-2:厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・慢性疲労症候群(CFS)診断基準(平成25年3月改訂)の解説

  平成24年度厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野))「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及 」研究班1)(以下「H24年度CFS研究班」という)において、平成23年度に作成された日本における「慢性疲労症候群(CFS)の診断基準」2)の改定が行われた。以下に、その診断基準改定の背景、考案を含めて全文を記す。

H24年度CFS研究班 代表研究者 倉恒弘彦
班員: 谷畑健生、福田早苗、稲葉雅章、野島順三、近藤一博、伴信太郎、下村登規夫、久保千春、松本美富士、山野嘉久


診断基準改定の背景

  CFSは、原因が明らかでない激しい慢性的な疲労を訴える患者の病因・病態の解明を目的に1988年に米国疾病対策センター(CDC)により作成された疾病概念である3)。 

  日本においては、1991年に厚生省特別研究事業「本邦におけるchronic fatigue syndromeの実態調査ならびに病因・病態に関する研究」(班長:木谷照夫)が発足し、CDCより発表されたCFSのworking case definitionを元にCFS診断基準(試案)4)が作成されている。

それまでは病態の定義が曖昧で、除外診断の範囲も各診療者の個人的な恣意に任されていたCFSの診断が、このCFS診断基準の作成により一定の枠組みが明確になり、その後の日本におけるCFS診療や臨床研究の礎として活用されてきた。

  しかし、諸外国に目を向けてみると2003年にはCFSの病因・病態の解明に向けて層別解析の必要性を認めたCDC診断基準5)が発表され、2011年にはCFSと類似病態と考えられているMyalgic encephalomyelitis(ME)の国際診断基準6)が発表されるなど、日常診療や臨床研究における診断基準の見直し作業が進められている。

残念ながら、未だCFSには共通した明確な病因に結びつく検査異常が見出されていないことより、いずれの診断基準も患者の症状を元にした操作的な診断法にとどまっており、また疲労による生活の障害の程度の認定と疲労をきたす病態の除外診断から成り立っていることより、CFSという病態の存在に懐疑的、否定的な意見も多くみられる。


 我々は、慢性的な激しい疲労で苦しむ多くの患者が診療を受ける施設を探すのにも苦慮している現状に配慮し、プライマリケアを担っている医師が慢性的な疲労を訴える患者を診療する際の診断手順を分かりやすく示した診断指針を取りまとめ、日本疲労学会シンポジウム「慢性疲労症候群診断基準 改定に向けて」(2007年6月30日)の中で「新たな慢性疲労症候群診断指針」として発表してきた7)。


 当初、この診断基準の中には疲労を客観的に評価できるような検査所見を取り入れる予定であったが、文献的な解析ではCFS診断基準に客観的なマーカーとして取り入れることのできるような検査所見は感度と特異度の観点から確認することはできなかった。

そこで、学会の方針として、今後の日本におけるCFS診療においては日本疲労学会の「慢性疲労症候群診断指針」を推奨するが、数年をかけてCFS診療に携わっている日本各地の施設が協力して共通の検査方法で検証し、最終的には日本疲労学会の「慢性疲労症候群診断指針」にいくつかの客観的な疲労マーカーを取り入れたCFS診断基準を作成することが決められた。


 平成21年度から3年間行われた障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)「自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成」(代表研究者:倉恒弘彦)2)(以下「H21-23年度CFS研究班」という)はこの考えのもとに行われたものである。

上記班研究成果は、平成24年3月に客観的な指標を取り入れた「慢性疲労症候群(CFS)診断基準」として発表され、H24年度CFS研究班により疲労診療を担っている医師がより活用可能な診断基準として一部改定が行われた1)。


慢性疲労症候群(CFS)診断基準(平成25年3月一部改訂)1)

  6か月以上持続ないし再発を繰り返す慢性的な疲労を主訴とした患者を診察する場合、表1に示す慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準を用いた診断を実施し、前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、を満たしたときCFSと診断する。

前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合は、特発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察する。


 CFSと診断された患者に対して、感染症後の発病が明らかな場合は感染後CFSと診断する。

気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、線維筋痛症などの併存疾患との関連については併存疾患の発症時期により、A群(併存疾患をもたないCFS)、B群(経過中に併存疾患をもつCFS)、C群(発病と同時に併存疾患をもつCFS)、D群(発病前から併存疾患をもつCFS)の4群に分類する。


 さらに、疲労病態の客観的な評価を行うために表2に示されている客観的疲労評価によるCFSのレベル診断を行い、補助的検査レベル評価を0~4の5段階で実施することが望ましい。