IX Nikkor 30-60mm F4-5.6を改造 | Photograph to Life ~生活に写真を~

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6年ほど前にオークションで店に入れたAPSフィルムの一眼レフ、「Nikon PRONEA S」用の「IX Nikkor 30-60mm F4-5.6」をD50やD700で使えるように改造してみた。

・Nikon PRONEA S

PRONEA Sは、写真で見ると分かるように引っかかりの無いデザインのコンパクト一眼レフで、当時のキャッチコピーは「womans Nikon」だった。
実際、使ってみると分かるけれど「軽量コンパクト」でバッグに入れて持ち歩くのにも邪魔にならない感じ。正直な所、D3000番台はこのデザインで出して欲しいくらいです。

ですが、現在はAPSフィルム自体が手に入らないので事実上「文鎮」状態。PRONEA Sに合わせてデザインされている「IX Nikkor 30-60mm F4-5.6」も基本的にはPRONEAシリーズ専用です。

・IX Nikkor 30-60mm F4-5.6

写真を見ても分かるように、このレンズは絞り環の無いいわゆる「Gタイプレンズ」になります。さらに、ピントリングも無いので事実上の「AF専用レンズ」となります。

・マウント側に大きな張り出し

IX Nikkorの特徴として、後玉部分に大きな張り出しがあります。この張り出しが有る為に35mmフィルムのAF一眼レフやデジタル一眼レフには物理的に取付け不可能です。

・CPUのフレキ回路が収まる

この張り出している部分の中には「CPUと回路」が納められています。つまり、単なる突起では無いのです。
CPUの載せてあるフレキは金属板で支えられていて、そのままでは内部に押しこむのは不可能です。

このレンズを改造した記事としては、2012年にデジカメウォッチに改造した本品を使ってみる記事が掲載されています。
APSフィルムカメラ専用「IXニッコール」をフルサイズ機に装着

また、Googleで「IX Nikkor改造」で検索するといくつかの改造例もヒットします。検索でヒットした改造例では、ほとんどが「フレキ除去」「絞り固定」と言う改造で、AFは使えませんし、ピント合わせ用にフードを付ける必要が有ったりで実用には程遠い物となります。
また、AFと絞り制御が可能な改造例も焦点距離が「30mm固定」などズームレンズのメリットを生かせない物となっています。確かに、30mmと言う画角は魅力的ですが、元々がズームレンズなので「広角側を多少犠牲」にしてもズームできた方が使い勝手が良い。
そこで、ズームを活かす改造が出来ないかを検討してみました。

・マウントを取り外し

マウントを取り外すと、CPUとの通信用接点部も一緒に外れます。本当は接点部分をマウントから外した方が作業しやすいのですが、接点やバネの紛失を防ぐ意味もあってマウントに取付けたまま作業しました。

フレキはステンレスらしい金属板に両面テープの様な物で貼り付けられています。最初、この金属板ごと押し込んだらどうなるかと試した所、ズームの範囲が40mmから60mm位になりました。ですが、どうにも収まりが悪い感じなので金属板を外す方向で検討開始。

・除去した金属板

かなり強力な両面テープで貼り付けられていましたが、少しずつこじりながら剥がして金属板を除去。コレは不要品なので処分です。

・金属板を除去したフレキ

フレキとは「フレキシブル基板」の事で、写真用のネガフィルムに電子部品を実装したようなものです。フィルムなので柔軟性があり、狭い所に押し込んだりするような回路によく使われています。柔軟性がある分、断線しやすいので取り扱いには注意が必要です。また、熱に弱いので素人では電子部品をハンダ付けするのは困難です。

このフレキを何とかして動かないように固定しないといけないのですが、鏡胴内部は意外と動く部品が多い。回転する部分には固定できないのでこていいちの決定は重要です。
そんな中で、後玉部分は前後動はするものの回転しない事に気が付きました。この部分に「巻きつけるように」固定すればなんとかなるのではと考えました。

・フレキの折り返しを変更

黒い四角のチップがCPUなのですが、そこから伸びているフレキの折り返しを逆にします。この時、丁寧にやらないと「断線してガラクタ」となるので慎重に進めていきます。

・微調整しながら固定

貼り付け直すための両面テープは「アクリルフォーム両面テープ」を使用しました。粘着力の割に比較的剥がしやすいのでこういった作業をする時には便利です。

出来るだけフレキを押し込んでいき、それでいて絞りの連動レバーの動きに干渉しない固定方法を試行錯誤します。
この時点でD700に装着して、ミラーが干渉するギリギリを探りました。その結果、概ね35mm付近から60mmまではミラーが干渉しない状態まで持っていけました。

このままの状態でも問題は無いのですが、フレキがあまりにも剥き出しすぎるので取り外してある部品を加工して取り付けることにしました。

・突起部分を切除

プラカッターとニッパーで飛び出している部分をカット。切断面をヤスリで磨いてバリ取り。開口部は大きいですが、その分フレキの微調整はやりやすくなっています。

・マウント部組付け完了

フレキの後端が接点の部分より飛び出さなければミラーと干渉することはありません。そこで、ズームの範囲も制限してしまうことにしました。

・35mm位置

・60mm位置

写真を撮ってないのですが、鏡胴内部のズーミングで使われるリングに樹脂のチップを接着剤で取付けて35mmより広角側にズーム出来ないようにしてあります。相当に力いっぱいズーミングしない限りチップが外れる心配もなさそうです。

・D700に取り付けてみる

先端に向かって若干すぼまっているので似合うか不安でしたが、意外とD700に似合います。ブラックのボディにシルバーの鏡胴と言うのも意外といい感じですね。

・パンケーキズームレンズ

現状でフィルターやプロテクターを付けていないのですが、この状態でMCプロテクターを付けた「ULTRON 40mm F2 SLII」と同じくらいの全長です。AF専用ですが、「パンケーキズームレンズ」と呼んでも良いくらいにコンパクト。

・スナップショットズーム

COSINA製のレンジファインダー用レンズに「SNAPSHOT SKOPAR」と言うのが有るけれど、このレンズはさしずめ「スナップショットスーム」とでも呼ぶべきかもしれない。

D700の様なフルサイズ機では35-60mmの、DX機ならば52.5-90mmのズームになる。広角側が若干不満だけれど、DX機でも標準から中望遠をカバーすると言う意味では便利だと思う。

仮に、CPUを小型にしてフレキ自体を交換してくれるサービスが有れば利用したいくらいだが、思いの外売れていないのでそう言ったサービスを期待するのは無理があるかもしれない。