厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです


・出典:厚労省HP
http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/index.html#hyou1


・正式名称:厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野)「慢性疲労症候群の実態調査と客観的診断法の検証と普及」研究班
平成24年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野) 平成23年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(神経・筋疾患分野) 平成22年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野) 平成21年度厚生労働科学研究(こころの健康科学研究事業)報告書 平成21~23年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野)


平成25-27年度(3年間)厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)(神経・筋疾患分野)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班(代表研究者 倉恒弘彦)発足のお知らせ

目的:
1)慢性疲労症候群(CFS)患者に対して、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)検査を実施し、脳内の異常の存在が明らかな患者における末梢血中等のバイオマーカーを探索する。
2)マルチオミックス解析(メタボローム、プロテオーム、トランスクリプトーム、ゲノム)、ウイルス免疫学的測定、酸化ストレス・代謝機能測定等によりCFSに特化したバイオマーカーを網羅的に探索する。さらに、統計手法を用いてCFSのグループ化も行う。

平成25年度~のCFS研究



御挨拶


厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業)「慢性疲労症候群の病因病態の解明と画期的診断・治療法の開発」研究班

代表研究者  倉恒 弘彦 
関西福祉科学大学 教授 
大阪市立大学 客員教授  
東京大学 特任教授    

 慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)とは、これまで健康に生活していた人がある日突然原因不明の激しい全身倦怠感に襲われ、それ以降強度の疲労感と共に、微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感や、思考力の障害、抑うつ等の精神神経症状などが長期にわたって続くため、健全な社会生活が送れなくなるという病気です。

1988年、米国疾病対策センター(CDC)よりCFSの報告が行われて以降、アメリカだけでなくカナダ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、オーストラリアなど世界中の国々においてCFS症例の存在が報告され、その病因・病態の解明や診断、治療法の開発が進められています。

  我が国におきましても、1991年より旧厚生省にCFS研究班(主任研究者:木谷照夫)が発足し、6年間(1991年4月~1997年3月)に渡って病因・病態の解明、治療法の開発に向けた臨床研究が行われています。

1999年、「疲労の実態調査と健康づくりのための疲労回復手法に関する研究」の中で慢性疲労の実態調査(対象:一般住民4,000名、有効回答者3,015名(75.4%))を行いましたところ、国民の35.6%が慢性的な疲労を自覚しており、生活に何らかの支障をきたしている方が約5.2%存在することが明らかになりました。

なかでも重篤な慢性疲労状態であるCFSの診断基準を満たす方も0.3%確認されていまして、この数字を単純に現在の日本人口1億2千万人に当てはめてみますと、我が国ではCFS患者は実に約36万も存在することとなります。


  2012年、13年ぶりに同一地区の疫学調査(対象:一般住民2,000名、有効回答者1,149名(57.5%))を行った結果でも、6か月以上の慢性的な疲労を自覚している方が38.7%おられ、全身倦怠感のため月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要であると答えた方が2.1%認められました。さらに、2012年に改定したCFS臨床診断基準を満たす方が0.1%、1999年のCFS診断基準を満たす可能性がある方が0.2%認められており、CFSは21世紀の社会において対応すべき疾病の1つであることは間違いありません。


  しかし、日本を含めて世界中で用いられてきたCFS診断基準は問診票を用いた症状診断と臨床検査による除外診断を組み合わせたもので、保険診療で認められている一般臨床検査には異常が認められませんので、CFS患者が医療機関を受診しても十分な対応を受けることが難しい状況にあります。その上、現在診療上用いられているCFSという病名は疲労が単に長く続いていることを示すような印象を与えるため、誰もが日常生活において自覚している疲れを強く訴えているに過ぎないと思われがちであり、誤解や偏見を受ける要因の1つとなっています。

  ここで重要なことは、CFSは決して詐病のような病態ではないことが判明していることです。

CFS患者の病因・病態には脳機能異常が深くかかわっており、特に重症のCFS患者では中脳や視床における炎症が存在することがポジトロンCT(PET)などの特殊検査装置を用いた検査で分かってきました(2011年度報告書)。

この脳における炎症は、通常の頭部CT検査やMRI検査ではみつけることができません。

また、種々の免疫機能、自律神経機能、睡眠覚醒リズム、酸化ストレス、内分泌系評価、ウイルス学的検査などの成績においても多くの異常がみられており、CFSは決して自覚している疲れを強く訴えているような病態ではないことが確認されています。

  我々は、日本におけるCFS患者の実態を明らかにするために、2012年度にCFS診療を行っている医療機関の協力を得てCFS患者470名(平均年齢:40.8±10.5歳、男性161名、女性309名)の調査を行いましたところ、日常生活のかなり多くの部分が疾患により阻害されている実態が明らかになってきました。

CFSに対する治療を受けていても回復がみられない患者が半数近くおられ、PS7(身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である)以上の状態が続いている患者も1/4近く認められています。

このような重症のCFS患者の多くは、家族の支えにより何とか生活をしているのが実態であり、最低限の国民生活を営むためには社会的な支援が必要であると思われます。

  2012年度の班研究ではCFS診断基準についても検討を行い、より簡便に疲労診療において活用できるようにCFS臨床診断基準とCFS診断における補助的検査(客観的疲労評価)を表にまとめ、さらにCFS診断に必要な最低限の臨床検査と除外すべき主な器質的疾患・病態を別表として明示しました。また、2012年3月に発表されたCFS診断基準では「PSによる疲労・倦怠の程度」評価が削除されていましたが、平成24年度の検討によりCFS患者と他の不定愁訴を訴える患者や健常者との鑑別において有用であることが確認されたため、PSによる疲労・倦怠の程度評価(別表)を追加しています。


  今後の喫緊の課題としては、①全国各地においてCFS患者を診療してくれる医療体制を整えること、②軽作業もできずに日常生活において困窮している重症のCFS患者に対しては公的な扶助制度を利用できるようにすること、③治療に反応して回復がみられるCFS患者に対しては、内科医、精神科医、心理士の連携医療と共に、社会への復帰に向けたリハビリテーション、作業療法、理学療法などの支援体制を整えることなどがあり、実現に向けて取り組む必要があります。

  年度ごとの班研究成果の詳細につきましては、このウェブサイト上の「班研究報告書」に記載されていますので、ご参照頂けると幸いです。