可塑剤・難燃剤等による室内空気汚染の実態とその曝露量評価 | 化学物質過敏症 runのブログ

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結果及び考察
1. 実態調査結果
 調査対象60物質のうち,住宅,オフィスビルの室内空気中からは40物質が検出され,外気からは23物質が検出された.

室内で検出されたSVOC40物質の室内濃度及び外気濃度の最大値,最小値,中央値をTable 1に示す.以下に物質群ごとの結果概要を示す.
1) フタル酸エステル類6,10)
フタル酸エステル類は可塑剤として主にプラスチック製品に使用されており,室内では壁紙や床シートに含有されていることが多い.

フタル酸エステル類のうち,フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(Di-2-ethylhexyl Phthalate:DEHP)は,油脂食品の容器包装や乳幼児のおもちゃへの使用が禁止されているが18),建材においては使用禁止の措置はとられていない.
調査の結果,調査対象10物質のうち室内からは8物質が検出され,中央値が高かったのは,フタル酸ジ-n-ブチル(Di-n-butyl Phthalate:DnBP)(住宅471 ng/m3,オフィスビル684 ng/m3 ,外気27.2 ng/m3)及びDEHP(住宅308 ng/m3,オフィスビル257 ng/m3,外気59.4 ng /m3)であった.

またフタル酸ジメチル(Dimethyl Phthalate:DMP),DnBP及びDEHPの3物質では,最大値がほぼマイクログラムオーダーに達していた(順に住宅6.3 µg/m3,7.2 µg/m3,2.4 µg/m3,オフィスビル2.6 µg/m3,4.7 µg/m3,0.83 µg/m3).DnBP及びDEHPについては,厚生労働省から室内濃度の指針値が示されているが(DnBP:220 µg/m3,DEHP:120 µg/m3),この指針値を超える濃度は検出されなかった.

フタル酸ジイソプロピル(Diisopropyl Phthalate:DiPP)及びフタル酸ジ-nプロピル(Di-n-propyl Phthalate:DnPP)は検出されなかった.

2) リン酸エステル類7,9)
リン酸エステル類は,繊維製品の難燃剤,プラスチック製品の難燃剤及び可塑剤として使用され,家庭電化製品やOA機器にも含有されている19).

有機リン系殺虫剤がコリンエステラーゼ阻害による神経毒性を有することはよく知られているが,リン酸エステル類の中にも同様の毒性20,21),及び遅発性の神経毒性を示す物質があり22,23),マウスに多動性を引き起こす事例も報告されている24).
調査の結果,調査対象11物質のうち室内からは10物質が検出された.

リン酸トリス(2-エチルヘキシル)(Tris(2-ethylhexyl)phosphate :TEHP)は検出されなかった.
中央値が高かったのは,住宅でリン酸トリブチル(Tributylphosphate:TBP)(7.1 ng/m3),オフィスビルではリン酸トリス(2-クロロイソプロピル)(Tris(2-chloroisopropyl)phosphate:TCIPP)(14.9 ng/m3)及びTBP(11.7 ng/m3)であった.

外気ではTCIPPの中央値(2.0 ng/m3)が高かった.

またTCIPPについては,住宅での最大値が14µg/m3と,他の建物に比べて非常に高値を示すケースがみられた.