廣野由美子『批評理論入門』 | 文学どうでしょう

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批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)/廣野 由美子

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廣野由美子『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)を読みました。

少しずつ文学理論の本や、本について書かれた本なんかも読んでいこうと思っていますが、興味のない方は読み飛ばしちゃってください。基本的には小説の紹介に差し障りのない範囲でやっていこうと思います。小説の方は毎日紹介するようにしています。

ぼくの中でなぜか、毎日ブログを更新すること、しかも小説の紹介をすること、というルールがいつの間にかできていて、たまに途絶えたりもしますが、なんだかんだわりと毎日更新できてたりします。

それはまあいいんですが、みなさん聞いてくださいよ。このブログの更新は1冊1記事でなく、1タイトル1記事なんです。今は通勤でドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を順調に読んでますが、5冊あっても1記事なんですよ! つまりこの5冊を読んでいる間は、他のなにかで埋めないといけないわけです。これが大変なんです。いや単なる愚痴なんで大丈夫です。逆にモチベーションになってよいです。

いきなり脱線してしまいました。どうも小説の紹介じゃない時は、毎回気を抜いちゃいますね(笑)。

さてさて、この『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』は文学理論について分かりやすく書かれた新書で、『フランケンシュタイン』を様々な理論、様々な方向から分析しています。

フランケンシュタイン』を読んでいなくても引用が沢山あるので大丈夫ですが、当然ネタバレというか、物語の全体が扱われてしまっているわけで、『フランケンシュタイン』はわりと面白いので、できればそちらを先に読むことをおすすめします。

この本はなかなかよいです。T.イーグルトンの『新版 文学とは何か』よりも分かりやすいですし、全くの素人でも入っていけます。単なる理論が抽象的に扱われているわけではなく、具体的に文章が引用してあるので、すっと理解できます。文学理論に興味のある方はぜひ手にとってみてください。

この本の中でぼくが気になった文学理論について少し触れます。

文学理論を使うということは、かなり文学用語に敏感になるということを意味します。つまり、ぼくらが漠然と使っている用語を、きっちり厳密に定義づけしていく、あるいは新たな意味をそこにのせていくということがあるわけです。

まずおっと思ったのは、「ストーリー story」と「プロット plot」の違い。ぼくも同じように使っていました。ええと簡単に言うとですね、「ストーリー」は出来事を起こった順に並べたもので、「プロット」は、物語が語られる順番ですね。

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、つまり小説においては、物語の時系列がばらばらになって書かれることがあるわけです。現在から過去を回想したりしますよね。その場合、「ストーリー」は、過去から現在の順で書いたもので、「プロット」は物語が書かれた順なので、現在から過去の順になります。

語り手、焦点化、異化、メタフィションなどの用語についても分かりやすく書かれています。この辺りはまたどこかで扱うと思うので、今回はパスします。

それから次におっと思ったのは、「間テクスト性 intertextuality」という用語です。ぼくも意識せずにその内容のことは書いていました。つまり、『フランケンシュタイン』の中で、創造主と創造される関係が、ミルトンの『失楽園』の神とアダムの関係に重なるように、別の小説の影響を受けること、その関係を「間テクスト性 intertextuality」というらしいです。ふむふむ。

前半の方がぼくにとっては面白くて、こうした小説を読む時に知っていたら楽しいであろう文学用語や文学理論について書かれています。こちらが「小説技法篇」です。

後半は、「批評理論篇」という題で、少し小説を離れて、精神分析批評、ジェンダー批評、マルクス主義批評など批評の歴史のようなもの、あるいは作品自体を離れた読みについて書かれています。こちらに関してはぼくがあまり興味がないということもありますし、うまくまとめられそうにもないので、興味のある方は実際に読んでみてください。

このブログで文学理論的なページを作ろうと思って、いま模索中です。正確に言うと、文学理論のことを書いたページというよりは、単にぼくがよく使っていて、毎回説明するのがめんどい用語をそちらでまとめて、詳しく知りたい人だけリンクで飛べるようにしようという計画です。

たとえば、額縁小説だとか、3人称だとか、メタフィションだとか、そういった用語に関してのページです。

とりあえずは暫定的に作っておいて、あとからどんどん足していこうと思ってます。まあちょっと色々やってみます。

T.イーグルトンの『新版 文学とは何か』も読み終わっているので、近々紹介できると思いますが、あまり文学理論の話が続いて難しいブログだと思われることがなにより怖いので、また後日にします。

ピグなんかで、むつかしーブログだと言われちゃってますが、みなさんこのブログは、むつかしーブログじゃないんですよ~。あっ、最後に言ってももう遅いか。しまった。

てなわけで終わります。本日の分の小説の紹介も書いたので、よろしければぜひ。