-NPの3物質が検出された.4-n-ペンチルフェノール,4-n-ヘキシルフェノール,4-n-ヘプチルフェノール及び4-n-オクチルフェノールは検出されなかった.

室内で中央値が高かったのは,住宅,オフィスビルともに4-NPで,住宅:47.5 ng/m3,オフィスビル:58.8 ng/m3であった.

また,最大値が最も高かったのも4-NPであった(住宅:680 ng/m3、オフィスビル:555ng/m3).外気はいずれの物質も中央値は定量下限値未満(0.15 ~ 4.5 ng/m3)であった.
5) 臭素系難燃剤13)
臭素系難燃剤は,主にプラスチック製品や繊維製品の難燃剤に使用されている.

臭素系難燃剤のうち,ペンタブロモジフェニルエーテルを代表とする臭素化ジフェニルエーテル類については,内分泌かく乱作用27)や人体への蓄積が報告されている28).

しかし、国内では難燃剤協会が1990年代の初めにペンタブロモジフェニルエーテルの使用自粛を決定したため29)これまでの国内での使用量は少なく,この現状を反映して,母乳調査で検出された日本人の臭素化ジフェニルエーテルの総量は1.4 ng/g 29)と,アメリカの72ng/g30)に比べて約1/50の数値である.
調査の結果,調査対象14物質のうち室内から9物質が検出された.テトラブロモビスフェノールA(Tetrabromo -bisphenol A:TBBPA),2, 2’,4 ,4’,5 ,5’-ヘキサブロモジフェニルエーテル(2,2’,4,4’,5,5’- Hexabromo-diphenyl Ether :BDE- 153),2, 2’,4, 4’,5, 6’-ヘキサブロモジフェニルエーテル(2,2’,4,4’,5,6’- Hexabromodiphenyl Ether:BDE-154),2,2’,3, 4, 4’,5, 6’-ヘプタブロモジフェニルエーテル(2, 2’, 3, 4,4’,5’,6- Heptabromodiphenyl Ether :BDE-183)及びデカブロモジフェニルエーテル(Decabromo-diphenyl Ether :BDE209)の5物質は検出されなかった.室内で中央値が高かったのは,住宅では2, 2’,4, 4’-テトラブロモジフェニルエーテル(2, 2’,4, 4’-Tetrabromodipfenyl Ether:BDE-47):0.48 ng/m3であった.

また,オフィスビルでは,いずれの物質も検出率が50%未満であったため,中央値を用いた比較はできなかった.

最も濃度が高かったのはオフィスビルにおけるヘキサブロモシクロドデカン(Hexabromocyclododecane:HBCD):29.5 ng/m3であった.
6) 有機リン系殺虫剤7,11)
有機リン系殺虫剤は,主としてコリンエステラーゼ阻害作用により効果を発揮する農薬である.これらは農業用以外にも,街路樹や公園樹木の保護,住宅のシロアリ駆除,ガーデニングでの虫除け及び室内での殺虫を目的として使用されている.

有機リン系殺虫剤のクロルピリホスについては,シロアリ駆除剤として多用されてきたが,2003年の建築基準法改正により,住宅への使用が禁止になった.調査の結果,調査対象9物質のうち室内空気からは,ジクロルボス,ダイアジノン,クロルピリホス及びフェニトロチオンの4物質が検出され,外気からは,ジクロルボス,ダイアジノン及びフェニトロチオンの3物質が検出された.中央値が高かったのは室内空気,外気ともにジクロルボスであった(住宅:1.4 ng/m3,オフィスビル:4.0 ng/m3,外気:3.1 ng/m3).

また,オフィスビルのジクロルボス及びフェニトロチオンについては,最大値がそれぞれ130 ng/m3,1,480 ng/m3と,他の建物に比べて高値を示すケースがみられた.

厚生労働省から室内空気中濃度の指針値が示されているクロルピリホス(指針値:1 µg/m3,ただし小児の場合は0.1 µg/m3)及びダイアジノン(指針値:0.29 µg/m3)については,指針値を越える濃度は検出されなかった。